人は獣の恋を知る
- 著者:
- 栢野すばる
- イラスト:
- 鈴ノ助
- 発売日:
- 2021年09月03日
- 定価:
- 814円(10%税込)
僕の「王妃」はここにいる。
若き国王アンドレアスは、異国の王女と政略結婚することに。だが輿入れの直前、王女は姿を消し、身代わりの娘リーラを寄こされる。無垢で無防備な彼女に庇護欲を掻き立てられ、つい世話を焼いてしまうアンドレアス。腹を探りあわなくていいリーラとの生活は、彼に安らぎを与えていた。だがある日、王女発見の報せが入る。国へ戻ろうとするリーラにアンドレアスは、国王の仮面を脱ぎ捨て、 一人の男として欲望をぶつけるが……。
本音を見せない孤高の王×他人の心に敏感な偽の花嫁、たった一度の我が儘な恋。
リーラ
逃亡した王女の身代わり花嫁。働きすぎなアンドレアスを心配している。過去の記憶がないと言うが……。
アンドレアス
公明正大な若き国王。仕事のし過ぎで身体が悲鳴をあげているが、精神が強すぎるために気がつかず無茶をしがち。
「嫌、おやめください、嫌です……っ……」
どんなに拒んでも、愛おしい男の唇は離れなかった。
気づけばアンドレアスの身体がリーラの両脚の間に割り込んでいる。大きな手で腰と、手首で縛られた腕を押さえられて、押しのけることもできない。
「ア、アンドレアス……様……嫌、嫌です……!」
どれほど拒んでも、触れる手や乳房を弄ぶ唇は止まらない。
乳嘴から唇が離れると共に、艶やかな声がリーラの耳元で聞こえる。
「身体は嫌だとは言っていないようだが」
長い指が、濡れ始めたリーラの花心に触れた。
軽い愛撫だけであふれ出した蜜と、昨夜気を失うまで注がれたものの残滓が、アンドレアスの指を汚すのが分かる。
「こんなに濡らして、可愛い身体だ。今すぐにでもお前を抱けそうだな」
覆い被さってくるアンドレアスに、リーラは抗った。
「お願い、もうやめてください……もし御子様ができてしまっ……ああ……」
アンドレアスの指を受け入れた秘部がぎゅっと締まり、もっと欲しいとばかりにだらしなく弛緩する。
「それでいい、世継ぎをもうけるのも僕たちの大切な仕事だ」
耳元に熱い息が掛かる。秘部に触れた指が泥濘に沈んでいき、リーラは嬌声を堪えて唇を嚙む。
慈しむように肩口に頭を抱え込まれ、耳朶に口づけされて、リーラの目からますます涙が流れた。
アンドレアスは間違いなく『偽妃』のリーラを愛している。
『本物の王妃』のことなどこれっぽっちも愛する気はないし、飛び降りようとしたリーラのことを本気で怒っている、そのことがはっきりと分かった。
人よりも勘が鋭い自分の特異さを呪わしく思う。
「い、嫌です……指、指を、お抜き……くださ……」
どんなに堪えようとしても息が乱れ、言葉がまともに紡げない。
「本物は……私じゃな……んッ……」
逆らい続けるリーラを咎めるように、アンドレアスの指が濡れてうねる蜜窟を行き来する。中指と人差し指で淫路を暴きながら、つんと尖った花芽を親指で軽く押す。
「あぁ……っ……」
もう、やめて、という言葉さえ出なかった。
蜜裂からますます熱い雫が溢れ、濡れた襞が強く収縮した。目の前がクラクラするほどの快感が身体中を熱く燃え立たせる。
リーラは与えられる快感から逃れようと虚しく敷布を蹴った。
「指……抜い……っ……ん」
「静かにしていろ。お前は僕に抱かれるのが嫌なのだろう。それならば罰として、一番嫌なことをたっぷりしてやる」
アンドレアスの唇に唇を封じられ、ぐちゅぐちゅとことさらに音を立てて中をかき回され、リーラはしなやかな身体の下でもがいた。
どれほど抗おうとも、アンドレアスの身体はリーラから離れない。むしろ、リーラの身体がアンドレアスの引き締まった身体に吸い付いていくかのようだ。
──ああ、いくらお慕いしていても……駄目……なのに……。
アンドレアスの執拗な愛撫を受け止めながら、リーラはひたすら涙を流す。
「んっ……ん……!」
気づけば指が抜かれ、肉杭の切っ先が弱々しく口を開けた陰唇に押しつけられていた。
リーラの身体がひときわ熱くなる。
──受け入れては駄目……。
頭では抗おうとするのに、強引に大きく開かされた脚にはもう力が入らない。
「僕が嫌いか」
「あ……き、嫌い……です……」
ぼろぼろと涙を零しながらリーラは噓をついた。胸が苦しい。心が焼けるようにじりじりと痛む。
「そうか、好きか……少しだけ安心した」
リーラの歪んだ泣き顔を見て、アンドレアスが笑った。透き通るような青い目には、リーラのぐしゃぐしゃに濡れた惨めな顔が映っている。
「僕もお前を愛している」
再び口づけられ、リーラは薄く唇を開けた。
アンドレアスの身体に慣らされ始めた蜜路が、ゆっくりと押し入ってくる雄を歓喜と共に受け入れる。
──ああ……だめ……気持ち……いい……。
繫がり合うだけで、甘く蕩けるような快感とアンドレアスへの情愛が身体中を満たしていく。このまま取り返しが付かなくなるまで愛されてしまえと、心の中の悪者のリーラが囁きかけてくる。
「ん、あ……っ……」
身に余る大きな肉杭に貫かれ、リーラの唇から甘い嬌声が漏れた。粘着質な音を立てて行き来するそれを絞り上げ、味わいながら、リーラは息を弾ませた。
「は……あぁ……あ、ん……っ……」
「二度と……バルコニーから飛び降りようとするなよ。明日からお前の見張りを倍に増やす。大事な『王妃』が怪我でもしたら大変だからな」
接合部をぐりぐりと押しつけながらアンドレアスが言う。彼の滑らかな肌には玉の汗が浮いていた。
「い、いや……違……私、王妃様じゃ……あぁ……」
繫がり合った場所から、次から次にだらしなく淫蜜が溢れてくる。
どれほど口で抗っても、身体は容易にアンドレアスに屈服し、はしたなく涎を垂らし続けるのだ。
「あ、あんっ、あっ」
身体が揺さぶられるほどに突き上げられて、リーラは不自由な姿勢でただひたすらに喘いだ。甘く蕩けた声なんて上げるつもりはないのに、止められない。
アンドレアスと愛し合う喜びで、肌がぬめるような光を帯びていく。
──私もアンドレアス様が好きです。好きだから、もう解放してください……。
リーラはぎゅっと目を瞑る。
ここで舌を嚙めば終わりにできるかもしれない。リーラは震える歯を舌先にあてがう。けれど嚙み切ることはできなかった。
──できない……アンドレアス様……ああ……。
命を絶つ勇気も無いまま、リーラは抽送に身を任せ続けた。中を穿つものが硬さを増し、リーラの身体をきつく満たしているのが分かる。
リーラは息を弾ませ、必死に懇願した。
「駄目です、外に出し……あぁっ……」
リーラの願いを拒むように、アンドレアスの手がリーラの腰を強く摑む。
「ん……あ……いやぁ……っ……」
逃れようと脚をばたつかせても、びくともしない。
「僕の妃はお前だ。未来のオルストレム王の母も、お前だ」