
完全な聖女になるには、強面辺境伯に愛される必要があるそうです
- 著者:
- 貴原すず
- イラスト:
- 炎かりよ
- 発売日:
- 2025年05月07日
- 定価:
- 847円(10%税込)
受け入れてくれ。俺をあなたの奥深くに
ベルーザ王国の王女シェリンは聖女候補だったが、完全な聖女になる試練に失敗したせいで蔑まれ監禁されていた。そんな彼女を救い出してくれたのは、かつて命を助けたことがある辺境伯バルト。ベルーザ王国を平定し次期国王となった彼は、なぜか彼女を花嫁として迎え入れ……。戸惑うシェリンにバルトは「俺があなたを愛せば、完全な聖女になれる」と告げると、無垢な体を暴いて甘い快楽を教え込み――。
愛のために国を簒奪した辺境伯×不完全な聖力しか持たない元王女、惜しみなく注がれる盲目的な愛の交わり


シェリン
やさしく思いやり深い王女。かつて右頬に百合の花びら四枚の聖刻をもち、聖女候補として愛される存在だったが……?

バルト
若くして威厳のある辺境伯。身体中と左頬に傷痕があり精悍な顔つき。シェリンを聖女として崇拝している。
「……あなたに愛されたら、聖女に戻れるの?」
「ああ」
バルトは上目遣いでシェリンを見つめる。
「俺があなたを愛し尽くしたら、あなたは再び聖女として輝ける」
「どうやって?」
シェリンの質問を聞き、バルトはにっと笑った。
彼はシェリンの腰を引き寄せて、完全に寝台に乗せてしまう。
バルトはシェリンにのしかかるようにして唇を塞ぐ。おまけに舌をぐっと差し入れられて、シェリンは呼吸を止めた。
「……!」
バルトの舌がシェリンの口内を探索する。シェリンの舌を舐め、歯をひとつひとつくすぐっていく。
恥ずかしすぎて、身じろぎもろくにできない。
くちづけといっても、この間バルトと交わしたものとは全然違う。唇と唇をくっつけあうだけでなく、口内をまさぐられるなんて信じがたい行為だ。
シェリンが身体を揺らすと、バルトはシェリンを深く抱きしめ、くちづけを続ける。
彼はシェリンの頬の粘膜を舌先でつつき、唾液をすすってくる。
シェリンは目尻に涙をにじませた。バルトがなぜこんなことをするのかわからなくて怖い。
バルトはシェリンの涙に気づいたのか、くちづけを切り上げた。
「シェリン、嫌なのか?」
瞳を覗かれると、嫌だと断言することをためらう。
バルトが嫌ではないのだ。ただ、行為に慣れていないだけで──。
「わ、わたくし、あまり……こういうことは得意ではないの」
「じゃあ、得意になればいい。俺と一緒に」
「それはちょっと無理……!」
バルトは上機嫌になってシェリンが着ているワンピースのボタンをはずしていく。
首元から次々とはずしていく手の動きがすばやくて、ワンピースどころかシュミーズの紐も肩から落として、あっというまに胸まではだけてしまう。
バルトの手がシェリンの右の乳房をすくう。重みを量るように下から持ち上げられて、シェリンは息を乱してしまう。
「バルト、よくないわ、こんなことは」
シェリンは涙目でつぶやく。未婚の男女が互いの肌に触れあうなんて、絶対にしてはいけないことだと聖教の教えにもある。
「俺とシェリンは結婚するんだから問題ない」
「そ、それでも……」
「俺はシェリンを愛したい。シェリンを聖女にするためにも」
「聖女になるのに、こ、これが、必要なの?」
バルトは両手で乳房を揉みしだき、乳首を摘みながらうなずく。
「必要な行為だ。愛を深めるためには、肉体の結びつきも必要なんだから」
いつのまにか尖った乳首をバルトは押し回す。
嫌なはずなのに、意味ありげに触れられると、なにやら怪しげな感覚が生まれるのだ。
お腹の奥がじわっと熱くなって、身体がぐらぐらするような変な感じだ。
「聖女にも必要なの?」
「聖女にこそ必要だよ。聖女が力を発揮するためには、愛が必要なんだ」
バルトはそう言ってから、再びくちづけをしてくる。
シェリンの薄いくちびるを彼の唇で覆い、甘嚙みしてくる。
軽く嚙まれているだけなのに、心地のよい刺激で身体の芯が震える。
(こんなふうに受け入れていいのかしら……)
くちづけをしながらバルトはシェリンの胸を揉む。彼の手に余りそうな乳房をたぷりと押し上げ、やさしく摑んでこねまわす。指の先端は乳首をつつき、休む暇もない。彼の十指がもたらす甘やかな刺激に、シェリンは翻弄されてばかりだ。
「ん……んんっ……」
くちづけを深めながら、バルトはシェリンに体重をあずけて押し倒してくる。
寝台に仰向けになり、シェリンは背をゆらめかせる。
(これからどうなるのかしら)
お腹が熱い。熱いだけでなく脈打っている。
何かを待ちかまえているような感覚があって、それが怖い。自分が自分でなくなるような怖さがある。
バルトはくちづけでシェリンの反抗を奪い、あっという間にワンピースとシュミーズを剝ぎとって、ドロワーズのみの姿にした。
とたんに恥ずかしさがつのり、まなざしでバルトに訴えた。
バルトはくちづけをやめ、不思議そうにする。
「バ、バルト。その……みっともないと思うの。こんな姿、見せられない」
我に返ったシェリンは自分を己の腕で抱く。
バルトの前でほとんど裸なのだ。恥ずかしいと思う気持ちを止められるはずもない。
「シェリン、俺の楽しみを奪うのか?」
バルトはシェリンの腕をほどいて裸体を見つめる。シェリンは涙目になった。
「だ、だって、こんな……傷痕だってあるのに」
魔女だと痛めつけられていたときに、身体のあちらこちらに傷がついた。線状の傷痕や火傷の痕。肌のいたるところについているそれは、シェリンが魔女である証拠だ。
(傷ひとつついていない身体ならばよかった……)
シェリンの肉体など、バルトの目に堂々とさらせるはずもない。
「それなら、俺のほうがひどいぞ。今、見せてやる」
バルトはなんのためらいもなくシャツを脱ぎすてる。啞然としたが、彼の裸体を目にした瞬間、言葉を失った。
(傷痕ばかりだわ)
バルトの上半身はいたるところに傷痕があった。ほどよく日焼けした肉体に痛々しい刀傷や裂傷の痕が刻まれている。
衝撃を受け、シェリンの胸はひどく痛んだ。彼は国境を越えようとするオルタナの兵を撃退する役目を担っていたが、そのときについた傷なのだろうか。
シェリンは半身を起こし、彼の傷に触れる。
「……痛かったでしょう?」
「当時はな」
「どうして、こんな怪我をしたの?」
「兄上のせいだよ」
自嘲の言葉を聞き、シェリンは目を瞠った。
「お兄さまのせい?」
「俺は兄上に憎まれていた。子どものころは剣の稽古のたびに兄上に痛めつけられていたし、都では刺客を放たれて殺されかけた。辺境伯領に戻ってからも、敵だか刺客だかわからない奴らに襲われた」
淡々と説明され、シェリンは啞然とする。
身内に殺されかけていたなんて──けれど、それが理解できてしまう。
「シェリンと同じだ。家族が最大の敵だった」
バルトの慨嘆を聞き、シェリンは涙があふれた。
「……わたくしと同じね」
フリアナが敵だった。堂々たる聖女なのに、彼女はシェリンをはなはだしく憎んでいた。
「俺は身体に傷ができただけだ。シェリンのほうがつらかっただろう」
バルトはシェリンを抱きしめる。素肌と素肌が触れあい、体温と体温が重なって、安心する。
「バルトだって、つらかったでしょう?」
都で刺客に襲われたというのは、あの日のことを指しているのだろう。シェリンが彼を助けたときのことだ。
「あの日、シェリンが救ってくれなかったら、絶望の中で命を失っていた。今、こうして生きていられるのは、シェリンのおかげだ」
バルトがしみじみと言ってから、顔を覗いてきた。シェリンの髪をひとふさとって指にからめる。
「俺はシェリンを聖女にする。必ずだ」
「バルト……」
シェリンは涙をこらえた。
(バルトはわたくしの味方……)
むしろ、バルトだけが味方なのだといっていい。
(あ、いいえ、カリアも味方だけれど)
うっかりカリアの前でバルトしか味方がいないと口走りでもしたら、彼女に嘆かれるだろう。下手をしたら、怒りを買ってしまう可能性だって高い。
集中が途切れたことを勘づかれたのか、バルトがシェリンにくちづけし、またもや寝台に押し倒してきた。
おまけにドロワーズの上から股間に触れてくる。
「だ、だめっ……」
さすがにそんなところにさわられるのは抵抗があった。
「シェリン、俺はシェリンのすべてが知りたい」
そうささやきながら、指が何度も狭間を往復する。
布越しなのに、誰にも触れられたことがないところを刺激されると、自然と背が反ってしまいそうな感覚に襲われる。
「だめ……」
目尻から涙がにじむ。こんな淫らな行いは拒絶しなければと思うのに、心のどこかに惹かれるものがある。
「……シェリン、もっと気持ちよくなりたくないか?」
バルトはシェリンの乳房を揉み、頂を押し回しつつドロワーズの中に手をすべらせた。