ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

淫獄の囚愛

淫獄の囚愛

著者:
葉月エリカ
イラスト:
サマミヤアカザ
発売日:
2022年06月03日
定価:
792円(10%税込)
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――これ以上、もう逆らうな。

隣国に侵略され、姉とともに捕虜となった侯爵令嬢のティレナ。悪辣な敵の王は、同じく捕虜である鍛冶師のラーシュに「処女のまま淫蕩な女に躾けろ。熟れたところで儂が抱く」と下劣な命令を下す。無愛想ながらも優しいラーシュに惹かれつつあったティレナだが、彼はそれまでの信頼を打ち砕くかのように、無垢な乙女の体を暴く。残酷な王の目の前で、夜毎繰り広げられる凌辱の宴。けれどその最中にも、ラーシュの葛藤と秘密が見え隠れするようで……?

本心を見せない凌辱者×捕虜となった気丈な令嬢、恋心は残忍な王の悪意に踏みにじられて……。

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登場人物紹介

ティレナ

ティレナ

姉を守るため、ともに捕虜になることを選んだ気丈な令嬢。初恋の男の子にもらったペンダントを今も身につけている。

ラーシュ

ラーシュ

捕虜でありながら、敵国の王にも腕の良さを買われている鍛冶師。その王に命じられティレナに悦楽を教え込むが……。

お試し読み

「この女に頬を打たれたときから恨んでいました。報復の場を与えてくださり、感謝いたします」
 ティレナは愕然とラーシュを見つめた。
(……噓でしょう?)
 刑場での自分の意図を、彼はわかっていたはずだ。
 ひどいことをしたけれど、演技だと理解してくれていたはずだった。
(ラーシュがこんなことを言うわけない。マディウスに脅されてるとか、きっと何か事情があるはず……)
「儂の手足となり、ティレナを淫蕩な女に躾けてやれ。自分で脱ぐ気がないのなら、まずは裸に剝くところからだ」
「承知しました」
 ラーシュが衝立を押しやると、その向こうに置かれたものがはっきり見えた。
 大人が三人は寝られそうな天蓋つきの寝台だ。
 周囲を覆う紗幕は開かれ、四隅の柱にタッセルでくくりつけられている。さながら緞帳の上がった舞台のように。
 無言で近づいてきたラーシュが、ティレナの手首を摑んだ。振り解くことのできない力で、強引に引きずっていこうとする。
「やっ……待って……!」
 抵抗も虚しく、ティレナは寝台に突き飛ばされた。
 背中から倒れ込んだ拍子に脚が跳ね、めくれたスカートを慌てて押さえようとしたが。
「無駄な抵抗はするな」
 たくましい体にのしかかられ、傲然と言われて、ティレナは凍りついた。
 太腿までをあられもなく晒した状態で、自分はラーシュに押し倒されている。
「暴れるようなら縛ってしまえ」
 マディウスの命令に従い、ラーシュが動いた。
 寝台の脇に置かれた小卓の抽斗から、麻縄が取り出される。
 呆然としているうちに、ざらつく縄が手首に絡んだ。
 それは固い結び目を作り、斜めの位置にある柱にぴんと張った状態で結ばれた。逆の手にも同じことをされ、張りつけのような形で拘束される。
「お願い……やめて……」
 体の自由を奪われることが、こんなにも怖いなんて知らなかった。
 懸命に体をよじってもがくが、食い込む縄に皮膚が擦れて痛むばかりだ。
「辱められるくらいなら、舌を嚙んで──などと思うなよ」
 馬乗りになったラーシュが、ティレナを冷たく見下ろした。
「あんたが死ねば、姉が同じ目に遭うだけだ。彼女を守りたいのなら、何をされても耐えて生き抜け」
 下顎をぐいと引き下げ、口をこじ開けられる。
 唇の隙間からラーシュの親指がねじ込まれ、怯える舌をなぞった。
「ぅ……んぐっ……」
 そんな場所に触れられる羞恥と違和感に、ティレナは呻き声を洩らした。
 中指と人差し指も入ってきて、唾液に濡れた口蓋や頬の裏を無遠慮にまさぐられる。
「小さな口だな。男を咥えるには苦労しそうだ」
「っ……かはっ……!」
 ようやく指が抜け出ていき、ティレナは咳き込んだ。
 瞳が潤むのは、生理的な嘔吐感のせいだけではなかった。
「ラーシュ……っ──」
 本当にずっと恨んでいたのか。
 親切にしてくれたのも全部噓で、仕返しの機会を窺っていたのか。
 尋ねようとしたけれど、吐き捨てるような言葉に封じられる。
「馴れ馴れしく呼ぶな」
 ラーシュの手がドレスの胸元にかかり、かつて見惚れた筋肉質な腕が、力任せに布地を引き裂いた。
「いやあぁっ……!」
 地下の天井に悲鳴が響いた。
 ドレスの下に着ていたシュミーズごと、鎖骨から臍の下までを一気に破られる。
 寝ているところを起こされたように、剝き出しの乳房が無防備に揺れて弾み出た。
「はははは、いい表情だ!」
 マディウスが手を打って喜んだ。
 愉悦に濁る目はティレナの胸ではなく、引き攣った顔のほうに向けられていた。
「この女を追い詰めて、もっと泣かせろ。お前はなかなかの策士だな、ラーシュ。エレインを盾にとって抵抗を封じるあたり、ティレナの弱みをよく理解している」
「恐れ入ります」
 慇懃に答えたラーシュが、ティレナに覆いかぶさった。
 粟立つ胸に触れられるのかと思いきや、耳朶を甘嚙みされてびくっとした。
 唇の感触がくすぐったくて、吹き込まれる吐息は熱く湿って、ぞわぞわとした未知の感覚に支配される。
「ふぁっ……」
 耳孔を舐られると、意図しない甘い声が鼻に抜けた。
 狭い場所で舌がくちゅくちゅと躍り、敏感な窪みを蹂躙する。
 そんなところを舐めてなんの意味があるのかと困惑するが、体は勝手にのたうって、言葉にし難い感覚を逃がそうとする。
 唾液を引いた舌が耳から抜かれ、細い首筋をつっ──と舐め下ろした。
「……っ!」
 舐めるだけでなく、ラーシュは頸動脈のあたりを軽く嚙んだ。急所を押さえられたティレナは身を強張らせ、子兎のように震えることしかできない。
「じっとしていろ」
 肌を通じて、ラーシュの囁きが直に響いた。
 キスとも愛咬ともつかない行為を繰り返しながら、大きな手が柔い膨らみを包んだ。
「……やめ、て……っ」
 ざらつく掌に乳房を覆われ、ティレナは弱々しく頭を振った。
 輪郭を辿る指先が頂に達し、息が詰まる。
 自分のそこがラーシュの指に捏ねられる光景を、ティレナは悪い夢の中にいるように見ていた。
「ぁ……はっ……」
 瑞々しい乳房が、浅い呼吸に合わせて小刻みに波打つ。
 傍目にもはっきりと尖りつつある乳首は、巧みな指でくりくりと弄られ、きゅっと摘んではひねられた。
 肌が紅に染まるのは、ランプの灯りのせいか、身の内から湧き上がる淫靡な火照りのせいなのか。
「っ……う、……く」
「声を出せ」
 唇を嚙んで堪えていると、ラーシュが言った。
「気持ちがいいのなら、素直に感じろ。そのほうがあんたのためだ」
「っ……こんなの、よくなんか……」
「これでもか?」
「ぁあああっ……!」
 喉から甲高い声が迸った。
 頭の位置を下げたラーシュが、硬くなった尖りに吸いついたのだ。
 ぬめる舌が乳首に絡み、ざりざりとなすりつけられて腰が浮く。反対側の胸にも手が伸びて、形が変わるほどに揉みしだかれる。
「あっ、あっ……ぁふ、……ぁんっ!」
 喘ぎすぎて言葉にならず、お願いだから助けてほしいと視線ですがる。
 これだけひどいことをされても、ティレナはなおラーシュのことを信じたかった。
 こんなことになったのは何かの間違いだと、そう思っていたかった。

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