寡黙な皇帝陛下の無邪気な寵愛
- 著者:
- 八巻にのは
- イラスト:
- 氷堂れん
- 発売日:
- 2020年08月03日
- 定価:
- 770円(10%税込)
余に卑猥な夢を見せてほしい
夢を操る力を持つターシャは、いやらしい夢を希望する客に応えていたせいで『淫夢の魔女』と呼ばれていた。不本意な呼び名が原因で拉致され、皆に恐れられている皇帝バルトに「卑猥な夢」を所望されてしまう。しかも淫夢で皇帝のモノを奮い勃たせなければ処刑!? さっそく夢を操るが、性欲どころか感情の起伏もないバルトは淫夢を見ることができない。そんな彼がようやく見た夢には、なぜか淫らな下着をつけた“ターシャだらけ”のハーレムが現れて……。
有能で“不能”な美貌の皇帝×淫夢の魔女、淫らな夢で世継ぎ問題を解決!?
ターシャ
流れる風の民。夢を操る力を持ち不本意ながら『淫夢の魔女』と呼ばれている。面倒見のよいお人よし。
バルト
帝国メルデスの皇帝。右眼と脚に傷がある。過去のトラウマが原因で感情の起伏がなく皆に恐れられているが……。
「そなたの唇は、柔らかい」
赤い声と熱っぽい吐息がターシャの頬を擽りながら、二度、三度と唇が重なる。
途端に唇から、バルトと触れ合った場所から、得も言われぬ愉悦が流れ込んできた。
「……あ……ンッ」
唇が離れても、甘い痺れが身体を蝕み身体を起こすこともできない。
(なに……これ……)
身体に力が入らないほど気持ちよくて、なのにどこかじれったくて、ターシャは身悶えながら甘い吐息をこぼす。
その様子を見た瞬間、バルトは目を僅かに見開いた。
「陛…下……」
自分が本物だと言いたかったのに、言葉を口にする間もなく食らいつくような口づけが降ってくる。
荒々しく抱き寄せられ、驚いたターシャの唇をバルトの舌がこじ開けた。
抵抗せねばと思うのに、触れ合う場所が増えると痺れが強まり、身体に力を入れることができない。
そうしていると肉厚な舌が歯列もこじ開け、ターシャの口内を犯し始めた。
「ふ……ゃあ……」
キスなどしたことがないターシャは呼吸さえままならず、バルトのなすがままだった。
怯える舌を絡め取られ、歯列や上顎をなめられていると思考も表情も甘く蕩けてしまう。
「そうか、余はそなたの蕩ける顔が見たかったのだな……」
息苦しさに喘ぐターシャに気づいたバルトが、そんな言葉と共に唇を放す。愛おしいものを見つめるような眼差しを向けられ頬を撫でられると、大きな手のひらから彼の気持ちと望みが流れ込んでくるのだった。
──彼女を感じさせたい。もっと甘く、乱れる様を見たい。
押し寄せる彼の欲望に、ターシャは自分の身体が甘く書き換えられていくのを感じた。
(夢の力が、私にまで影響してるんだ……)
止めねばと思うのに、今や愉悦は頭の天辺からつま先まで広がっている。
快楽を逃がそうとシーツを掴んでみるが、バルトの腕の中にいるせいか身体が元に戻る気配はなかった。
ならば夢自体を強制的に終わらせようと思ったが、それもできない。周りにいるターシャたちは消すことができたが、ぎゅっと抱き締められたせいで、甘い快楽がターシャを縛り目覚めを遠ざけてしまう。
「ターシャ、余はそなたに欲情しているのかもしれない。だからこの偽物にもっと触れさせてくれ」
偽物は消えてしまったのにバルトはそれに気づいていないようだった。
飢えた獣のような眼差しでターシャを見つめ、食らいつくように再び唇を奪ってくる。
「そして叶うなら、そなたが乱れる様を見せてほしい」
彼の言葉は望みとなり、望みはターシャを甘く変貌させる。
「……あっ、ッ──!」
腰の奥が突然ズクンと疼き、四肢が張り詰め法悦が溢れる。
絶頂手前の快楽が、触れ合いさえないままに弾け、ターシャの思考と理性を淫らなものへと書き換えていく。
「ああそうだ、もっと乱れてくれ」
腕の中にとらわれたターシャの首筋に、バルトが食らいつくように口づける。それだけで先ほどと同様の愉悦が弾け、ターシャは全身を弛緩させた。
「待って、だめ……だ、め……」
「嫌だという顔には見えぬ」
「でも、あッ、おかしく……なる……ッ」
「なればよい。乱れるそなたは美しい」
もっと見たいとバルトが望むと、ターシャの身体はそれを受け入れる。
彼の望みを、夢は淫らな愛撫に変換しているかのようだった。見えない力によって全身を弄られ、熱を高められ、思考さえも甘く溶かしてしまう。
「おかしく……して……」
そして淫らな願いはターシャ自身の願いへと変換される。甘い懇願が口から滑り出て、潤んだ瞳がバルトをとらえた。
その直後、自分はなんてことを言ってしまったのかと我に返るが、一度口からこぼれた甘い懇願はもう止まらない。
「それが、そなたの望みか?」
違うという言葉の代わりに、ターシャの表情がうっとりと蕩ける。
「触って……キスして、おねがい……」
口からこぼれた欲望が、今度は逆にバルトに伝染していくようだった。彼の瞳が虚ろになり、食らいつくように首筋を吸われる。
夢なので痛みはない、ただあるのは得も言われぬ心地よさだけだった。
気がつけばもつれ合うように寝台に横になり、バルトの手がターシャの肌を弄る。下着とガーターベルトは消えなかったが、布の上からでも彼の指使いはしっかりと伝わる。
「あぁ……そこ……」
乳房を強く揉みしだかれ、ターシャの顔が淫らに歪む。
「心地よいのか?」
「はいッ……もっと……もっと……」
強く、激しく触れてほしいと望めば、バルトはそれを汲み取り乳房に指を食い込ませた。同時に、もう片方の手が臀部へと伸ばされる。柔らかな肉に強く指が食い込むと、それだけで身体が熱くなってくる。
「あっ……ぅん……」
触れ合いによって蕩けたターシャの眼差しに、バルトは満足げな表情を浮かべ唇を重ねてきた。先ほどとは違い、今度はターシャもゆっくりと舌を動かす。つたなさはあるが、先ほどとは違い自分からバルトと舌を絡めた。恥じらいを捨て、嚥下できなかった唾液をこぼしながらの激しいキスはあまりに心地いい。
「よい顔だ、キスは……好きか?」
口づけの合間に尋ねられ、ターシャはコクンと頷いた。
「すき……だから、もっと……」
「欲しいか?」
「欲しい……もっと……」
舌っ足らずな声で望めば、バルトは先ほどより強く舌を吸い上げた。ターシャが乱暴なキスを好んでいると察したのか、激しく舌を絡ませ胸と尻への愛撫も強さを増す。
「ンッ、んん……!」
途端に全身の熱が高まり、絶頂の兆しがターシャを包む。
それをバルトも感じたのか、臀部に触れていた手がゆっくりと前へ回る。しっとりと濡れた布の上を撫でていた指が、ターシャの淫芽を探り当てたのは直後のことだ。
「アッ……ゃああ…」
くちゅりと下着の裏側からはしたない音がこぼれ、蜜口から止めどなく蜜がこぼれる。これは夢なのに尿意を催したような感覚が溢れ、恥ずかしさが増す。
羞恥心は僅かに残った理性を呼び覚ましたが、悦びに震える身体は元には戻らない。
「待って……そこ、は……」
「待たぬ。触れ合いは、そなたの望みでもあるはずだ」
情欲を帯びた声がターシャを縛り、再び理性を消していく。
「ンッ……これが、のぞ…み……」
「ここが濡れるのは女性が喜ぶ証だと聞いた」
「ふっ…ンッ、つよく…しない…で……」
秘裂への愛撫を強められ、感じすぎたターシャは涙目で訴える。しかし身体のほうは、むしろもっと触ってと言うように腰をビクビクと浮かせていた。
「素直になれ。余は、そなたが甘え乱れる姿が見たい」
バルトの懇願は、もはや甘い毒だ。瞬く間に心と体に広がり、最後の理性をかき消してターシャを淫らな女に墜としてしまう。
「さあ、本当の望みを口にせよ」
「触って……ほしい……もっと、もっと……」
「どこに触れてほしい」
「濡れているところ……強く……」
気がつけばターシャのほうからバルトの指に腰をこすりつけ始めている。
はしたない動きを恥じることもなく、むしろ悦びにそまった表情を浮かべるターシャにバルトが口づける。
彼は望み通りの強さで、ターシャの陰核を探り当て舐る。途端にターシャの思考は愉悦に蕩け、腰の奥から得体の知れない快楽が膨れ上がる。
「ああっ、もう…私……」
「余の腕の中で、甘く果てよ」
花芽をひときわ強く刺激された直後、ターシャの目の前が白く爆ぜる。
「アッ、ああああ……!」
初めて迎えた絶頂は、あまりに苛烈だった。