聖王猊下の箱入り花嫁
- 著者:
- イチニ
- イラスト:
- 森原八鹿
- 発売日:
- 2021年09月03日
- 定価:
- 792円(10%税込)
この身体を誰かに触れさせたのですか?
枢機卿が起こした事件の責を負い、還俗して第四皇女ルイーゼと婚姻することになった聖王ライナルト。しかし、感情が昂って“聖力”を暴走させたトラウマを抱える彼はルイーゼに怪我をさせないため“白い結婚”を申し入れる。了承したルイーゼだったが、実は“聖力”を“精力”と勘違いしていて……。精力絶倫という、人には言い難い悩みを打ち明けてくれたと思い込んだルイーゼが導き出した答えは、ライナルトを縛って閨事を遂行することだった――!?
トラウマ持ちの元聖王×天然皇女、白い結婚を貫くはずが――?
ルイーゼ
敬虔な信徒でもあるフィルア帝国の皇女。真面目な性格で、ライナルトとの閨事にも準備万全で挑むが……。
ライナルト
信徒から篤い信仰を受けていた元聖王。ルイーゼとの婚姻に最初は戸惑うも、彼女への感情は次第に変化していく。
(彼女は……いったい何を考えているんだ)
交合をしようとしているらしいが、なぜ交合をしたがるのかがわからない。
白い結婚が嫌ならば、ライナルトが話を持ちかけたときに断ればよかったのだ。受け入れておいて、なぜライナルトの両手首を縛り、襲いかかってくるのか。 行動が謎すぎた。
ライナルトは俯き、ルイーゼの裸体が視界に入らないようにする。
ルイーゼが近づいてきたらと怯えていたが、その様子もない。 沈黙が落ちる寝室に、ぐちゅぐちゅっと小さな水音が響く。
不思議に思いルイーゼをちらりと見上げたライナルトは、弾かれたように視線を外す。
ルイーゼは裸体を晒した姿で膝立ちになって、ほっそりとした手を自身の太ももで挟んでいた。
「……で、殿下……その……何をされているのです……」
煽情的な姿に声が掠れてしまう。
「ほぐしているのです」
ライナルトの問いかけに、ルイーゼは至極真面目に答えた。
「ほぐす?」
「潤滑剤で女性器をほぐさねば、猊下の男性器を挿入できません」
ルイーゼの卑猥な言葉に頭の奥が痺れたように重くなり、昂った下半身にさらに熱がこもる。彼女の指がほぐしている場所を想像し、まるで期待するかのようにライナルトの男性器が反り返った。
「どうしてなのですか……殿下……あ、あなたも白い結婚を了承したはずです……陛下から私に従うなと言われましたか?」
ライナルトの言葉にルイーゼは目を見開く。
「精力のことを、猊下は秘密にしてほしいとおっしゃいました。あなたがわたくしにだけ話してくださったのです。たとえ皇帝陛下に命じられても、決して口にはいたしません」
ルイーゼは心外だと言いたげな顔で言った。
「ならば、なぜ……」
「わたくしは、猊下のお気持ちに寄り添いたいのです」
気持ちに寄り添いたいならば、このような行為はやめてほしい──。
ルイーゼにそう言おうとしたのだが、ルイーゼの裸体を見ないように逸らした視界に、白い手が伸びてくるのが見えた。
(駄目だ。彼女を振り払わないと……)
両手を縛られていても、足で遮り、小柄なルイーゼを押しのけるのは可能だ。
けれどライナルトは、己の心が揺らぐのが恐ろしかった。
強引に腕力を使い抵抗すればその衝動のまま聖力を使ってしまうかもしれない。もう誰にも、ひとすじの傷さえつけたくないのだ。
ほっそりとした指先がライナルトの脚の間、天を向いた男性器の先端に触れる。
「……っ」
ルイーゼの指は透明な液体で濡れていた。おそらく潤滑剤なのだろうが……その指が先ほどまで触れていた場所を想像すると、はち切れそうなほどそこが熱く滾った。
自分の身体がこれほど簡単に情欲に弱いとは思いもしなかった。もっと触れてほしいとでもいいたげに、尻が戦慄いた。
ルイーゼは両手でライナルトのそれを包むように挟むと、ぬるぬると上下に潤滑剤を擦りつける。
「っ……あっ……」
甘く弾むような声が漏れ、ライナルトは唇を嚙んだ。
ルイーゼを止めなければならないのに、他人に陰茎を扱かれる快楽にライナルトの思考が、甘く蕩けていく。
熱を持っているせいだろうか。ルイーゼの冷えた手がたまらなく気持ちがよい。
「……先端から……しずくが……感じておられるのですね」
「っ……」
先端の孔から漏れたしずくを親指で拭われ、ビクビクと陰茎が震えた。
「猊下。我慢してくださいませ」
ルイーゼはあと少しで達する……というところで、陰茎から手を放してしまう。手を追いかけるように腰を揺らしてしまい、ライナルトは自身の浅ましさに恥ずかしくなった。
「では、失礼いたします」
ルイーゼは淡々とした声音でそう言うと、とんと軽くライナルトの肩を押す。
そして、寝台に背をつけたライナルトの下半身に乗り上がってきた。
小柄なルイーゼが脚の上に乗っていても、重さは感じない。
簡単に振り払える。けれど──やはり振り払えなかった。
聖力の暴走を怖れたからではない。脚に乗られ、ライナルトは驚き、俯いていた顔を上げた。そして、ルイーゼの姿を視界に入れてしまった。
ライナルトを見つめる黒い双眸は潤み、唇は僅かに開き甘い吐息を漏らしていた。
華奢な顎、ほっそりとした首。滑らかな曲線を描く肩と、まっすぐに浮いた鎖骨。張りのある豊かな乳房と、つんと尖った薄紅色の小さな乳首。
淫らで煽情的なルイーゼの裸体にライナルトは見入る。彼女の行為をもはや止める術は
なかった。人形のごとくされるがままになってしまう。
「んっ……んん」
ルイーゼが小さく呻きながら、ライナルトの上で腰を落としていく。
「…………や、やめてください……っ! はっ……あっ」
やめるよう訴えるが、ライナルトの昂った先端にルイーゼの熱くふっくらしたものが触れ、必死にかき集めた理性が霧散してしまう。ぐちゅっと小さな淫音を立て、ライナルトのそれが熱いものに埋もれていく。
「っ……んんっ」
ルイーゼが呻くごとに、濡れそぼった熱く狭い場所に陰茎が呑み込まれていった。
途中まではゆっくりとした動作だったのだが……ルイーゼは焦れたように、腰を弾ませた。パチュンと音を立てて肌が密着する。
「あっ」
「は、入りました……うう……」
ルイーゼが掠れた声で言う。