お義兄様の籠の鳥
- 著者:
- 市尾彩佳
- イラスト:
- 駒城ミチヲ
- 発売日:
- 2019年11月02日
- 定価:
- 748円(10%税込)
待っておいで、君はもうすぐ私のものになる。
田舎の修道院で貧しくも清らかに育ったアンジェは、突然、義兄と名乗るヘデン侯爵クリストファーに引き取られる。神々しいまでに美しい義兄に溺愛されるうちに徐々に心惹かれていくアンジェ。だが、血が繋がらないとはいえ世間では近親婚は禁忌。思い悩み距離を置こうとする彼女を、クリストファーは激しくかき抱く。「君が好きなんだ。この憐れな義兄を助けてくれ……」執拗に愛撫され何度も彼を受け入れるうちに、アンジェの倫理観もやがて崩れ去り――。完全無欠の若き侯爵×純真無垢な義妹、背徳と策略が少女をからめとる――
アンジェ
修道院で暮らす純朴な娘。近親婚は禁忌であるのに、クリストファーに惹かれる気持ちを止められずにいて……。
クリストファー
アンジェの義兄。血の繋がりはないが、アンジェのことを異様に溺愛する。
「こんなことをしながら私が相手の女性に愛してるとささやいても、君はかまわないって言うのか?」
切なげに訴えながら、クリストファーはアンジェの胸の頂を口に含む。唾液をまぶされ舌で舐め転がされて、アンジェはたまらず仰け反った。それが、彼に胸を差し出すような体勢になっているとも気付かず。
「あっ、んんっ、ぃや……っ」
恥ずかしいけれど、変な声が出てしまう。口をついて出た拒絶の言葉は、何に対するものなのか自分でもわからない。
クリストファーも気付いているのか、胸の蕾からほんの少し唇を離して問いかけてくる。
「その“嫌”は『わたしにこんなことしないで』の“嫌”なのか、『他の女性にこんなことしないで』の“嫌”なのか、どっち?」
どっちも、と答えられたらどんなによかっただろう。それこそが本心だから。
アンジェはクリストファーと親密な関係になるわけにはいかない。でも他の女性と親密になってもらいたくない。
それはズルい答えだ。彼が跡継ぎをもうけなければならないとわかっているのに、誰とも親密になるなと相反する要求をしているようなものだから。それに、そんな答えで彼が納得するとは思えない。
返事がないのに焦れたのか、そもそも返事を期待していなかったのか。クリストファーはアンジェの胸の蕾を唇で挟むと、軽く引っ張りぴっと離す。
「んっあん……っ」
強めの刺激に、思わず声が出てしまう。両手で口を覆い下を見ると、苦しげなクリストファーと視線が絡み合った。
「私が別の女性のものになり、君は私じゃない男性のものになる。そんな未来を君は望んでるの?」
アンジェは泣きたくなってくしゃっと表情を歪めた。
望んでなんかいない。想像しただけで切り裂かれたかのように胸が痛むのに。ちゃんと話したのに、すべてはお義兄様のためなのに。どうしてわかってくれないの?
いつもは涼やかな表情をしている彼が、アンジェと同じようにくしゃりと表情を歪めた。
「私はそんなの我慢できない。君に結婚相手を教えてくれと言われて思い知らされたよ。君を他の男にやるくらいなら死んだほうがマシだ」
クリストファーは辛抱できない様子でアンジェの裸の胸に抱きついてきた。
「君に餓えて死にそうなんだ……お願いだ、この憐れな義兄を助けてくれ……」
「お願い待って! 待って、お義兄様……っ」
夜着の裾を再びまくり上げられそうになり、アンジェは真っ赤になって下へと引っ張る。
ドロワーズと素足の膝を見られただけでも恥ずかしかったのに、今のアンジェはドロワーズすら穿いていないのだ。まくり上げられてしまったら、太腿だけでなく脚の間の恥ずかしいところまで見えてしまう。クリストファーが思いとどまってくれない限り、そこに彼を受け入れることになる。
けれどクリストファーは止まらない。
「待てない。もうずっと長いこと君を待ち続けていたんだ……」
低くかすれた、アンジェをぞくぞくさせる声でそう言いながらめくり上げるのを諦め、夜着の下から手を差し込んでくる。
自分でもあまり触れることのない太腿に彼の熱くて大きな手のひらが這うのを感じ、アンジェはぎょっとしてその手を阻もうとした。
すると、足元にひざまずくように座っていたクリストファーが、伸びあがるようにして顔を近付けてきて、慌てて顔を引いたアンジェを追いかけ唇を重ねる。
「ん……っ」
急なキスに驚いたせいか、アンジェの喉が勝手に鳴る。角度を変えながら何度も何度もついばむように唇を押し付けられ、他のことが考えられなくなる。
気付いたときには、太腿の内側にクリストファーの手が触れていた。
「──!」
キスをされているので叫ぶこともできず、アンジェは息を呑んでとっさに脚を閉じようとする。けれど膝の間に何かが挟まっていて閉じられない。それがクリストファーの膝だとわかったのは、彼がキスをやめていったん身体を離したときだった。
その次の瞬間には、彼の指が脚の間の秘めやかな割れ目に触れていた。
守ってくれるドロワーズのない、薄い下生えだけが覆うその場所に、彼の指が直に這わされる。夜着の上から彼の手を阻もうとしても、もはや手遅れだった。アンジェは彼の肩に手をかけて押しやろうとしながら、解放された唇で懇願する。
「お義兄様待ってっ、お願いだから待っ──あっ」
クリストファーの指先に割れ目をなぞられて、アンジェは思わず声を上げる。彼は、反射的に前屈みになったアンジェの胸の膨らみを空いているほうの手で持ち上げて、先端の蕾に口をつける。先程の達した感覚に恐れをなしていたアンジェは、彼の肩を押す手に一層力を入れて訴えた。
「駄目っ、両方は駄目……! あっ、あぁ……! お願い、許して……!」
クリストファーは胸から唇を離して答えた。
「許してほしいのは私のほうだ。性急ですまない」
そう言ったあとの行動は速かった。アンジェの腰を?んでソファの座面の端まで引き寄せると、膝を強引に割り開いた上に自身の肩に担ぎ上げる。
アンジェは抵抗する間もなかった。脚が持ち上がったことで夜着の裾がめくれたのに気付いて、慌てて大事なところを隠そうとする。
しかし、わずかにもたついている間にクリストファーがそこへ顔を近付けてくる。アンジェは驚き、脚をばたつかせて暴れた。
「嫌ぁ! 駄目! 駄目! そんな、汚──」
アンジェの抵抗は、クリストファーの前には無に等しかった。割り開かれた太腿をがっちりと抱え込む腕はびくともせず、淡い下生えは彼の指によってかき分けられる。そうして露わになった場所に、彼の唇が当たった。
「あっ! あぁ──!」
直に触れられた感触は、ドロワーズごと指を押し付けられたときより強烈だった。
一番感じる部分についばむようなキスをされ、それから胸の蕾と同じように口に含まれ舐め転がされる。
そこに与えられる刺激は胸とは比較にならなくて、アンジェは顎を仰け反らせ、ソファの座面をかきむしり、持ち上げられたままの脚を突っ張りびくびくと身体を震わせた。
不浄の場所に口をつけられた衝撃に加え、強烈な快楽を容赦なく与えられる。そのせいで、何のためにそれをされているのかさえ、アンジェの頭の中から吹き飛んでしまっていた。
ただ、初めて知った快感に身も心も支配され、もっと気持ちよくなりたいとばかりに腰が揺れ始める。
クリストファーが両脚から腕を外しても、アンジェはそのことに気付かなかった。大きく広げ突っ張った脚を、彼の愛撫に合わせるようにびくびくと揺らす。その淫らな姿に、クリストファーがますます興奮を?き立てられていることなど知るよしもなかった。