背徳の恋の旋律
- 著者:
- 光月海愛
- イラスト:
- 緒花
- 発売日:
- 2021年06月03日
- 定価:
- 814円(10%税込)
俺は欲しくない。欲しがってはいけない。
家族のため、親子ほど歳の離れた伯爵に嫁いだナーシャは、夫とは夫婦関係がないばかりか王太子の愛妾として差し出されてしまう。物のように扱われ、自分の存在を虚ろに感じるが、国王の庶子ギュンターとの出会いがナーシャを変えていく。一方ギュンターは、夫のいる身でありながら、王太子の愛妾になったナーシャを苦々しく思っていた。だが、ナーシャの純朴さを知るにつれ、惹かれる気持ちを抑えきれず、ついには背徳の一夜を過ごしてしまい――!?
恋愛に潔癖な軍人×薄幸の伯爵夫人、不貞を憎む男は背徳の愛に溺れて……。
ナーシャ
父が戦死し、借金が残った家のために歳の離れた伯爵に嫁ぐ。夫に政略の駒にされ、王や王太子に差し出される。
ギュンター
国王の妾の子の中で唯一認知され、貴族の位も得ている。性に奔放な母を見てきたせいで、不貞を唾棄している。
「不思議だな」
「……え?」
香水をつけ終わったギュンターは、ナーシャの首筋にそっと触れた。
「俺と同じ香りがする……」
そうではないのに、まるで性交したかのような感覚にさえなる。
──王宮に戻れば、この人は、殿下の妾に戻ってしまう。
ギュンターの中で独占欲が芽生えた。
その手は自然とナーシャの頭を引き寄せていた。
指先に、柔らかな後れ毛が絡まり、整えられた髪が崩れる。
更に抱き寄せると、ナーシャが目を瞑る。
先に鼻先が触れて、そして唇が重なった。
──柔らかい。
想像通りの感触。
くちづけをしてすぐ、僅かながら彼女の戸惑いが感じられた。一瞬、ギュンターの手から離れようとしたのだ。
動作に伴い、花の香りがふわりと鼻腔に届く。
そうはさせまいと、ギュンターは構わず唇を押し当て続けた。
「……ん……」
途中、やや苦しそうなナーシャの声が漏れると、その隙を狙い、舌で彼女の唇を割る。
固く閉じられた歯も容赦なくこじ開け、ついにナーシャの口腔に辿り着いた。
──温かい。
そう感じたのと同時に、ギュンターの舌はナーシャの舌を探る。二つの舌が出会い、巻き込んで蠢く度に、狭い客車の中で身体の密着度が増した。ギュンターがナーシャの細い腰を抱き込むと、濡れた口からまた、苦しそうな、それでいて甘い声が漏れた。
──拒まないのか?
暗がりの中、ナーシャの表情は見えない。
こんな狭い場所で、男に抱きつかれては抵抗もできないだろう。
しかし、ナーシャは拒絶の言葉を発することなく、受け入れる姿勢さえ見せている。
ナーシャの口から溢れる唾液と声を吸いながら、ギュンターの手は止まらなくなった。
ドレスの襟を引き下げ、脱がす前から存在感を主張していた胸に片手で触れた。
視覚で確かめなくても、その豊かさを感じ取ったギュンターは、本能のまま、子供が粘土で遊ぶように、膨らみを摑んで揉んだ。
彼女の性質と同じように、想像以上にふんわりと柔らかく、けれど芯は張りがあって、いくらほぐしても形は崩れない。つい、絞り出すように力を籠めると、指の間で先端の突起がぷっくりと形となって現れた。
そこで、ナーシャの息遣いが変わったことに気づいたギュンターは、自身も息を荒くし、その頂を咥えた。
強く吸い込むと歯に当たり、ナーシャの声が痛みを帯びる。
舌先で突起を舐めると、腕の中で彼女の細腰がピクリと動いた。
ギュンターが執拗に、音を立てて左右の胸に交互にしゃぶりつくせいか、ナーシャは我慢できないといった様子で、甘い声を漏らした。
彼女の鎖骨につけた香りが汗や唾液と混ざってギュンターの鼻先を刺激する。
ドレスの裾をたくし上げて絹のような肌に触れた時、歯止めが利かなくなった。
固く閉じられた脚を強引にこじ開けようとする。
「……これ以上は……」