王様の鳥籠
- 著者:
- 桜井さくや
- イラスト:
- 鈴ノ助
- 発売日:
- 2021年04月03日
- 定価:
- 814円(10%税込)
おまえはもう二度と飛び立つことはできない。
終わりの見えない快楽に、リーナは淫らに声を上げながら涙を零した。眉目秀麗な若き国王フェネクスに捕らわれてから、どれほどの時が流れただろう。彼は誰の言葉も聞こうとはしない。リーナが王宮に招待された夜から、その華奢な身体を組み敷き、欲望のままに貪るだけだった。「今さら後戻りなどできると思わないことだ」フェネクスの真意がわからぬまま、ただいたずらに時が過ぎていく。だがフェネクスの正体が、リーナの大切な文通相手だと知り――!?
愛を知らない寡黙な王×悪意を知らない箱入り令嬢、重すぎる執着愛に囚われて――!?
リーナ
伯爵家の一人娘。鷹を助けた縁でフェネクスと出会う。以来、彼と会うことはなかったが、5年間文通を続けていた。
フェネクス
若くして王になったが、カリスマ性があり崇拝者が多い。リーナと初めて会ったときは、シュトリと名乗っていた。
「……この話は、もう終わりだ」
「あ……」
ややあって、彼は低く答える。
不意にリーナの手を摑み、強く抱き寄せて無理やり唇を重ねてきた。
「……んっ……う」
もしかすると、怒らせてしまったのだろうか。
一気にすべてを知ろうとしたのがいけなかったのだろうか。
後悔したところで取り消せるわけもなかったが、こんなところで抱かれるのだけは避けたかった。
すぐ傍にはシュトリもいるし、窓だって開けっ放しだ。
ここから外を眺めていても、人の姿を見かけたことは一度もない。声を出しても誰かに聞かれる心配はないのかもしれないが、それでも抵抗があった。
「いや……っ!」
リーナはフェネクスの胸を強く押し、咄嗟に顔を背けた。
その際に彼の腕の力が緩んだのがわかり、思いきり手を突っ張る。
すると、フェネクスの腕が僅かに外れたため、リーナは一瞬の隙をついて逃げようとした。
「あっ!?」
だが、それから一歩も進めずに、リーナは呆気ないほど簡単に彼の腕の中に引き戻されてしまう。
背を向けた途端、後ろからフェネクスに腕を摑まれていたからだ。
「ん…やっ、やめ……っ」
藻搔こうとしても、力の差は歴然としている。
背後から回された大きな手で強引に下腹部を弄られても、まともに抵抗もできない。
彼の手は徐々に上に向かい、すぐに柔らかな膨らみまで辿り着く。ドレスの上からいきなり乳房を揉みしだかれ、リーナは肩をびくつかせながら窓のほうに腕を伸ばした。
直後、バサバサ……ッと羽音が響き、シュトリが空へと飛び立った。
きっと、いきなり窓枠に手をついたから驚かせてしまったのだろう。
申し訳なく思いながらも、リーナは大空を翔る姿を羨望の眼差しで見上げる。できることなら、自分もあんなふうに自由に飛んでみたかった。
「どうして逃げようとする。まさか、嫌になったとでも言うのか?」
「……っは、ぁあう」
「そんなことは許すものか。今さら後戻りなどできると思わないことだ」
「んっ、あ……っ」
首筋をきつく吸われ、鬱血の痕を舌で嬲られる。
器用な指先で的確に乳首の場所を探り当て、いやらしく突起を捏ね回された。
──今さら……? なんの話をしているの?
嫌になるも何も、リーナは一度もこんな関係を望んだことはない。
晩餐会に招待されて王宮に来たはずが処女を奪われ、それからずっと狂った日々が続いているのだ。
しかし、今の彼の言葉からは、リーナを責めるような感情が見え隠れしていた。
これまでも、フェネクスと話が嚙み合っていないと思うことはあった。
何度か疑問を口にしたことはあったけれど、彼は部屋に戻るとすぐに行為をはじめようとするから、話をするどころではなくなってしまう。今も頭の隅で疑問を感じながらも、口からは喘ぎ声しか出てこなかった。
──ようやく少し話ができそうだったのに……。
リーナは肩で息をしながら、背筋をびくびくと震わせる。
彼は左手で乳首を捏ね、右手でドレスの裾を捲り上げて太股を直に触っていた。
窓に押しつけるようにして後ろから身体を弄られ、これでは逃げるどころではない。
やがて、ドロワーズの腰紐を解かれると、膝まで引きずり下ろされていく。ひやりとした空気を肌に感じて身を捩ったが、フェネクスはお尻の割れ目から手を差し込み、いきなり秘所に触れてきた。