英雄騎士の歪んだ初恋
- 著者:
- 山野辺りり
- イラスト:
- 炎かりよ
- 発売日:
- 2023年11月04日
- 定価:
- 858円(10%税込)
全て、隅々まで支配したい。汚したい。
片田舎の村娘だったレノは、現在王都の騎士団に所属している。騎士になった理由はただ一つ、王都を訪れた際、暴漢に襲われかけていたところを颯爽と助けてくれた騎士団長リュカへの憧れからだった。人望に厚く、英雄と名高い彼に敬愛を募らせていたある日、リュカの隠された本性を偶然目撃してしまう。さらにリュカから「ただならぬ関係」を結ぶことを持ちかけられ、間違ったことだと抗いつつも、レノの身体は与えられる快感に溺れていき――。
冷酷な顔を隠した騎士団長×純真無垢な女騎士
相容れないふたりの拗れた想いの行き先は……?
レノ
誇り高い女性騎士。性善説を信じており良くも悪くも善人で、それがリュカを苛立たせも惹きつけもする。
リュカ
伯爵家の次男であり、英雄と名高い騎士団長。誰にでも親切で高潔だと周囲に信じられているが……
「……んっ」
その隙に首筋を甘嚙みされ、押し倒される。
再び彼を見上げる形になり、クラクラした。先刻までと違うのは、密着する肌が何物に遮られていないこと。ガウンを放り捨てたリュカも、裸体を惜しげもなく晒していた。
団服の上からでも分かってはいたが、実際目にすると造形の美しさに息を呑まずにいられない。
あまりにも完璧。惜しい場所が欠片もない。引き締まった胴も、実用的な筋肉も、手足の長さも。顔立ちは勿論、爪まで麗しいとはどういうことだ。何もかもが理想の形だった。
───どんなに優秀な騎士でも、それなりに傷は負っている。痕が残ることは珍しくない。だけどこの方は、戦場の最前線で戦い抜いても斬られたことがないというのは、本当だったんだ……
圧倒的実力差で敵を捻じ伏せ、国を勝利に導いてきた証。
だからこそ誰もがリュカに期待し羨望の眼差しを向ける。
レノの中で遠退いていた憧れと尊敬がよみがえり、こういう人になりたいと強く願わずにはいられなかった。
───いっそ私の憧憬を粉々に砕いてくださればよかったのに……
自分がもう、何を思えばいいのかも見失った。
顎先を齧じられて直後にねっとり舐められる。
痛いのか擽ったいのかも不明瞭になり、あらゆる境目が曖昧に滲んだ。
考えるのが億劫で、このまま身を任せたい衝動に駆られる。今夜の空気に酔ってしまったのかもしれない。ワインは口にしていないが、芳醇な臭いは鼻の奥に残っていた。
「ぁ……っ」
彼の手にレノの胸がすっぽり収まり、柔らかく形を変える。頂が擦られて、得も言われぬ愉悦になった。
むず痒いだけとは違う、ゾワゾワした感覚。意識したことのない体内が、甘く痺れる。
その不可解な何かを逃がしたくて膝を擦り合わせずにはいられない。じっとしていると、余計に妙な声が漏れてしまいそうだった。
レノが唇を引き結んでいると、頬やこめかみにキスが降ってくる。合間に舌先で刺激され目尻に滲んだ涙を吸い取られた。
「声は我慢しなくても誰にも聞かれやしない。それとも───階下に響くくらい大声を出す予定か?」
「ち、違います……っ」
本音では何も発したくない。だが勝手にいやらしい吐息が溢れるから厄介だった。
思い切り口を閉じていないと、おかしなことを口走りかねない自分がいる。そうでなくても、艶めいた悲鳴がこぼれそうで恐ろしかった。
何一つ自分の思い通りにならず、混乱する。故にせめて、一切声を出すまいとしたのだ。
「無駄な足搔きを」
悪辣な笑みをのせたリュカの唇が下りてくる。その行き先を見守っていたレノは、己の乳嘴を口に含まれ愕然とした。
「や……っ」
熱い口内で胸の飾りが転がされる。そこはたちまち硬くなり、より敏感になっていった。
「やめてください……っ、ぁ、んっ」
もう片方の先端は指で摘まれ、摩擦される。異なる二つの刺激が気持ちいい。何かが溶け出す感覚が足の付け根にあった。
───どうして……こんなことは間違っている。
心は果敢にも抗うことを忘れない。しかし身体が連動してくれず、四肢がヒクつく。指先が思うように動かせず、淫靡に強張るだけだった。
飴玉のように乳首を舐められ、恥ずかしいのに喜悦に溺れる。
その背徳感すら悦楽の糧になるのが、レノにも分かった。さらにその後ろめたさが一層恍惚を搔き立てる悪循環。
レノが身をくねらせても一向に解放されず、甘い責め苦はしばらく続いた。
「ぁ、あ……ッ」
「君は感じやすいね。嬉しい誤算だ。本当にいい拾い物をしたよ」
「私は落とし物じゃ……っ、ゃ、ああっ」
強めに乳首を吸われて、痛みと快楽の狭間で背がしなった。
汗ばんだ肌は火照っている。
どこもかしこも発熱し、火を噴かないのが不思議なほど。
せっかく汗を流してきたのに、もはやレノの全身はしっとりと濡れていた。
「控えめに鳴かれると、そそられる。どうしたら我を忘れて善がってくれるか、試したくなるな」
「ぁ……ああッ」
恐ろしいことを言われた気がする。しかし確認する余裕はなかった。
レノの乳房を揉んでいたリュカの手が、薄い腹を通過して下へ移動する。内腿へ指先を忍ばせられると、レノは反射的に足を閉じようとした。
けれど逆に左右へ大きく開かれてしまう。それどころか彼が間に陣取ったせいで、膝を合わせられなくなる。焦げつく眼差しが、秘めるべき場所に集中していた。
「み、見ないでください……っ」
「そんなお願いができる立場だと?」
嘲笑交じりに告げられて、レノの瞳に涙が滲んだ。暴れようにも、がっしりと押さえられていては不可能だ。力の差がありすぎて、精々身を捩るだけ。
レノは女性の中では力自慢でも、リュカの足元にも及ばない。いとも容易く両手首を頭上に張りつけられ拘束される。しかも彼の片手で。
「やぁ……っ」
じっとりと視姦されているのが感じ取れる。今見られているのは、開いた足の付け根。
頭髪と同じ赤みの強い毛を梳かれ、レノは腹を波立たせた。
「ふぅん。鮮やかな色だ」
「リュカ団長……っ」
「花の色に似ている。ほら、綺麗だな」
「ひ……っ」
彼の指先で蜜口を開かれ、レノは下生えの話ではないとやっと悟った。色について言及されたのは、女の部分だ。
誰にも見せたことのない場所を、丹念に見分されている。
通常ピッタリと閉じている花弁を開かれ、その奥まで。
「いや……っ」
目尻に溜まっていた涙が溢れ、幾筋も頬を濡らした。
羞恥で死ねる。もうやめてと叫びたくても、声が掠れて言葉にならなかった。
リュカの指が泥濘に沈められ、内壁を探られる。何物も受け入れたことのない淫路はひどく狭い。すぐに異物を排除しようと蠢めいた。
「……いっ」
「流石にこれだけ狭いと、僕が入れないな。仕方ない」
「ちょ……っ」
両脚を屈曲させられ、大きく開かれる。リュカが身体を下へ移動させ、彼の肩にレノの脚がかけられる体勢になった。
「な……っ」
この状態では、一番隠しておきたい秘部が至近距離から丸見えだ。限界を超えた恥ずかしさで、頭が破裂しかねない。
けれど彼の頑健な腕に押さえられ、淫らな姿勢を維持するより他になく、レノが頭を起こそうにも、下半身を軽く持ち上げられていては、不可能だった。
───まさか……
陰唇が淫靡にヒクつく。リュカが赤い舌で意味深に自らの唇を舐めた。
この年になれば、経験はなくても知識はある。何せ奔放なエマリーが友人なのだ。
レノは何をされるのか悟り、もがかずにはいられない。いくら身体を清めた後でも無理だ。絶対に許容できないと思った。
「僕はあまりこの行為が好きじゃないが、効率を考えれば一番手っ取り早い」
「い、嫌ならやめてください……!」
「痛がる女に突っ込む趣味はないんでね。どうせならお互いに楽しんだ方がいいじゃないか。目的のために手間をかけるのは、嫌いじゃない。それに不思議と、レノにするのは悪くないと思っている」
「や……っ」
こんな辱めを受けるくらいなら、痛みに耐えた方がずっとマシだ。身体を酷使することには耐性がある。だがレノは、快楽に対しては赤子同然だった。
「んぁ……っ」
生温かく弾力のある舌に、隠れていた淫芽を探り当てられ啜り上げられた。さらに舌先で弾かれ、押し潰される。
乳房を弄られた時とは比べ物にならない喜悦に、頭が真っ白になった。