寡黙な近衛隊長は雄弁に愛を囁く
- 著者:
- 最賀すみれ
- イラスト:
- 如月瑞
- 発売日:
- 2023年01月07日
- 定価:
- 847円(10%税込)
頭上に天使の輪が見えます……さては翼も隠してらっしゃるのでは?
父王に虐げられ、城の北翼で近衛隊と暮らすギゼラ。隊長のエリアスは無口だが、厚い忠誠心から主君賛美を滔々と語りだす癖がある。
その饒舌さに隊員達とあきれる毎日は幸せだった。しかしある日、ギゼラに政略結婚の王命が下るとエリアスの様子に変化が。「一度でいい。あなたに触れさせてください」思いつめた眼差しを拒み切れず――。一夜が明け、目を覚ますとエリアスは姿を消していた。そして彼を探す中で、ギゼラはある衝撃的な真実を知り……。
忠誠が重い過保護な騎士×孤独な王女、互いを想いすぎてすれ違う二人が結ばれるまで――。
ギゼラ
幼少期のトラウマから意思表示が苦手だが、素直で一生懸命な王女。エリアスの過保護を何とかしないとと思っている。
エリアス
ギゼラ以外にはどこまでも冷徹な騎士。主君への過保護ぶりは宮廷であきれられるほどだが、改める気はない。
「……っ……!」
欲しいという気持ちが迸るような、ひどく性急で強引なキスだった。
荒々しく口腔を貪られ、慣れない性感を刺激され、ギゼラはあっという間に濃密な官能に吞み込まれてしまう。舌は歯列や口蓋を縦横に這いまわり、びくりと震える箇所があれば、集中してそこを舐ってきた。
卑猥な感触から逃げようともがきながらも、官能を無理やり掘り起こすような舌遣いには、我知らず下腹が疼いてしまう。ヌルヌルと這いまわる愉悦に追い立てられ、鼻にかかったような声がもれた。
「……んっ……ぅ、っ……っ」
ようやく得た機会を逃してなるものかとばかり、彼の口づけはどこまでも執拗だった。
ギゼラを追い詰め、絡みついて己の内に捕らえようとする。
逃げても逃げても追ってくる官能に思考が蕩け、ギゼラは次第に頭がぼぅっとしてきた。
何もかも投げ出して、甘い愉悦に身をまかせたくなる。
(……ダメ……)
理性の声は少しずつ遠ざかり、薄れていく。
角度を変えて何度も重ねられる口づけは、いったいどれほど続いたのだろう?
唾液の絡み合う卑猥な音と、悩ましく熱い舌での愛撫に、ふやけたように抵抗の力が抜けきってしまった頃、彼はようやく身を離した。
「未来と引き換えでかまいません。もし私を憐れんでくださるなら──フロリアン王子のために失うことを惜しんでくださるなら、これまでの働きをお褒めくださるというのなら……、一度でいい。あなたにふれさせてください──」
はぁはぁと息を乱すギゼラを思い詰めた眼差しで見下ろし、エリアスは哀しみを込めて微笑んだ。
「それがかなうなら、他に何もいりません」
「────…」
全霊を込めた訴えに応える言葉を、ギゼラは持たなかった。
ただただ見つめ返すギゼラのドレスに、彼は震える手をかけてくる。そのまま、ひどく丁重な手つきで取り除きにかかってきた。二本のリボンを編み上げる形で合わせを閉じているドレスは、胸元の結び目を解いて、リボンを取ってしまえば、腰の部分まで開けてし
まう。
静かな部屋の中に、衣擦れの音だけが秘めやかに響く。
「エリアス、待っ……っ」
ドレスの胴衣の前合わせを開き、さらにコルセットまで緩められるに至って、ギゼラは上ずった声で止めようとした。しかしその矢先、ギゼラの喉がひゅっと鳴る。
自分の肌に、彼の手が直接ふれたのだ。
「…………!?」
我に返って見れば、下着を引き下ろされたギゼラは、すっかり胸元を露わにされていた。
まろび出たふくらみを、エリアスの手がすっぽりと覆っている。
「いや……っ」
素肌を晒すことに慣れていないギゼラは、首まわりどころかおへそ近くまで見られている状況に混乱し、あわてて胸を隠すように両腕を交差させた。と、彼はその手に自分の手を重ねてくる。
「ギゼラ様の生まれたままの姿を初めて目にするのは、あなたに恋い焦がれる男であるべきです。あなたは大切にされるべき方なのですから」
真摯に見つめながら、彼はそんなことを言い、胸を隠す手をゆっくりと外していく。魔法にでもかかったように、ギゼラはされるがままになった。
改めて、エリアスの大きな手が恭しい仕草でふくらみを包みこみ、ゆるゆると押しまわしてくる。たとえいやらしいキスで悩ましい気分になっていたとしても、彼の指先が柔肉に沈む様など、燃えるような羞恥なくして見られない。
「や……っ、だめ……っ」
身をよじって逃れようにも、彼が両膝でギゼラの腰を押さえ込んでいたため、びくともしなかった。そして抵抗するほどに、彼の手は遠慮なくふくらみを捏ねまわしてくる。いつもの優しい彼とちがう、断固とした手つきには困惑するばかりだったが、指先が赤く色づいた部分を捉えた瞬間、未知の感覚に背筋がびくりと震えた。
「……ぁ……っ」
儚く啼いたギゼラの様子に目を細め、彼は反応を引き出すように二本の指で捏ねてくる。
「ここが感じるのですか?」
「ぁ、ぁっ……」
今度ははっきりとした愉悦を感じた。いじわるな指の動きに、下腹が甘く焦れてたまらない。せっぱ詰まった状況は伝わっているだろうに、彼はさらに指先でそこを嬲ってきた。
くにくにと捏ねられるうちに、そこは芯を持って硬く尖ってくる。快感もまた研ぎ澄まされていく。右が終わると左、左に飽きると、また右……絶え間ない愛撫に、ギゼラは押さえ込まれた腰を揺らして身悶えた。
「あっ、ぁっ、ぁ、やめっ、ぁ……ぁ……」
「びくびくと震える様も、儚い啼き声も、まるで小鳥のようだ。なんてお可愛いらしい……」
こちらをじっと見下ろし、彼は熱に浮かされたようにつぶやく。
エリアスの手はおそろしいほど気持ちがよかった。いやだいやだと言いながら、長くて器用な指でもっとそこをいじってほしいとすら感じてしまう。
ギゼラは頭を振った。
「ちがうの……、こんな……っ」
胸をさわられて、こんなふうにはしたなく乱れるなど、自分のこととは思えない。おまけにもっとしてほしいなんて、そんなことを思うはずがない……!
いやいやをするギゼラに、エリアスはなだめる顔で首を振る。
「恥じる必要はありません。先ほどのキスで感度がよくなっているだけのこと」
「はぁ……っ」
「すっかり硬くなりましたね、ここ……」
そっと柔肉を寄せ上げ、彼は赤く熟れた先端をぱくりと口に含んできた。
「ふぁ……っ」
ただでさえ敏感になっていた場所を、ぬめる口腔内に包み込まれ、思わず瞠った瞳の端から涙がこぼれる。熱い舌先でねっとりと押しまわされ、かと思うと柔らかく吸い上げられ、湧き立つ愉悦に背筋をしならせて感じ入る。
ちゅくちゅくと左右をくり返し責められ身悶えていると、彼の手がするりとスカートの内側に潜りこんできた。手はドロワーズの上から意味ありげに内股をたどった末、脚の付け根にふれてくる。
「……ぁ、ぁ……っ」
布越しとはいえ、きわどい淫悦が湧き起こり、涙がにじんだ。いくら相手がエリアスといえど、今度こそ耐えられないと感じた。にもかかわらず彼は、そこを優しく押しまわしてくる。
「は、ぅ……んっ、やっ……やぁっ……」
脚を固く閉ざしても、手は動きを止めなかった。下腹の奥でもったりとした快楽がふくらみ、じっとしていられなくなる。膝を閉ざしたまま腰を揺らして煩悶する。
胸への口淫をやめた彼は、いつの間にかのぞきこむようにして、悶えるギゼラの顔を眺めていた。
「すでに慣らす必要がないくらいぬれていますね」
「…………?」
「ギゼラ様の身体が、私を受け入れる準備を整えてくださったということです」
「受け、入れる……?」
まさか──。