ケダモノ御曹司は愛しの番を貪りたい
- 著者:
- 月城うさぎ
- イラスト:
- 天路ゆうつづ
- 発売日:
- 2024年01月09日
- 定価:
- 858円(10%税込)
まだ夜は終わってないぞ?
不審な男に無理やり車に連れ込まれそうになった冴月。助けてくれたのは、凄絶な美貌と鍛えられた肉体を持つ獅堂煌哉という男だった。大企業の御曹司だという彼。二度と会うことはないだろうと思っていたが、とある相性がぴったりなことから彼のマンションで同居することに。俺様的な雰囲気なのに、実は紳士的で世話焼きな彼に次第に惹かれていく冴月だが……。「冴月を俺のものにしたい」満月の夜、獰猛な欲望を剥き出しにした彼に何度も熱く貪られ!?
肉食系紳士×訳アリアラサー女子、一途な獣は愛する番を逃がさない
織宮冴月(おりみや・さつき)
とある事情で年末に近づくと睡眠不足になる。煌哉がいるとなぜかよく眠れる。
獅堂煌哉(しどう・こうや)
大企業の御曹司。他人がいると眠れないはずが冴月の前では熟睡できる。
「……触れられても嫌じゃないって言ったら?」
彼は一体どんな世界へ連れて行ってくれるのだろう。
煌哉の妖艶な微笑が冴月の心臓を撃ち抜いてくる。
「それなら俺たちは両想いだな。ドロドロになるまで愛してやる。余計なことはなにも考えられなくなるほど」
両想いと言われたのが甘酸っぱくってくすぐったい。
自分たちの曖昧な関係に名前がついた。心臓がうるさいくらい音を立てている。
この感情が恋なのかはわからないけれど、まだそれでいい。今はただ彼に与えられる熱に身をゆだねたい。
「獅堂さん」
「煌哉だ。いい加減名前で呼んでくれ」
「煌哉さん?」
「さんはいらない。煌哉でいい」
部屋着代わりのワンピースの裾をまくり上げられ、太ももを撫でられた。煌哉の手が肌を滑るように触れたと思った直後、頭からワンピースを抜き取られる。
「んっ」
長袖の下着も裾から手を入れられて、冴月の腹部をそっと撫でられた。
──なんだか、肌に触れられるだけでぞわぞわする……それに身体が熱いような……。
こんな風に身体をゆだねたいと思ったことはない。出会って間もない男と肌を重ねるなどどうかしている。
言葉にはできない本能的ななにかに支配されているようだ。彼から放たれるフェロモンが濃厚で、思考を溶かしているのかもしれない。
──頭がうまく働かない……肌を撫でられるのが気持ちいい。
容赦なく衣服が脱がされていく。残っているのは上下の下着と、もこもこしたルームソックスだけ。
男性に肌を晒した経験がなくてどうしていいかわからないのに、逃げ出したいとは思わない。いや、逃げてもムダだと思っているのかもしれない。
「ああ……匂いが濃くなった」
煌哉の吐き出す息が熱っぽい。目も、獲物を狙うように爛々と光っている。
「私、臭い?」
髪の毛を手に取りスンッと嗅ぐが、煌哉が用意したアメニティのシャンプーの匂いがするだけだ。ジャスミンの香りが気に入っている。
「それは計算じゃないんだろうな。可愛すぎて貪りたい」
余裕のない発言を聞いた直後、煌哉が覆いかぶさった。
冴月の髪をどかし、首筋に顔を埋める。
「ひゃあ……くすぐった」
「ああ、たまんねえな……」
そんな場所で深呼吸をするなんてどうかしている。
抗議の声を上げるよりも早く、煌哉が冴月の首筋を嚙んだ。
「いぁ……っ」
歯を立てられただけの甘嚙みだが、犬歯がグッと冴月の薄い皮膚に食い込んだ。一瞬で、自分が被食者になった心地になり、大きく息を呑んだ。
「はぁ……んっ」
チリッとした痛みが続く。煌哉の舌が冴月の首をざらりと舐めてきつく吸い付いた。
「し、どうさ……」
「煌哉だ、冴月。口を開け」
頤に指がかかる。
口を開かされれば当然彼の名を呼ぶことなどできなくて、言われるがまま舌を出す。
「んん──ッ」
舌先を擦り合わせられたかと思えば、すぐに彼のものに絡めとられた。
上顎も下顎も舐められ舌を吸われ、唾液をたっぷり流し込まれれば自然と冴月は酸欠状態に陥った。
──苦しい……。
荒波に翻弄されるとはこのことか。いや、波というより嵐かもしれない。
キスというには荒々しくて、貪られているという表現が正しい。触れあうだけのロマンティックな口づけとは到底呼べない。
「あっ……」
身体の熱が否応なく高められていく。
冴月の背中に回った手がブラジャーのホックをプチンと外した。身に着けているものがショーツとルームソックスのみになった。
「あの、恥ずかしいので見ないで」
「無理だ」
腕で隠そうとするもすぐに遮られた。
冴月の手首がふたたびシーツに押し付けられた。無防備な身体が煌哉の目の前に晒されていると思うだけで、顔に熱が上りそう。
「っ、見ないでください」
「嫌だ、見たい」
見下ろされているだけなのに、目力が強すぎて居たたまれないのだ。
瞬きを忘れているんじゃないかと思うほど、煌哉がじっくりと冴月の身体を見つめている。
──恥ずかしい……デスクワークばかりのくせにヨガとかジムにも通っていないし、お菓子も結構食べてるし!
しっかり鍛えられた彼の身体と比べればなんともだらしないと思われそうだ。そういえば三十路近くになってきて、昔とは胸の感触も変わってきた気がする。
手首を頭上でひとまとめにされた。
煌哉は自由な手で冴月の胸を揉みしだく。
「ずっと触れたいと思っていた。想像よりも綺麗だな」