不滅の純愛
- 著者:
- 荷鴣
- イラスト:
- 涼河マコト
- 発売日:
- 2019年06月03日
- 定価:
- 748円(10%税込)
おれたちは死ぬまでずっと恋をするんだ。
王女トリアは、五年前に亡くした婚約者のフラムをずっと想い続けていた。だが、彼の墓所から戻る途中、得体の知れない男たちに攫われ、樹海の古城に囚われてしまう。そこは、古くから続く神隠しの元凶の地であった。儀式と称し、黒ずくめの男に組み敷かれるトリア。身体をまさぐられ、必死に抵抗するが、男は亡くなったはずのフラムだった! 抱かなければおまえは殺される、とトリアに危険を知らせるフラム。トリアは彼を信じ、その欲望を受け止めるのだが……!?
孤立無援の王子×一途な王女、淫獄に囚われたふたりの不朽の愛!
トリア
トラウドル国の王女。フラムのことを想い続けている。政略結婚を受け入れねばと決心した矢先に攫われてしまう。
フラム
トラウドル国の隣にあるバーゼルト国の王子。内乱に巻き込まれ命を落としたとされていたが……。
「う──。う……」
トリアは男の腕に手をやり、爪を立て、それを外そうともがいたけれど、力の差は歴然としている。その間に、男はトリアの足を無理やり大きく開かせて、自分の身体をそこにすっぽり収めていた。トリアは息が止まりそうになる。
至近距離にある男の顔。それは黒布に覆われているが、ふたつの穴から覗く瞳は、鮮やかな空色だ。奇しくもフラムと同じ色。
こんなところで彼の色を見つけたくなかった。幸せで、光り輝く過去の日々。だからこそ、現状との落差に心がずたずたに切り裂かれる。奈落の底にいるようだ。
男はトリアの腰紐を外すと、おなかの位置まで服をたくし上げてゆく。のしかかる男の身体の下で、トリアの下腹はさらされた。そこに、すかさず手がのった。股間の上だ。
トリアはかっと目を瞠る。秘部に感じるひんやりとした手に、気がどうにかなりそうになる。このままでは、犯される。彼以外に、誰にも触れられたくないのに。
──嫌……!
けれど、男の手はトリアの形を確かめるように、もぞもぞとそこをまさぐった。ふたつの膨らみをなぞり、秘裂を割って、繊細ななかを?く。乾いたあわいは引きつれた。つきんと痛み、顔を歪めたトリアはうめく。
「う、うぅっ!」
トリアは男の胸を押しのけようとした。しかし、力が足りなくて退けるのは不可能だ。次に足で蹴ってみるが、足はむなしく空を切り、鈴がけたたましく鳴るだけだった。
嫌だ、嫌だと首を振りたくろうにも、腕をくわえこんでいるいま、顔は少しも動かなかった。得体の知れない手は、いまだ足の間に置かれたままだ。
男の澄んだ青い瞳がこちらを見ている。こんな時なのに、この目はひどい。
すぐさまそれは、あふれる涙で見えなくなった。トリアの目から、ぼたぼたとしずくが垂れ落ちる。
『子は、おれじゃなくて全員おまえに似ればいい。おまえごとかわいがってやる』
脳裏にしみつく過去の声。
──嫌よ、こんなの、嫌だもの…………助けて!
ここにいないとわかっていても、願ってしまう。二度と会えない人を呼ぶ。
──フラム!
トリアは、うっ、うっ、と子どものように泣きじゃくる。すると、股間にある男の手がトリアのおなかに這い上がった。
びくりと身体がこわばった。足をばたつかせて抵抗すると、男の指がおへその上部でうごめいた。最初、なにをされているのかわからず混乱した。だが、途中でそれが文字だと気づく。
【泣くな】
トリアはひくっと喉を動かす。まつげを上げれば涙が飛び散った。
【声を出すな】
怖々と男を窺えば、男はじっとトリアを見ている。
【女王は城のすべての音を拾う。話は筒抜けだ】
何度もまたたけば、男の青い瞳が細まった。
【夜は誰とも会話をするな。すべて聞かれていると思え】
口を押さえつけられているので、トリアは同意の代わりに、短く「う」と声を出す。内心、文字に困惑していた。信じがたいが、この男は味方なのだろうか。
【いまからおまえを抱く】
とたん、トリアの顔は恐怖で引きつった。が、身をよじった時に書かれた文字で、動きを止める。
【抱かなければおまえは殺される。痛いぞ。だが耐えろ】
トリアはそろそろと男を見やる。やはり、澄んだ空色だ。
青い色を見ていると別の感覚にとらわれる。その瞳は揺れている。たくさんの想いを放ち、トリアに語りかけている。
トリアはまばたきもせず、その瞳を凝視した。
なぜ、いままで気づかなかったのか──。毎日、毎日、夢見てきた瞳を。
そう、トリアがこの目を見間違えるはずがないのだ。
【おまえならできるな? トリア】