魔女は紳士の腕の中
- 著者:
- 山野辺りり
- イラスト:
- 幸村佳苗
- 発売日:
- 2019年07月03日
- 定価:
- 748円(10%税込)
君が魔女なら、僕は喜んで堕落する。
幼い弟を庇い、継母からの虐待を一身に受けるクリスティナは、不貞を働く継母と司祭に嵌められ、魔女として地下牢に囚われてしまう。だがそこへ、初恋の人・イシュトヴァーンが現れる。かつて突然、連絡を絶った彼。7年ぶりの再会に、クリスティナは継母たちの罠ではないかと訝しみ、彼を拒絶するのだが――。「君の身体を確かめて、魔女じゃないことを証明してあげる」妖艶に微笑むイシュトヴァーンに牢から連れ出され、強引に純潔を奪われて……!?
誠実な伯爵令息×囚われた令嬢、失われた初恋の行方は――!?
クリスティナ
地方領主の娘。継母たちに嵌められ、地下牢に閉じ込められる。1か月誰とも話さなければ解放すると言われるが……。
イシュトヴァーン
王太子の覚えがめでたく、将来有望な伯爵家の子息。地下牢に囚われたクリスティナを助けようとするが……。
「まだ確認していないところがあるから、もう少し我慢して」
我慢していれば、この甘い責め苦から解放されるのだろうか。
クリスティナは間違えて何か言ってしまわないよう、息を吸うのも慎重になり肌を震わせた。喉を通過する呼気が、声帯を震わせる。悲鳴じみた掠れた音が酷く淫猥で、涙が滲んだ。
「ティナ、どんな君でも可愛いけれど、できれば泣かないでほしい。辛くなるのと同じくらい……興奮で頭がおかしくなりそうになる。───僕は自分の中にこんな加虐心があるなんて知らなかった」
どこまでも優しい印象しかなかった子供時代とはまったく違う飢えた眼差しで見つめられ、クリスティナの喉が干上がる。イシュトヴァーンのこんな表情は知らない。欲情と渇望を露にした男の眼が、危険な光を映していた。
「……だ、」
駄目というたった一言も伝えられず、拒絶の意思も態度で示すより他になかった。けれど上手く力が入らないクリスティナの身体は、申し訳程度の抵抗しかしてくれない。役立たずの手は彼を押し返すことも、叩くこともしない。脚は蹴り上げるどころか弛緩したままだ。
まるで、悪魔に魅入られ、自分のものではなくなってしまったようだった。
「ふ……っ、ん、ぁっ」
イシュトヴァーンがクリスティナの胸の飾りを舌で転がし、残る片方を揉みしだく。二つの異なる刺激を加えられ、体温はますます上がっていった。彼の髪が肌を滑り、吐息で湿る。ぞわぞわとした疼きが蔓延し、淫らな声が抑えきれなくなるのに時間はかからなかった。
「……ひ、んっ……んぁっ」
「甘い」
乳房の頂点で主張する果実を舌先で突かれ弾かれる。歯で甘?みされると、本当に咀嚼されている気分になった。彼がわざと音を立てながら唾液を塗すから、余計に卑猥さが突きつけられる。クリスティナがいくら髪を振り乱してやめてほしいと態度で訴えても、まるで伝わらなかった。いや、理解しているからこそ、執拗に責め立てているのかもしれない。
実際、大きな反応をしてしまった箇所を、殊更丹念に舐められ、吸われ、揉み解されるのだ。快楽は治まるどころかどんどん大きくなるばかり。生まれて初めての感覚をどう処理すればいいのか分からない辛さから、クリスティナはボロボロと泣き出していた。
「ぅ、ひ……ぃっ……」
「君は泣き顔も可愛いね、ティナ。昔は泣かせたいなんて思ったこともなかったのに、どうしてかな。今はとても心地いいよ。少なくともこの瞬間、ティナの眼に映っているのも、頭を占めているのも僕だけだから」
「ひぁッ」
膝を割り開かれ、これまでになく大きな悲鳴を上げてしまった。何ものにも守られていないそこが、イシュトヴァーンの眼前に晒されている。これまで、自分自身だって直接目にしたことはない。そんな必要も感じなかったし、男性の前で開脚するなんて考えたこともなかったからだ。
他人に見せる場所では絶対にない。秘めておくべき不浄の場所。そこを思いきり見られている現実に、いっそ意識を手放してしまいたかった。
「ああ、とても綺麗だ。日の光が当たって、ティナの蜜がキラキラしている」
「……!」
言われて初めて、部屋の中にとても明るく眩しいほどの日差しが差し込んでいることに思い至った。暗闇の中ならまだしも、これでは全部が丸見えだ。物語の中の夫婦や恋人同士だって睦み合うのは夜の帳が下りてからで、昼間淫らな行為に耽ることは罪悪だと教えられているのに。
「っ、ぅうっ」
「暴れないで、ティナ。ここも念入りに魔女の証がないか確認しないと……内側に隠されている場合もあると、書物に書いてあったからね」
内側の意味が分からず、ほんの一瞬動きを止めてしまったことがクリスティナの過ちだった。次の瞬間、割れ目に沿って添えられた二本の指が開かれて、あり得ない場所に空気の流れを感じる。
「……!!」
ぶわりと全身に汗が浮く。ぴったりと閉じていた処女地を割り開かれていた。太腿は逞しい腕に拘束されていて、脚を閉じることは叶わない。尻が敷布から浮き上がった不安定な体勢で、クリスティナは最も恥ずかしいところをイシュトヴァーンに検分されていた。
「ふ、んんっ」
「花よりも香しく可憐だ」
全力で身を捩っても一向に抜け出せない腕の檻の中、彼の顔がクリスティナの脚の付け根へと寄せられる。涙を振り払い死に物狂いで抗ったが、時間稼ぎにさえならなかった。