没落貴公子は難攻不落!?
- 著者:
- 外堀鳩子
- イラスト:
- 氷堂れん
- 発売日:
- 2021年01月07日
- 定価:
- 770円(10%税込)
おまえ、毎日毎日、僕になんの用がある?
没落した侯爵家の嫡男、ヴァレリに恋をしていた伯爵令嬢のルチアは、いつの間にか仲間になっていたごろつきたちの力を借りて、行方不明だった彼を旧市街で見つけ出す。だがヴァレリは貴族嫌いなのだという。ルチアはそんな彼に好かれようと、町娘を装い奮闘するが、すべてが空回り。焦った彼女はごろつきたちの助言に従い、言葉の意味をよく知らぬまま“既成事実”をつくろうとするが……? ヴァレリはルチアを娼婦だと思いこみ、事態は思わぬ方向へ!?
生真面目な没落貴公子×ごろつきを従える箱入り令嬢、恋の追いかけっこの行く末は……?
ルチア
箱入りすぎる令嬢。ヴァレリが貴族嫌いと知り、ごろつきに町娘の言葉遣いなどを教わるが、確実に裏目に出ている。
ヴァレリ
侯爵家の嫡男だったが、放蕩者の両親のせいで没落。貴族嫌いになり、旧市街で投資をしつつ生活をしている。
接吻をしている。ルチアの瞳には、彼しか映らない。
ヴァレリの家に着いたら、部屋を堪能したいと思っていたけれど無理そうだ。
ふに、ふに、とやわらかい唇が、角度を変えて合わさって、ひっきりなしだった。
ルチアは、接吻が好きだと思った。九歳で接吻というものを知り、ずっと憧れ、彼とエミリアーナの接吻を目撃して絶望し、そして、いま、熱がここにある。
感極まって、彼の唇の隙間に舌を差しこむと、顔を離した彼に剣呑な目で見下ろされた。
「ヴァレリ、舌、絡めよう?」
それは、宿屋で彼が教えてくれた接吻だ。
だが、腹を立てたような彼の舌が口にねじこまれ、ぐちゅぐちゅとかき回す。八つ当たりをされているようで、ルチアは彼をなだめるべく、そっと舌に舌を絡めて撫でつける。すると、次第に彼の荒さがなくなった。
ルチアは唇がくっつくだけの接吻も好きだけれど、この、舌同士の接吻もお気に入りだ。
熱も唾液も息もすべてがひとつになる。ふたりが繫がっていると実感できる。
深いくちづけのさなか、ふいに柑橘系の匂いがした。目の端で捉えたのは檸檬だ。かごに山積みになっている。
唇と唇がかすかな音とともに離れた時に、ルチアは無意識に「檸檬」と呟いた。
「……水に入れたり、そのままかじる。手が不快な時は檸檬の汁で洗う」
彼は話している途中、ルチアの服のボタンを外し、脱がせようとする。お風呂じゃないのに、ルチアの肌が露出した。
「どうして、脱がすの?」
「おまえから男を消す。決めていたことだ」
この時、ルチアの脳裏に浮かんだのは、一緒に来たガスパロとロッコだ。ふたりは穴熊亭で待ってくれている。そのため、「消すのはいやだわ……」と訴えた。
「黙れ、決めていると言っただろう」
ルチアは一気に剝かれた。服はすとんと足もとに落ちる。纏っているものはなにもない。
彼の腕の力が強まり、「家に帰さない」と告げられた瞬間、抱きしめられていた。
「なぜおまえはそうなんだ。まったく僕の自由にならない。……おまえにわからせる」
ひざに彼の腕が差し入れられて、ルチアの身体は彼に抱えられた。一度、唇を食まれたあとに、寝台へなかば投げつけるように落とされる。ヴァレリは、怒っている。
「ヴァレリ」と身を起こそうとしたルチアは、すぐに寝台に沈められる。彼がルチアの上に重なって、いきなり胸に食らいつく。先を強く吸われて、ルチアはあごを突き上げた。
「あっ……!」
信じられないことが起きている。彼が胸を舐めているのだ。想定外のことだった。
しかも、下から胸をすくい上げ、わざと尖りを強調させて、ルチアに行為を見せつける。
身体を貫く刺激に、下腹にずく、と熱が集まった。彼が乳首を舌でねぶり、歯で潰すから、身体がびくびく反応し、腰が浮く。空いているほうの胸は、彼の指につままれてぐにぐにねじられた。ルチアは、はじめての身体のうずきに、首を左右に振りたくる。
「ああ……ぅう。あ。……はふ。……あ」
とても変な声だった。こんなふざけた声をヴァレリに聞かせるわけにはいかない。ルチアは、両手で自分の口を塞いだ。だが、胸から顔を上げた彼に、手を無理やり外された。
漆黒の髪からのぞく青い瞳は鋭い。
「声を出せルイーザ。全部、僕に聞かせろ」
ヴァレリは、ふたたび胸に顔をうずめる。揉まれて舐められ、舌ではじかれ、歯で嚙まれたり抓られて、乳首はひどくいじめられる。けれど、気持ちいいのはどうしてだろう。
声を上げて喘ぐルチアは、ガスパロとロッコが教えてくれたとおりに、思いを伝える。
「あふ、……ヴァレリ、好き。気持ち、いい……。……もっと、もっとして?」
すると、彼の行為は強くなり、ルチアの胸の形がぐにぐに変わる。
小さな薄桃色の突起は色濃く充血し、彼の唾液できらきら光る。しかし、あまり姿を現さない。彼の口、もしくは手に隠される。
先ほどよりも下腹が熱くてたまらなくなり、ルチアは脚をもじもじ擦り合わせた。なにかぬるぬるするものが、とろりと秘部から出ているようだった。
ルチアはまつげを跳ね上げた。
(月の障り!? まずいわ……)
恐る恐る手を自分の股間に差し入れると、やはりぬるぬるに濡れている。
腸が擦れた血液だ。人に見せてはいけないと教わっている。これが、三日以上続くのだ。
どうしようと動転していると、気づけば、彼の重みがルチアから消えていた。
なんと、身をわずかに起こしたヴァレリが、ルチアの手の動きを追っていた。股間にある手を見つめている。たちまち、全身の血が沸いた。見られていたことにルチアは衝撃を受けるが、手首を持たれ、手を引っこ抜かれそうになったので抵抗した。
「や、やめて。……お願い見ないで」
「僕の愛撫が気に入らないから、自慰を?」
彼の瞳は鋭いけれど、声も刺々しい。
(愛撫? 自慰? なに……?)
ふたたび「やめて」と伝えたあとに、ルチアは羞恥でぷるぷる震える。
彼はいじわるだ。制止しても聞いてくれない。そのままルチアの手首を持ち上げる。
けれど、指先についているのは血ではないようだった。とろみのある透明の液体だ。
(なにこれ?)
ルチアが指を見つめていると、そこに、ヴァレリの赤い舌がべろりと這った。
それは、指に留まらなかった。手のひらも甲も手首も、彼は舌を這わせていく。唇ごとつけ、舐めまわし、それが腕にもやってきた。ちゅうと強く吸いつき、赤い痕も残した。
八年間も好きな人。その人が、ルチアを舐めている。
「…………ヴァレリ、あたい……。あたい、あんたが好きだよ?」
「知っている」
舌は脇に到達し、とたんにぞわりと毛が逆立った。胸が高鳴り、ルチアは喘ぐ。下腹はびしょびしょで大変だった。シーツが濡れているのがわかる。
胸は特に念入りだ。もう一方の手も、お腹も、おへそも、両足の指一本一本に至るまで、彼は時間をかけて舐めしゃぶっていく。うつぶせにされ、背中やおしりまで。
きっと溢れた液が垂れているだろうから、恥ずかしい。だが彼は、おしりのくぼみに舌を這わせて舐めとった。さらに、おしりの丘に頬ずりされて、ちゅ、とくちづけられる。
あまりの恥ずかしさにルチアが両手で顔を覆っていると、仰向けにされたとたん脚を大きく開かされてぎょっとする。