ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

愛執の鳥籠

愛執の鳥籠

著者:
白ヶ音雪
イラスト:
鳩屋ユカリ
発売日:
2023年02月03日
定価:
814円(10%税込)
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死ぬ時は俺も一緒ですよ――俺だけの姫さま

王配である父の不貞によって生まれた第二王女シルフィアは黒髪赤目という容姿のせいで『ばけもの』と蔑まれていた。離宮でひっそりと暮らす彼女にとって、幼い頃から側にいる護衛騎士オルテウスだけが心の拠り所。だが彼と鈴蘭を愛でる穏やかな日々はシルフィアの輿入れが決まったときから狂い始め――。ある日、女王暗殺を父と共謀した咎人としてシルフィアは投獄されてしまう。救出してくれたはずのオルテウスに強引に身体を暴かれ貫かれて……。

仮面の元護衛騎士×ばけもの王女、誰にも触れさせない監禁愛。

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登場人物紹介

シルフィア

シルフィア

純真無垢な第二王女。容姿のせいで「ばけもの」と虐げられ、離宮でひっそりと暮らしていた。

オルテウス

オルテウス

居場所をくれたシルフィアに尽くす護衛騎士。ある事件で火傷を負い仮面をつけるようになった。

お試し読み

「姫さまはいつもそうだ。何かと理由をつけては、俺から離れていこうとする……」
 こんなに冷ややかな眼差しをした彼を見るのは初めてだった。心臓が警鐘を鳴らし始めるが、手も足も恐怖に凍りつき、敷布に縫い留められたかのように動かない。
「だからもう、遠慮しないことに決めました。これからここに、俺の種をたっぷり注いであげれば、姫さまも俺から逃げようという気はなくなるでしょう」
 指先で腹を撫でられ、シルフィアは戦慄した。
 イヴェットから、結婚前のたしなみとして閨の知識は少しだけ教わっている。オルテウスがこれから何をしようとしているのか、その意図を察せられる程度には。
「やめて、いや──んんっ!」
 シルフィアの制止を、オルテウスは聞き入れなかった。身を屈めて顔を近づけ、唇を重ねてくる。
 それどころか彼は、引き結ばれた唇の隙間から舌を差し入れ、口内をねぶり始めた。熱く、柔らかな濡れた感触が信じられなくて、シルフィアは瞬きすら忘れて凍りついた。
「──いやっ……」
 やがて彼の唇が角度を変えようと少し離れた隙に、ようやく我に返って顔を逸らす。けれどすぐに手で顎を捉えられ、正面を向けさせられた。
「今の俺は気が昂ぶっています。だからどうか、抵抗しないで」
「ん、ん……っ」
「酷くされたくはないでしょう?」
 押し殺された、脅すような声音にすっかり怯え、シルフィアは目をぎゅっと瞑って彼の唇を受け入れた。
 シルフィアも年頃の乙女だ。これまで幾度も、好いた相手と結ばれる甘い夢を見たことがある。そしてその相手は、いつもオルテウスであった。
 けれどそれは決して、こんなドレスも花束もない、自分の意思が介入する余地のない結婚ではなかったはずだ。
 ──それとも、そんな身の丈に合わない夢を見たから、自分は今こんな辱めを受けているのだろうか。
 酷く惨めな気持ちに胸が張り裂けそうで、瞑った瞼の隙間から熱い涙がこぼれ始める。頬を伝う涙に、オルテウスが気付かないはずはない。
「老人と結婚することは承諾したくせに、俺の妻になるのは泣くほど嫌なことなのですか」
 シルフィアから顔を離した彼は、唇の端だけをつり上げ冷たい瞳で言い放った。
「俺の身分が低いから? 俺が醜いから? 一生そばにいてほしいと言ったくせに──」
「違う……違うの……」
 懸命に首を振るが、オルテウスは聞く耳を持たなかった。シルフィアの寝衣に手をかけ、勢いよく胸元を引き裂く。甲高い音と共に布はあっけなく腹の辺りまで裂け、下着をつけていない胸がこぼれ出た。
「いやぁっ、やめてぇ……!」
 カーテンから差し込む陽光に白い肌が照らされ、シルフィアは手足を暴れさせる。
 夫となる人との初夜で、衣服を脱がねばならないことは知っていたし、覚悟もしていた。けれどこんな──女性らしい凹凸に乏しいみっともない身体を、この美しい騎士の眼前に晒す恥ずかしさに、消え入りたい気持ちになる。
 だが、オルテウスはシルフィアの両手を頭上で一纏めにして拘束すると、浮き上がった鎖骨に躊躇いなく唇を落とした。
 振りほどこうとしたのに、彼の手はあまりに力強くて、か弱い女の力では到底敵わなかった。
「綺麗だ……。ずっと、あなたにこうすることを夢見ていたんです」
 一体いつから。そんなこと、全然知らなかった。
 愕然とするシルフィアに、彼は薄く自嘲めいた笑みを向ける。
「汚らわしいと思いますか? でも、俺だって男なんです。あなたが無邪気に身体を寄せてくるたび、何度その場で組み敷いて犯してやろうと思ったことか」
 いつも優しく、兄のようだったオルテウスのその告白に、不思議と嫌悪は覚えなかった。だが、心底驚いたのは確かだ。
(だってオルテウスは、そんなそぶり少しも見せなかった……)
「その顔。想像もしていなかったようですね。姫さまはいつも、綺麗で純粋で……だから俺は、なおさらあなたに惹かれたのでしょうね」
 苦しげに笑うと、オルテウスは無垢だったシルフィアを戒めるように、骨の部分に優しく歯を立てた。軽い痛みに身を竦ませていると、今度は宥めるように、舌が肌の上を滑り始める。
 彼は鎖骨から胸元へ向かって肌を味わいながら、時折戯れのように表面を吸い上げた。
「あっ──、ん……」
 ちりりとした熱っぽい痛みに、シルフィアはなんともいえない痺れを感じて声を上げる。正体のわからない何かが、背筋をぞわぞわと這い上がる感覚があった。
「気持ちいいのですか」
「わ、わからな……。おねがい、もうやめて……」
 シルフィアにはこの感覚がなんなのかわからない。それに、気持ちよかろうがそうでなかろうが、こんなことは間違っている。
 オルテウスは女王の近衛騎士として名を上げ、間もなくその立場にふさわしい令嬢と結婚するはずだ。彼には本来、明るく日の当たる道が似合っている。
 彼がシルフィアを助けてくれようとしているのは、十分にわかった。だからもう、こんな日陰者の、謀反人の娘に関わってはいけない。
 それなのに、彼はシルフィアの懇願をいともあっさり撥ねのける。
「やめません」
「あぁっ……」
 布を裁ち切るような声と共に、下からすくい上げるように乳房を掴まれた。大した質量もないその感触を楽しむように、オルテウスはやわやわと揉みしだき、手の中で形を変えるさまを楽しんでいる。
「想像していたよりずっと、柔らかいな」
 揶揄するような声とは裏腹に、シルフィアに触れる手は丁寧で優しかった。ざらついた指先が羽のように、そっと乳嘴を撫でる。
 薄紅色の先端はそんな軽やかな刺激だけですぐに芯をもち、ぴんと尖り始めた。
「それに、とても敏感だ」
 オルテウスは男を誘うように立ち上がったそれを二本の指で挟み込み、擦るように押しつぶした。まるで新しい玩具で遊ぶ子供にも似た執拗さで、尖りを弄び続ける。
「っ──」
 触れられた場所から甘い痺れが広がり、腰の奥に熱が溜まっていくのがわかる。
 シルフィアは唇を嚙んで、嬌声を押し殺した。けれどそんなものは無駄な抵抗でしかなかったことに、すぐ気付かされる。
「姫さまのここは、どんな味がするのでしょうね」
 両の乳房をいじっていた彼は、そう言いながらその片方にしゃぶりついた。金色の髪が肌をくすぐる感覚がして、遅れてしっとりと濡れた舌が敏感な部分を這う。
 小さな飴玉を貪るようないやらしい動きでねぶられるたび、肩と腰が魚のように小さく跳ねた。
「ああ、甘い……。とても美味しいです、姫さま……」
 陶然と呟いた彼は、もう一方の胸にも同じように愛撫を施した。少し視線を下げれば、てらてらと濡れて真っ赤に立ち上がった己の乳嘴が目に入り、消え入りたい気持ちになってしまう。
 口では嫌だ嫌だと言いながらも、シルフィアの身体はオルテウスに触れられて反応している。そんな自分が、酷く汚らわしいもののように思えた。
 やがて彼の手が、中途半端に破れた寝衣の裾からシルフィアの足に伸ばされる。乾いた手が大腿を撫で回し、裾を器用に腹まで捲り上げる。
 そうなってしまえば、もうシルフィアに為す術はなかった。
 胸への愛撫で力の抜けた足から下着を取り去ると、オルテウスは秘めた場所に指を伸ばし、小さな花芽にそっと触れた。
 両手はとうに解放されていたというのに、抵抗する気力もなかった。
「や、ぁ……やめて……っ。どうしてこんなこと……」
 それでもせめて声だけはと、懸命に口を開く。
 今オルテウスに触れられている場所はシルフィア本人ですら、常日頃ほとんど意識することのない器官だった。なんのためにあるのか、考えたことすらないような。
「姫さまを、俺だけのものにするためです」
 オルテウスは確かな意志を持って、壊れものに触れるようにゆっくりとその場所を愛撫する。硬い指先を上下に動かし、その形を確かめるように撫でる。そうすると掻痒感にも似た強い感覚が花芽から腰までせり上がってきて、シルフィアは涙混じりの震える吐息をこぼした。
「ここも、硬くなってきましたね。膨れて、赤く充血しています」
「ぃや……っ」
 火を灯したような眼差しが、自分の秘めるべき場所を熱心に見つめている。
 その事実と淫らな言葉に頬が熱を持ち、居たたまれなさのあまり涙がこぼれてきた。泣いている顔を見られるのが嫌で、両手で顔を隠すが、だからと言ってオルテウスが手の動きを休めることは決してなかった。
 彼はシルフィアの内側から生じた熱い液体を指で絡め取ると、それを丹念に花芽へ塗りつける。滑りのよくなったその場所を、シルフィアの反応を窺いながら強弱をつけて擦りたてた。
「あっ……あぅ……っ」
 視界を覆っている分、より鮮明にオルテウスの指の感触を感じるようだった。
 いやいやと首を横に振りながら、シルフィアは何度も腰を跳ねさせた。つま先が強く突っ張り、敷布を不格好に乱す。
 とうとう顔の覆いを外して敷布の表面を掻きむしる。何かに縋っていなければ、とても自分を保てそうになかった。
「いや、いやよ……っ」
 初めての時は痛みを伴うものだと、イヴェットは言っていた。だから、その覚悟はしていた。
 でも、こんなことは聞いていない。
 こんな──身体の芯を蝋燭の炎でとろとろと炙られるような、甘酸っぱい疼きを感じるなんて。あまりに甘ったるすぎて、シルフィアは、己の身の内に流れる血液が全て蜂蜜にでもなったのかとさえ思うほどだった。
「ああ、なんて素直な身体なんだ……。淫らで美しい、俺の姫さま」
 涙でぼやけた視界の向こうに、オルテウスの嬉しそうな表情が見える。
 彼は青い目を細めると、花芽を嬲る指の動きを少し速めた。揉み込むように擦りたおし、弾くように震わせ、真っ赤に充血したそれに容赦のない刺激を与え続けた。
 身体の奥に溜まっていた熱がどんどん膨らんでいくのを感じ、シルフィアは必死でそれから逃れようと身を捩る。だが、全てはオルテウスの掌の上だった。
「いきそうですか。──どうぞ、存分に気持ちよくなって、いってください」
「あ、あぁっ、んぁぁ──……ッ」
 その言葉が合図のように、シルフィアの目の前が真っ白に弾ける。
 全身が大きく戦慄き、腰がこれ以上ないほど反り返る。
 痛いほどに拳を握りしめながら、シルフィアは初めての法悦に甲高い悲鳴を上げた。

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