あなたが世界を壊すまで
- 著者:
- クレイン
- イラスト:
- 鈴ノ助
- 発売日:
- 2023年03月03日
- 定価:
- 814円(10%税込)
「君のためなら世界を滅ぼしたっていい」
修道女クラウディアは侵略されて滅んだ国の王女。敗戦を理由に殺された家族の骸が晒され、自国民に石打たれ辱められている姿を見た彼女は憎しみと絶望から『神の愛し子』であるクルトを堕落させ、世界を滅ぼそうと試みる。淡々と祈祷をこなす彼に取り入り『暴食』『怠惰』といくつもの罪を犯させたものの、世界が滅びる様子はない。焦ったクラウディアはクルトを『色欲』に溺れさせようとするが、思わぬ学習能力の高さを発揮した彼に逆に熱く翻弄されて──。
神の子×亡国の王女、疑似楽園で望むは世界の崩壊──。
クラウディア
アルファーロ国元王女で修道女。家族を無惨に殺された絶望から世界を滅ぼそうと試みるが……。
クルト
神の子。何事にも興味を持たないよう育てられたため、感情を見せないがクラウディアには……。
「私は、クラウディアに恋をしているんだ」
まっすぐに伝えられた好意に、思わずクラウディアの目から涙がこぼれた。
自分はクルトからこんな綺麗な想いをもらえるような、まともな人間ではない。
どうしよう。罪悪感で、胸が焼ける。
するとクルトの手が伸びて、クラウディアを抱き寄せた。
「ねえ、クラウディア。君の唇に触れても?」
どうやら恋愛小説を読んで、口づけという行為を知ったらしい。
まあ、もしかしたら艶本のほうかもしれないが。
クラウディアの顔に一気に熱が集まる。心臓が破裂しそうなほどに鼓動を打っている。
そんな真っ赤になった彼女を、クルトが目を細め、うっとりと見つめている。
たった一日恋愛小説と艶本を読んだだけで、なぜ唐突にここまで色気を出せるようになったのか。明らかにおかしい。優秀すぎるだろう。
クラウディアは泡を吹きそうになっていた。
知識とは、人をここまで変えてしまうものなのか。
だがこれは、受け入れねばならぬことだ。
クルトを『色欲』に目覚めさせるためにも。
クラウディアはなんとか頭を縦に振って、ぎゅっと強く目を瞑った。
さらり、とクルトの髪が滑り落ちる音がして、そっと唇に温もりが触れる。
目を瞑っているからか、自分の心臓の音が耳の奥で鳴り響いていた。
唇が離され、終わったのかとそっと目を開けてみれば。そこには幸せそうな顔で笑うクルトがいた。
美しすぎて、思わず口から魂が抜けてしまいそうになる。
呆然とクルトの顔を見つめていると、彼の手がクラウディアの頬に触れ、また唇が降りてきた。
今度はただ触れさせるだけではなく、クラウディアの唇を食むように動かされる。 「んっ……!」
長い口づけの間、呼吸の方法がわからず、クラウディアから思わず鼻に抜けるような甘ったる声が漏れてしまう。
苦しくて、思わず唇を開ければ、そこにぬるりとした何かが入り込んできた。
「んんんっ……!?」
(何? これ? クルト様の舌……?)
先ほどぱらりと流し読みした艶本の冒頭数ページに、確かにそんな記載があった。
こんなふうに互いの舌を絡ませ合うような、卑猥な口づけがあるのだということが。
「んっ、んんっ……!」
彼の舌を嚙まないよう、必死に顎の力を抜けば、クルトはさらに大胆にクラウディアの口腔内を暴き始めた。
綺麗に並んだ歯列を舌先でたどり、上顎をくすぐり、喉奥に逃げたクラウディアの舌を捕らえ、絡ませ、吸い上げる。
クルトが舌を動かすたびにぐちゅぐちゅと水が攪拌するいやらしい音がし、口を閉じることができないせいで、飲み込みきれなかった唾液が口角から伝い落ちる。
「んっあ、ふっ」
呼吸が苦しくて出た涙で、視界が潤む。甘く重いとろりとした熱が、下腹部に溜まる。
(なんなの……! これ……!)
クラウディアは無意識のうちに膝を擦り合わせて、その熱をなんとか逃がそうとした。
「クラウディア、君の体に触れてもいい?」
ようやく唇を解放されて、一息つく暇もなくまた律儀に聞かれ、クラウディアはがくがくと首を縦に振った。
それを受けて、クルトの手がクラウディアの修道服を捲り上げ、中に入り込んでくる。 肌に直に触れられるのは、これが初めてだった。
大きくて温かな手が、太ももをたどり、ふっくらと膨らんだ臀部をたどり、ほっそりとした腰をたどって、やがて仰向けになってもその膨らみを残す、クラウディアの豊かな胸へとたどり着く。
そして大きな手のひらで包み込むようにクラウディアの乳房を優しく摑むと、やわやわと揉み上げる。
「……クラウディア、痛くない?」
かつて彼に胸を鷲摑みにされたことを思い出し、クラウディアは少しだけ笑った。
あのときクラウディアが「痛い」と叫んだことを、彼は覚えていたのだろう。
「だ、大丈夫です……」
むしろ今は、心地よいくらいだ。不思議とその頂が妙な熱を持って疼くけれど。
するとクルトが指の腹で、ぷっくりと勃ち上がったクラウディアの胸の先を、優しく摩った。
「んあっ……」
甘痒い感覚に襲われ、思わず小さく声を上げてしまう。腰が不思議とじんと痺れた。
クラウディアの反応に気をよくしたのか、クルトがまた桃色に色づいたその一帯を執拗に弄り始める。
優しく摩りあげたり、押し込んだり、摘み上げたり。
まるで、玩具で遊ぶように。
「あ、ああ、んんっ」
触られているのは胸なのに、また下腹部にきゅうっと内側へ締めつけられるような甘い感覚が溜まっていく。
そして脚の間からとろりと、何かが滲み出る感覚。
(月のものが始まってしまったのかしら……?)
まだ時期ではないはずなのに、とクラウディアは慌てる。
「ああ、大丈夫。全く違うものだよ」
するとクルトがそんなことを言った。クラウディアは目を丸くする。
今、自分は思ったことを、知らぬ間に言葉に出していたのだろうか。 「んあっ……!」
だがまたすぐに胸を甚振られ、ふと浮かんだその疑問は霧散してしまった。
声が漏れないようにと唇を嚙めば、クルトがそれを止めるため、唇を重ねてくる。
胸への刺激を繰り返されていくうちに、不思議と物足りなくなってしまい、もっと強く触ってほしい、などと浅ましくも思ったところで。
クルトが容赦なく、指先でクラウディアの胸の頂を引っ張り上げた。
「ああっ……!」
その瞬間、これまで感じたことのない、暴力的な快感がクラウディアに襲いかかる。
思わず腹を守るように体を丸めれば、かつて決して触れてはならぬと言われていた脚の間が、ヒクヒクと脈動を繰り返していることに気づいた。やがて全身を搔痒感に似た感覚が広がって、クラウディアはぐったりと脱力してしまった。
「……クラウディアは胸だけでそんなに気持ちよくなってしまうんだね」
どこか貶められるようなクルトの言葉に、泣きそうになる。
一体この感覚はなんなのか。生まれて初めての事態に、どうしたらいいのかわからない。
「ああ、私はクラウディアをいじめているわけじゃないよ。ただ喜んでいるんだ」
そしてクルトはクラウディアの体中に、愛おしそうに口づけを落とした。
所々を強く吸い上げられ、そんなささやかな刺激だけで、クラウディアはビクビクと体を震えさせてしまう。
それから下肢のほうへクルトの手が伸び、クラウディアの脚の間、酷く疼くその場所へとクルトの指が触れる。
「やっ……! そこは……」
クラウディアの制止の声は、だがクルトには届かなかった。
そこにある割れ目に沿ってクルトの指が這う。粘度の高いなんらかの液体がそこから滲み出ているらしく、それを潤滑剤としてクルトの指がぬるぬると動く。
「やあ、ああっ……!」
そしてつぷりとクルトの指先が割れ目に沈み込み、そこに隠されていた疼きの元へと直接触れられてしまった。
生まれて初めての強烈な快感に、クラウディアは腰を跳ねさせる。
そしてそこを何度か摩られただけでまた先ほどと同じ、下腹が内側へ引き絞られるような、甘く苦しい感覚に飲まれた。