モフモフ悪魔の献身愛
- 著者:
- 山野辺りり
- イラスト:
- 緒花
- 発売日:
- 2019年12月28日
- 定価:
- 748円(10%税込)
あなたは私の獲物です。誰にも渡しません。
幼い頃に両親を失ったオリア。そんな彼女を育ててくれたのは悪魔のノワールだった。人間姿の時は恐ろしいほどの美形だが、普段は黒いモフモフ狼姿の彼。対価を払えば何でも叶えてくれる、兄のような存在だ。契約なんて関係なく、ずっと傍にいてくれたらいいのに……。そう願いつつも、オリアは幼い頃に交わした契約の内容を思い出せずにいた。「待てません。そろそろ私も限界です」けれど、あるきっかけで二人の関係は淫らなものに変わっていき――!?
オカン系悪魔×お人好しの町娘、無自覚な独占愛!
オリア
幼い頃に両親を亡くしてから、ノワール(ヴァールハイト)と暮らしている。彼のことは兄のように思っていたが……。
ヴァールハイト
ノワールの人間姿。人間姿の時はヴァールハイトという名前。オリアより家事が得意で悪魔なのに面倒見が良い。
ノワール
一見、大型犬のようだが実は悪魔。毛をブラッシングされるのが好き。とてもモフモフしている。
「暴れてはいけません、オリア」
穏やかに窘めてくるけれど、オリアの脚を?む彼の手に容赦はなかった。反射的に逃れようとした身体は、強引に引き戻される。むしろ先ほどよりも密着し、一番隠したくて恥ずかしい部分にヴァールハイトの舌が伸ばされようとしていた。
「駄目……っ!」
こんなこと、信じられない。信じたくない。
清めてもいない汚れた場所を舐められるなんて、オリアの常識の中には存在していなかった。誰も教えてくれなかったし、どんな本にも書かれていないことだ。ひょっとして『してはいけないこと』なのではないかと怯えが募る。
しかし戸惑いは、圧倒的な快感で塗り潰されてしまった。
「ぁ、んぁッ」
柔らかな器官に、神経の集中した敏感な淫芽を嬲られる。オリアの花芯をねっとりと押し潰してくるものが彼の舌だと察しても、やめてと叫ぶ余裕はもはやなかった。
くちくちと淫靡な水音が下肢から聞こえる。ヴァールハイトの舌が執拗かつ丁寧に、オリアの花芽を転がした。突かれ、押され、弾かれる。僅かに触れられるだけでもゾワゾワとした喜悦が生まれるのに、ちゅうっと口内に吸い上げられては堪らなかった。
「やぁ……ッ」
急激に頭の中が真っ白になり、弾けた快楽で手足が踊る。ビクリと指先まで痙攣し、上手く息が吸えない。オリアの爪先が丸まり、シーツに皺を刻んだ。
「……は……いくらでも食べられそうです。貴女の快楽はとても甘いのに、胸焼けしない。オリア、こっちを見てください」
茫洋とさまよっていた意識は、顎を捕らわれたことで引き戻された。真上から覗き込んでくる彼の視線に射貫かれ、怖いほど鼓動が疾走する。これ以上加速されたら心臓が壊れてしまうのではないかと不安になり、オリアはつい瞳を逸らしてしまった。
「……悪い子ですね。そっちがその気なら、遠慮しませんよ?」
「え? ……嫌ぁっ?」
両脚を抱えられ、オリアは仰向けのまま身体を腰から二つ折りにされた。秘すべき花弁が、大きく左右に開かれる。あまりにも淫らな状態に涙が滲んだ。
「ひ、酷い。やめて、ヴァールハイト!」
「貴女の全部をくれるのでしょう? それとも、?だったのですか?」
「だからって……」
「オリアの身体の中で、私の知らない場所があるのは気に食わない。全て何もかも、私だけのものだ」
熱烈な睦言だと勘違いするほど、心情の籠もった言葉に酔わされた。その内のほんの僅かでも、オリアが期待する意味であったなら、どんなにいいだろう。
これが大好きな相手に求められ、口説かれ、愛を確かめ合う行為であったなら。
───それでも、今だけは……
忘れたい現実から逃れ、オリアは唇を震わせた。きっと今なら、何を口走ってもこの場の雰囲気に流されただけだとごまかせる。気分を盛り上げるための戯言だと許してもらえるだろう。
本当の気持ちを告げたい思いと、彼を困らせたくない感情がせめぎ合う。オリアが負けてしまったのは、やはり少なからず怖かったからだ。
生まれて初めて異性に肌を晒し、受け入れる恐怖。人ではなく悪魔に身を任せる罪悪感。
だがそれらを凌駕するほど、ヴァールハイトを自分に?ぎとめたい気持ちが強かった。見苦しくてもいい。臆病者の狡さで、逃げ道を用意してしか本心を告げられない。
「……好き……貴方が、好き」
思い返せば、彼の作る料理や一緒に過ごす時間、肉球や毛並みについて言及したことはあったけれど、ヴァールハイト自身についての想いを打ち明けたことはなかった。本当はいつだって、この感情がオリアの胸を満たしていたのに。家族愛だと嘯いて、わざと気づかぬ振りをし続けてきた。
向き合うのが怖かったから。
悪魔に心を捧げても、幸せになれるわけはない。彼らは違う種族で、生きることも死ぬことも、本来は共にできない相手なのだ。ただ運命の悪戯で時折交差し、互いの欲をぶつけ合うだけ。オリアたちが何年も平穏に一緒に暮らしてこられたことこそ、奇跡だったのかもしれない。
「……好き……? ああ、人は長く傍にいると情が湧く生き物でしたね」
オリアの告白を受け、彼は不可解だと言わんばかりに瞬いた。心底理解できないのだろう。オリアがヴァールハイトの言動の全てを呑み込めないのと同じ。どこまでも平行線でしかないのだ。
───それでもいい。どうせ人間同士だって、完全に分かり合うことなんてできないもの。誰でも違う価値観や考え方を持つ。だったら愛された夢を見て、大好きな彼に抱かれたい───
理解し合えないまま、オリアは口づけを求めた。
願い通り与えられたものを享受していると、下腹を通り過ぎたヴァールハイトの指先に叢を撫でられる。つい身を強張らせれば、宥めるキスが瞼とこめかみに落とされた。
「大丈夫です。私を信じなさい」
悪しき存在の悪魔に言われ、安堵してしまう自分はたぶん、おかしくなっている。すっかり術中に嵌まっているのかもしれない。しかしそれの何が問題なのだろう。
堕落するならすればいい。魂を奪われるなら、それでも構わない。彼がオリア以外と親密になることの方が、耐え切れないほど嫌だ。
「……ぁっ……」
繊細な指使いで蜜口を一周辿られ、オリアの爪先が丸まった。誰にも触れられたことのない場所が、早くも期待に戦慄いている。はしたなく綻ぶ花弁が、如実にオリアの本心を代弁していた。
「小さな花ですね。丁寧にほぐさないと快楽どころか苦痛を与えてしまいそうです」
「や、ぁ、あ」
慎ましく閉じた秘裂を上下に擦られ、全身が粟立った。勝手に腹がひくついて、制御できない。自分の身体がまったく自由にならず、オリアは不安に瞳を陰らせた。
「な、何か変……っ」
「変じゃありません。貴女が気持ちいいと感じている証です。ほら、ご覧なさい」
「え?」
ヴァールハイトがオリアの眼前に突きつけてきた彼の指は、透明な滴で濡れていた。水ではない。まして粗相した覚えもない。無知なオリアには正体が分からず、ポカンとして彼を見返した。
「何、これ?」
「貴女の身体が私を受け入れようとして滲ませた蜜です。もっと溢れさせてください」
「……ぇっ」
言うなり、彼の指先に淫芽を転がされた。先ほどの舌とはまた違う悦楽が引き摺り出される。膨れた秘豆を二本の指で擦り合わされ、オリアの腰が魚のように跳ねた。
「ん、ぁあっ……ひ、ゃんッ」
粘着質な水音が大きくなる。身体をシーツの上でくねらせていると、ヴァールハイトの長い指が隘路に沈められた。