愛が欲しくば、猫を崇めよ
- 著者:
- 山野辺りり
- イラスト:
- 芦原モカ
- 発売日:
- 2022年11月04日
- 定価:
- 836円(10%税込)
ああ、可愛いな……食べてしまいたい
壊滅的に男運が悪く男性不信気味のコティ。ある日、占い師を助けたお礼におまじないを施され、ひょんなことから猫に変身してしまう。雨にも降られ困っているところをコティにいつも殺意漲る顔を向けてくる騎士ヴォルフガングに拾われる。モフモフの身体を撫で回されたあげく騎士団宿舎に猫のまま連れてこられ、しかも全裸の彼と一緒のベッドで寝ることに!? 真夜中に人の姿に戻ったコティは一糸まとわぬ姿をヴォルフガングに見られてしまい……。
猫好き強面最強騎士×男運が悪い少女、猫が導く(?)恋の行方は――?
コティ
孤児院の職員。男運が悪く男性不信気味。困っている人を見て見ぬふりができない心優しい性格。
ヴォルフガング
平民出身の第二騎士団団長。無敗の最強騎士であり国の英雄。なぜかコティのことだけど……。
コティの上で膝立ちになり見下ろしてくるヴォルフガングは、野生の獣めいていた。獲物に飛び掛からんとしている猛獣そのもの。
この場合、獲物とは完全にコティに他ならない。
だが、怖いとは微塵も感じなかった。未知の世界に踏み込む怯えはあっても、彼自身を信頼しているからこそ、期待の方が上回る。
惜しげもなく素肌を晒したヴォルフガングの肉体美に陶然とし、つい見惚れてしまった。
「……コティは案外積極的だな。そんなにじっと見られたら、流石に照れる。もっと男の裸に戸惑うかと思った」
「え……っ」
彼の全裸を眼にしたのは、これで二度目。だから前回よりも落ち着いていたのは否めない。しかし考えてみたら自分は真っ新な生娘だ。しかもこれまで男性を苦手としていた。
そんな娘が平然とヴォルフガングの裸を見つめるものだから、違和感を抱かれたらしい。
「そ、それは、あの……っ、あまりにも見事な筋肉だったので、呆然として……!」
「褒められると、一層恥ずかしいな。でもありがとう。俺としてはまだまだ理想には程遠いけれど、君に見事だと言われると嬉しい」
「えっ、まだ大きくなるおつもりですかっ?」
もう充分完成形だと思うのだが。これ以上巨大になられては、ますます二人の体格差が開いてゆく。
今だって、縦も横も厚みも段違いなのだ。これ以上ヴォルフガングが鍛えて逞しくなると、まるで彼と自分は『保護者と幼児』みたいではないか。
───そうなったら、私が隣に立った時に『似合わない』と思われてしまいそう……
彼に懸想する女性陣の中には、引き締まった屈強な肉体を持つ女性騎士も、魅惑の胸やくびれと尻を誇る妖艶な寡婦も、知的で清楚な『守ってあげたい』と他者に思わせる令嬢も大勢いるのだ。
コティのように人並みな容姿で、ちんまりとした体形に胸だけ不格好に大きい女に勝ち目があるとは思えなかった。
───格差が……ますます開いてしまう……
持って生まれた顔や体格は、努力では変えられない。ヴォルフガングが追い求める理想を否定するつもりは毛頭なくても、コティはほんの少し切ない気持ちになった。
「……君が嫌なら、やめる」
「そ、そこまでなさらなくても……お仕事上、身体を鍛えるのは大事なことだと思いますし。あ、あのそれより、私がじっと見つめるのは嫌でしたか?」
話題を変えたい気持ちもあり、コティは強引に話の矛先を変えた。
やや無理があった気もするが、幸いにも彼は厳しかった表情を和らげてくれる。上手く意識を逸らせたらしい。
「……いや、ちっとも。コティにならいくらでも見られたい。むしろもっと、君の視線を独占したい」
「な……っ」
想像していた以上の熱量で返されて、こちらの方が戸惑った。
その上、取られた指先に軽く歯を立てられる。本当に喰らわれている錯覚がし、クラッと眩暈がした。
「……可愛い」
再び呟かれた言葉は、前回よりももっとトロリとした色を帯びていた。ヴォルフガングの瞳にも淫蕩な焔がより激しく踊っている。
その熱に炙られ、漏れ出たコティの息は甘く濡れた。
歯を立てられた指先を、熱く滑る舌が辿る。
粘膜が絡みつくような動きに、コティの下腹がキュンッと騒めいた。
単純に指への刺激だけで終わらない。そこから全身へ戦慄きが広がってゆく。膝を擦り合わせた刹那、名状し難い愉悦が湧き起こった。
「……っ、擽ったいです……っ」
「じゃあ、これは?」
「あ……ッ」
指先で遊んでいた彼の舌が、コティの手首へと移動する。そこから肘まで辿られ、最終的には肩に至った。
鎖骨を擽られ、喉が震える。この衝動の逃し方が分からない。経験の乏しいコティは、次に何をヴォルフガングからされるのか、固唾を飲んで見守るしかなかった。
「ぁ、や……っ」
肩紐を下ろされてしまえば、辛うじて肌を隠してくれていた下着は容易に脱がされる。残るは最後の砦たる下半身を守る一枚だけ。
しかしそれさえ、コティの両脚からゆっくり抜き取られた。
「み、見ないでください」
「それは無理だ」
こちらの頼みはあっさり却下され、太腿に彼の手がかけられた。反射的に脚を閉じようとしても、男の力に敵うはずもない。
おそらくヴォルフガングはさほど力を入れている認識もないだろう。コティの膝は抵抗らしい抵抗もなく、左右に離れていった。
「ん……っ」
秘めるべき脚の付け根に視線を注がれているのを感じ、羞恥と緊張で眼を開けていられない。コティはきつく瞑目し、息を詰め顔を背けた。
淫らに開いた両腿が、微かに震えている。閉じたいと思うのに、膝にのせられた彼の手で阻まれていた。
途轍もなくいたたまれず、呼吸すらたどたどしいものへ変わる。とても瞼を押し上げて現状を把握する余裕はない。だからなのか、代わりに肌が鋭敏になっていった。
「はぅ……っ」
湿り気を帯びた空気の流れを感じる。それも、あらぬ場所に。
見られているだけでもおかしくなりそうなところへ、ふっと息を吹きかけられ、コティは愕然とした。
「や……ッ」
信じられない。信じたくない。誰にも見せたことのない花弁を、ヴォルフガングに覗き込まれていた。しかもあと少しで彼の鼻が触れてしまいそうな距離感で。
一気にコティの頬へ血が上り、全身も熟れた色に染まる。悲鳴は掠れ、音にすらなりきらなかった。
「じっとして」
簡潔な命令に逆らえなかったのは、ひとえに動揺していたせいだ。太腿を抱えられ大きく脚を開かされても、文句を言う発想すら出てこなかった。
「ん……っ」
媚肉を左右に割られ、間にある花芯を舌で舐められれば、鮮烈な快感が蜜口から弾ける。正確には、慎ましく隠れていた淫芽から。
軽く突かれるだけでも、生まれて初めて味わう性感は鮮烈すぎた。
「はぅ……ッ」
全身が一気に粟立つ。ゾワゾワとした悦楽が末端まで響いた。爪先が丸まり、皺ひとつなかったシーツを乱す。だがいくらもがいたところで、コティには快楽の逃し方が分からなかった。
「ぁ、あ……っ、や、駄目……ッ、汚い、です……っ」
それでも不浄の場所を舐められている事実に、髪を振り乱した。気持ちが良いと感じていること自体が罪深く思え、ヴォルフガングにも申し訳ない。
こういう秘め事を話に聞いたことはあっても、まさか自分がされる立場になるとは、夢にも思っていなかった。
「汚くない。それに、コティのここはだいぶ狭い。これでは俺が入れない」
「んぁあっ、ぁ、ぁんッ」
尖らせた舌先で突かれたと思えば、唇で肉芽の根元を締めつけられ、啜り上げられて舌全体で押し潰された。
摩擦されても、圧力を加えられても愉悦の水位が上がる。
じゅるっと淫らな水音が奏でられ、耳からも悦楽を注がれた。男の熱い息が濡れた場所を炙るものだから、それさえ快楽の糧になる。
コティの脚を抱える手、内腿を擽る黒髪も愛撫同然に感じられた。
「ひ……ぁ、ああッ」
花蕾は与えられた法悦で素直に育ち、ますます膨れて淫猥な悦びを享受する。硬くなった芽は扱きやすいのか、彼の口内で更に弄ばれた。
「ぁああ……んぁッ、ぁ、あ……っ」
うねる腰が跳ねても、屈強な腕に易々と押さえ込まれる。コティの下肢からは力が抜け、両脚は淫らに投げ出された。
びしょ濡れになった秘裂が真上を向くよう身体を折り曲げられて、されるがままヴォルフガングの舌の蹂躙を受け入れる。
眼も眩む悦楽にコティが夢中になっていると、いつの間にか隘路へ彼の指先が押し込まれた。
「は……っ」
異物を受け入れたことのない肉襞が蠕動する。圧迫感が少し苦しい。身体の内側を探られる違和感に、コティの身体が引き攣った。
「……できるだけ、優しくする」
「で、でもそんなところ……」
「充分解さないと、辛いのは君だ」
以前なら険しい顔でこんなことを言われたら、脅されているとしか思えなかった。けれど今は、ヴォルフガングが己の欲望を理性で制御し、コティのために冷静さを保とうとしてくれているのが読み取れる。
僅かな眼の動きや赤らんだ頬、それに滾った呼吸がその証拠。
触れてくる手はどこまでも優しく、かつ労わりが感じられた。
「……俺のは、その───ちょっと平均よりアレだから、どんなに準備しても痛い思いをさせてしまうかもしれない」
「アレ?」
初めてが苦痛を伴うものだとは、コティも知っていた。二人の体格差から考えても、容易なことではないとも理解している。
しかしこれまで男女交際の経験がなく比較対象を持っていないこと、それから臨戦態勢になった彼自身を眼にしたことがないせいで、コティには具体的にヴォルフガングが言わんとしていることが分からなかった。
そこで何気なく下に視線をやる。が、『アレ』とやらを目視する前に、コティの両眼は大きな掌に塞がれた。
「見るな」
「え……」
つい先刻『コティにならいくらでも見られたい。むしろもっと、君の視線を独占したい』とまで言っていたのに。
華麗な掌返しに啞然としていると、コティの視野を遮ったまま彼がゴニョゴニョと言い訳を並べ立てた。
「そういうことは、次回にしよう。今回はまだ早い」
「次回……」
ではまた今度があるのだ。そう思い至れば、コティは嬉しくなり『アレ』について追及する気は完全に消え失せた。
「……万が一怯えて逃げられたら、立ち直れないからな……絶好の機会を棒に振るわけにはいかない……」
「え? 何かおっしゃいました?」
だから、ヴォルフガングの呟きは完全に聞き逃した。
「気にするな。独り言だ。それより、もっといっぱい感じてほしい」
「ひゃ……」
起こしていた頭をシーツに戻され、胸の先端を摘まれた。彼の指先はコティの蜜に塗れており、ぬるぬると滑る。初めて知るその感触は、自分で触れても特に何も感じない乳房を、たちまち敏感な場所に変えてしまった。