贖罪結婚
- 著者:
- 富樫聖夜
- イラスト:
- アオイ冬子
- 発売日:
- 2022年02月03日
- 定価:
- 858円(10%税込)
やっと捕まえた、僕だけの蝶。
約六年前、国王の独断により父を反逆罪で処刑され、すべてを失ったクラウディア。修道院で慎ましく暮らしていたが、父の冤罪が認められ、運命が大きく変わる。国王の愚行を止められなかった償いとして、王弟アルヴィンとの結婚が決まったのだ。初恋相手である彼に、真綿に包まれるように大事にされ、淫らに愛される日々。彼は贖罪をしているだけ。そう思いつつも、クラウディアは彼との情事に溺れていく。だがその裏で、彼女を狙う動きがあって――!?
腹黒な王弟殿下×冤罪で家族を失った令嬢、六年越しの執着愛!
クラウディア
父たちを反逆罪で処刑され、母も亡くし、修道院に送られる。父たちの無罪を信じつつ、慎ましく暮らしていた。
アルヴィン
国王の歳の離れた弟。精彩を欠く国王とは対照的に、清廉潔白な上にいつも柔和なため、民からの人気が高い。
何を始めるのかと問い返す間もなく、クラウディアは肩を引き寄せられる。驚くクラウディアの唇をアルヴィンの口が塞いだ。
「んぅっ、ん、んんっ、は、な、何を」
クラウディアは慌ててアルヴィンの胸を押しのけた。
「何って、今夜は僕らにとっての大事な初夜だよ。……ああ、もしかして僕が寝室に来たのは本当に祝杯をあげるためだけだと思った?」
「え? 初夜?」
ポカンとクラウディアは口を開けた。その様子を見てアルヴィンが苦笑いを浮かべた。
「初夜だよ。夫婦になった男女がするものだ。ついでに言うと僕らは王族だから事後に処女の証として王宮にシーツを届けなければならない。そうしないと僕らの子どもは正式な子どもとして認められなくなる」
「子ども? 処女の証?」
初めて聞く事柄にクラウディアは困惑した。王族の結婚では処女の証を立てなければならないというのも知らなかった。
「そ、そんなこと初めて聞きました!」
実はクラウディアが結婚に尻込みをしないようにアルヴィンがわざと教えないようにしていたのだが、それを彼女は知る由もなかった。
「高位貴族の中では有名な話だから、あえて君に教える必要はないと思ったのかもしれないな。ごめんね? これも規則なんだ」
悪びれもせずに言うと、アルヴィンはクラウディアを抱えたままベッドに倒れ込んだ。
「え? きゃあ!」
押し倒されたのだとクラウディアが気づいた時には、すでにシーツに身体を縫いとめられていた。
「この半年もの間、我慢した僕の忍耐力を褒めてほしい。特につい味見をしてしまった初日は辛かった。初夜の儀があったから、君は今まで僕に襲われることなく処女でいられたんだってこと、自覚してほしいね」
クラウディアはこの期に及んでようやく、アルヴィンが本当の意味で夫婦になるために寝室を訪れたことを悟った。
「ど、どうして? 白い結婚だとばかり……」
「僕はそんなこと一言も言った覚えはないんだけど」
繊細なレースでできた夜着の肩ひもに指をかけながらアルヴィンが笑う。
「よく考えてみて、クラウディア。君は次代のローヴァイン侯爵を産む必要があるってことを忘れているんじゃない?」
「あ……」
そうだ。今のクラウディアはローヴァイン侯爵位を継いでいるが、それはあくまで暫定的なものだ。クラウディアの子ども──それも男児に受け継がれることを前提とした叙爵だった。
──どうして失念していたのかしら。
もしかしたら暫定的だったからこそ、当主としての自覚が芽生えなかったのかもしれない。当たり前のことをクラウディアは少しも考えていなかったのだから。
自分の至らなさにクラウディアは唇を嚙みしめる。
「白い結婚などありえないと分かったかい? 君と僕は結婚した。ならば君が産むのは僕の子どもだ」
「……はい」
「怯えなくていい。君は一人じゃない。僕らは神の前で夫婦になることを誓った。家族になったんだ」
「家族……」
家族、という言葉にクラウディアの胸がぎゅっと何かに摑まれたように痛みを訴えた。
「君と家族になりたい。家族を失くした君と、家族というものを知らない僕。だからこそ、互いの必要なものを与え合うことができる。そう思うんだ」
「アルヴィン様……」
それは不思議とクラウディアの胸を打つ言葉だった。もしかしたらそれこそ望んでいたものだったのかもしれない。
──家族。そうだわ。義務と贖罪のための結婚だったとしても、私とアルヴィン様は家族になったのよ。
おずおずと口を開く。
「……あの、家族は私を『ディア』という愛称で呼んでいました。もし差し支えなかったら、アルヴィン様にも……」
アルヴィンはにっこりと笑った。
「ディア、だね。これからはそう呼ぶよ。ディア、僕の妻」
優しく囁かれて、クラウディアの胸がキュンと高鳴った。
「僕に君を愛させてほしい」
こくりと頷く。その言葉を拒絶することなど、クラウディアにはできなかった。
夜着がアルヴィンの手によって剝がされていく。シュミーズどころかドロワーズまで脱がされ、今やクラウディアは完全に無防備な状態でベッドに横たわっていた。
アルヴィンの手がむき出しの膨らみに触れる。ぞわりと背筋に得体のしれない震えが走った。
「んっ……」
「ずっとお預けを食らっていた宝箱を開ける気分だ。ああ、だめだよ、ディア。隠さないで。夫には全部さらけ出すものだよ」
「は、はい……」
恥ずかしい。恥ずかしくてたまらない。
けれど、閨事はこういうものだと言われて、何も知らないクラウディアは従うしかなかった。
「ひゃっあ、そ、そんなところを摘ままないでください!」
立ち上がってきていた胸の頂を摘ままれて、クラウディアは真っ赤になって叫んだ。
「あっ、だめっ」
「ふふ、ごらん。どんどん硬くなっていくよ。これは君が僕に胸を弄られて感じている証拠なんだ」
「ふっ、くっ」
アルヴィンは立ち上がりかけたもう片方の胸の頂をピンと指で弾いた。その衝撃に一瞬だけ息が詰まり、弾かれた胸からジンと広がっていく奇妙な感覚に、声が漏れた。
「ああっ」
不思議なことに、触れられているのは胸のはずなのに、下腹部もじんと疼き始めていた。
──こんなの、こんなの知らない……!
ぞわぞわとした未知なる感覚に、クラウディアは翻弄されていた。それなのに、なぜかこんなふうに触れられるのが初めてではない気がしていた。
──前にこんなことがあったような……ああ、分からない。
うまく思考がまとまらなくなっている。
肌が粟立ち、アルヴィンは我が物顔でクラウディアの柔らかな肉を揉み、唇と舌で堪能していく。
「美味しそうだね、まるで熟れた果実のようだ」
ぷっくりと膨らんだ胸の先端にちゅっとキスをされて、クラウディアの子宮がキュンとなった。
──ああ、私、変だわ。もっともっと触ってほしいと思うなんて。疼く先端をもっと指で苛めてほしいと思うなんて。
記憶にないものの、アルヴィンが初日に植えつけた欲望の芽は確実にクラウディアの中で芽生えていた。
「あ、んっ、あ、ああっ!」
望み通り色の濃くなった先端を指で捏ねられ、クラウディアの唇から嬌声が零れた。
お腹の奥の方からじわりと何かが染み出してきて、じっとしていられなくなる。思わずもぞもぞと脚を擦り合わせると、アルヴィンがくすっと笑った。
「我慢できなくなったのかな?」
アルヴィンは手を伸ばしてクラウディアの脚の間に指を滑らせた。
「ひゃっ!」
そんなところを触る人がいることすら想像していなかったクラウディアは仰天した。だがすぐに脚の付け根に指を差し込まれて、更に仰天することになる。
「だ、だめっ、そんなところ……ああっ、やぁぁ」
花弁に指が触れると、ぬちゃっと濡れた音がした。これは一体どういうことかと思う間もなく、蜜口の上で指がくちゃくちゃと搔き回すような動きをし始める。
「っつ、だ、め、いや、変になる、からぁ!」
「大丈夫。君はこれがきっと好きになるよ」
つぷっと音を立ててアルヴィンの指が蜜口に突き立てられる。
「いっ……!?」
一瞬だけ刺すような痛みを覚えてクラウディアは喘ぐ。けれど痛みはすぐになくなり、代わりに激しい異物感が襲い掛かってきた。
アルヴィンの指は中を探るように動きながら奥へと向かう。
「ここが君の感じる場所だよ」
お腹側のある一点を指の腹で擦られた次の瞬間、クラウディアの身体がビクンと跳ねた。