裏切りの騎士と呪われた皇女
- 著者:
- 戸瀬つぐみ
- イラスト:
- 幸村佳苗
- 発売日:
- 2021年05月01日
- 定価:
- 792円(10%税込)
身の程もわきまえず
貴女のすべてを私は奪う――
反乱軍に国を滅ぼされた元皇女オデットは、籤で選出された騎士ユリウスの妻として下げ渡されてしまう。その男は、かつて教師としてオデットに仕えていた技官“ジョン”だった。密かに心を寄せていた“ジョン”が、容姿も身分も名前もすべて偽って反乱軍を宮殿に引き入れた裏切り者と知り、オデットは屈辱に打ち震える。ユリウスに処女を強引に奪われてしまうが、ある理由からオデットの身体に施されていた『呪い』が発動してしまい……。
背信の騎士×亡国の皇女、踏みにじられた想いの行く先は――?
オデット
クナイシュ帝国の元皇女。身体にある秘密を抱えている。反乱軍の騎士の妻として下げ渡されてしまう。
ユリウス
アニトアの騎士。帝国に偽りの姿で密偵として入り込み、オデットの側近くで教師として仕えていたが……。
「大丈夫です。酷くはしないと言ったでしょう」
とろりと、瓶から彼の手のひらに落ちていったのは、蜂蜜色の液体だ。
ユリウスの大きな手が、まだ触れられたことのない部分に近づいてくる。オデットは警戒してしっかりと足を閉じたが、努力は虚しく隙間に割って入られてしまう。
「いやっ」
ねっとりとした感覚を伴わせながら、秘部に刺激が与えられた。前の小さな突起に指先が触れただけで、びくんと腰を跳ね上げてしまう。
いやだ、こんな反応はしたくない。今感じたものではなく、別の感覚を取り戻そうと自分の腕に爪を立て掻きむしった。
「肌を傷つけるのはやめてください。縛られたくないのなら」
「だったら……おかしな薬を使うな、卑怯者」
乱れてしまうのは、自分の意思ではない。薬のせいで強制的に引き出されてしまっている。そう解釈して非難するが、相手に否定されてしまう。
「これは、ただの香油です」
嘘だ。ユリウスに触れられた部分が、じんじんと痺れて熱い。無理やりにでも、おかしくするつもりなのだと思いオデットは再び暴れた。
しかし、バタバタと足を動かしたことによって、ユリウスの前に秘められた部分をさらすことになってしまう。
足を開くようにして膝を押さえつけられてしまったので、もう為す術もない。
「痛みを和らげる効果はありますが、それだけです。もちろん毒ではありません」
だったら、襲ってきた尖った感覚はなんなのだろうか。いくらオデットがやめろと懇願しても、ユリウスはやめてはくれなかった。
垂らした香油をさらに馴染ませるように、オデットの秘裂を何度も指で擦ってくる。そして、強く反応してしまった隠芽の部分を、指で必要に嬲り始める。
「んっ……そ……れ、や」
声を堪えながら、刺激をやりすごそうとしても耐えきれない。じんじんと湧き起こる痺れは、波のように何度もオデットを襲い、大きくなっていくばかりだ。
ユリウスはやがて、オデットのやわらかな襞をめくり、清めのときですら触れないような奥の道へと指を進ませた。
男の節くれだった指の感覚を、体内で確かに感じる。それはとても大切な場所だったのだろうと本能で察し、眦から一粒の涙をこぼした。
「あっ、あっ……あああっ、もう許して」
感じたくないのに、確かに身体は喜んでいる。
どうして、この男は冷酷な瞳を向けながら、オデットを丁寧に抱くのか。
心と身体を切り離してしまえたら、どんなに楽だろう。
探られた奥から、ぐちゅりと淫らな音がした。ユリウスが塗り込んだ香油のせいではなく、オデットから溢れ出てくる蜜のせいであるのはあきらかだ。
「なぜ泣くのです? こんなに大切に抱いてさしあげているのに」
ユリウスの口元は出てきた不満とは裏腹に、乱れるオデットを嘲笑っている。二本の指を使いながら閉じた入り口を押し広げつつ、中を探って女の欲望を暴いていく。
「ひっ、ああっ……」
指で届くぎりぎりの奥を何度も擦られ、そのたびにオデットはたまらず喘ぎ、花弁をひくつかせてしまう。
「ああ、嫌がっているのではなく、欲しがっているのですね。私を誘っているように蠢いています」
オデットは、否定の意味でふるふると首を振った。
しかし、ユリウスは行為をやめる気がないようで、一度オデットの中から指を抜くと、初めて自分の衣服に手をかけた。
上着を脱ぎ、前をくつろげたところで、オデットの耳の近くに顔を寄せて囁く。
「私のものになりなさい。そして……私を憎みなさい」
「憎い……わたくしは、おまえが憎い」
裏切り者に心を許しはしない。最後の抵抗のつもりで睨みつけると、ユリウスはおもしろそうに笑った。
「意志の強さも、好ましいと思います。壊れてしまうよりずっといい。正気のまま、私の存在を直接感じてください。許しなど乞いません。あなたに刻みつけてさしあげる」
そう言って露わにしてきたユリウスの象徴は、秀麗な容姿に似つかわしくないほど、凶悪な姿をしていた。
興奮した男の象徴を見るのは初めてだったが、自分の身体がそれを受け止めることができるわけがないと畏怖した。
逃げようとすることなどお見通しなのか、しっかりと膝を押さえられ、香油と蜜で潤んだ入り口にあてがうと、ユリウスは腰を進めてきた。
「ほら、香油のおかげで痛みは少ないでしょう」
隘路を無理に抉じ開けられているのだ。圧倒的な質量を感じる。
「く……んっ」
オデットは声を失って、ただひたすら苦しさに耐えた。
それは相手も同じだったのか、少し前まで涼しげにしていた額に、汗を滲ませている。それでもユリウスはオデットの最奥まで楔を打ち込もうとしていた。
身体が悲鳴を上げている。どうしてここまで残忍になれるのだろう。短く荒い息づかいは、まるで獣のようだ。
名前と身分を偽っていたときに見せていた姿とまるで違う。理性や知性など微塵も感じられない、これがこの男の本性なのだ。彼はことごとくオデットを裏切る。
「私のものが、あなたの中にちゃんと収まっていますよ」
「うぅっ……」
ユリウスはオデットの腰を浮かせ、わざと繋がっている部分を見せつけてきた。自分がしていることを、オデットの目に焼きつけようとするかのように。
身体の中に大きすぎる凶悪な塊が押し込められている。もう壊されてしまったかもしれないと、そんな悪い妄想がオデットを襲う。
男の陰茎は大きくて硬い。しかしオデットの中はやわらかく繊細なのだ。
「あっ……やっ、やっ……やだ」
恐れに身体が強ばり、余計にユリウスの存在を感じてしまう。それが負の連鎖となって、混乱した。呼吸さえままならない。
「怯えないでください。痛みは少ないはずです。力を抜いて、心を鎮めて」
「壊れるっ、もう壊れてしまった」
「壊れはしません。口が利けるのですから大丈夫です。あなたは私を、しっかり受け入れている」
受け入れているのだとオデットに知らしめるように、ユリウスはゆるやかに抽挿を始めた。また、粗悪な寝台が軋む音を上げ始める。
「やっ、あっあぁ……、ん」
「怖いだけではないはずだ」
より強く腰を打ちつけられ、ユリウスはこれ以上先のないオデットの奥の壁を何度も叩く。与えられる刺激が強さを増していった。
「はぁっ……、あん、あっ、ジョン……おねが、い」
やめてと言いたいのに続かない。どうしてこんなことをするのだろう。オデットが苦しんでいるのに、どうしてうっすらと喜びの表情すら見せるのだろう。
「ああ、もっと欲しいのですね」
「ち、……がう」
自分は欲しがってなどいない。都合よく解釈され否定したいのに、オデットの腕は勝手にユリウスにすがりついてしまう。
男の身体というのは、こんなに逞しいものだったのか。
香油と蜜で潤んだ陰道は、まるで喜んでいるかのように、中に打たれた熱杭にからみついている。奥からどんどんと淫らな雫が溢れ出し、オデットの入り口は、穿たれるたびに卑猥な音を立てている。
「あっ、ああぁ、あっ……もう、……」
おかしくなる。痛いのか、苦しいのか、気持ちいいのか、何もわからない。
ただ、オデットの内側を流れていた感情の奔流が溢れ出し、自らを飲み込んでしまう気がした。
真っ白になる。快楽だけを追い求める、得体の知れないものに造り変えられてしまう。
憎い男の手によって。
「あっ、もう……やっ、ほんとに、ん……やめ……て」
いっそう強く身体を揺さぶられ、オデットはもう何も考えられなくなった。
せり上がってくる強い快楽の波に溺れ、だらしなく涎を垂らしながら、びくびくと身体を痙攣させた。