鳥籠の狂詩曲
- 著者:
- 唯純楽
- イラスト:
- 藤浪まり
- 発売日:
- 2019年04月03日
- 定価:
- 726円(10%税込)
言うんだ。……誰のものになりたい?
マリシュカは、町の収穫祭でフィドルを弾くラーシュと出会う。二人はすぐに惹かれあうが、侯爵家の娘と流浪の民、許されない恋だった。そして、別れは突然訪れた。ラーシュはマリシュカを助けるために貴族を傷つけ、獄中で死んでしまう。悲嘆に暮れるマリシュカ。しかし数年後、ラーシュにそっくりなレヴェンテ侯爵が現れる。まるで初対面のように振る舞う彼だが、二人きりになった途端、「貴族なら、誰でもいいのでしょう?」と、獰猛な欲望をぶつけてきて――!?
謎めいた美貌の侯爵×家に縛られた令嬢、フィドルが繋ぐ運命の恋。
マリシュカ
侯爵家の娘。ラーシュと身分違いの恋に落ちるが、マリシュカを助けたために、彼は亡くなってしまい……。
レヴェンテ侯爵
マリシュカの初恋の相手であるラーシュにそっくりな青年。レヴェンテ侯爵と名乗るが……。
「──貴族なら、誰でもいいのでしょう?」
レヴェンテ侯爵は、あっさり口づけを許したマリシュカを嘲るように囁く。
「ち、がっ……」
言い返そうとすると再び口づけられる。熱く柔らかな舌で上顎を刺激されると、突き放すために広い胸に触れたはずの手が、懇願するように縋りつく。
「敵対する相手と通じたことを知ったら、レイエス侯爵は激怒するでしょうね。いや……もしかすると……咎めるのではなく、誘惑して夢中にさせ、手玉に取れと言うかもしれない」
とんでもないことを言われ、マリシュカは驚愕に目を見開いた。
レヴェンテ侯爵家とレイエス侯爵家は、建国以来常に対立する派閥に属し、一度も婚姻関係を結んだことがない。そしてこれからも、互いに歩み寄ることなどあり得ない対極に位置することは、貴族社会に疎いマリシュカでさえ知っている。
「そんなこと、あるはずが……」
「いがみ合うよりも利用し合ったほうが、お互いに楽しめると思いませんか?」
一体、何を楽しむのだろうと思った時、大きな手がマリシュカの胸に触れた。
「い、やっ……」
「──大きな声を上げれば、聞こえてしまうかもしれない」
身体を強張らせたマリシュカは、ハッとして彼の瞳が見つめる先を追い、大きく開け放たれた窓に気がついた。
二人がいる場所は陰になっているものの、窓からほんの数歩離れているだけだ。
「や……やめて……どうしてこんなことを……」
「こうして欲しかったのでは?」
乳房の柔らかさを確かめるように力を込められると、身体が震えた。不快感はなく、むしろ心地よさを感じてしまう自分が信じられなかった。
マリシュカはこのまま身を委ねてしまいたくなる気持ちを打ち消すように、首を振った。
そんなことなど望んでいないと言おうとしたが、胸の中心を指先で擦られると、はしたない声が漏れそうになる。
「んっ……」
「ずっと……その眼差しで誘っていたくせに?」
「そんなこと、していな……い、わ」
「本当に少しも望んでいないかどうか……確かめてみればわかる」
硬くなった頂をもてあそんでいた一方の手が、ペティコートをたくし上げた。
「あっ!」
忍び込んだ手は巧みにドロワーズの戒めを解き、無防備になった太腿を撫でた。徐々に無垢な場所へと近づき、唇を震わせるマリシュカを見つめながら、秘唇に触れる。
硬い指先が掠めただけで、熱い何かが滲み出す。
「……濡れている」
ごまかしようのない事実を指摘され、マリシュカの身体が一気に熱を帯びた。蕩けるような笑みを浮かべた彼の顔をとても見ていられない。
目を逸らそうとした時、秘唇を割って指が埋められた。
「えっ……あっ! ……いやぁっ」
隘路は、侵入する異物に痛みを訴えながらも奥深くまで受け入れてしまう。
「嫌? とてもそうは見えない。中もこんなに……物欲しそうに、絡みついてくる」
レヴェンテ侯爵は、淫らな行為にそぐわない丁重な物言いをやめることにしたようだ。羞恥心をかき立てるように意地悪く告げ、埋めた指で襞を押し開いて中をかき回した。
「ん、んぅっ……」
マリシュカが悲鳴を上げかけると唇を塞ぎ、舌を差し入れる。逃げ惑う舌を捕らえて甘く?み、吸い上げ、たっぷりと唾液を注ぎ込んだ。口内を蹂躙する間にも、秘唇に沈めた指を二本へ増やし、親指を使って隠されていた花芽を?き出しにする。
「ふっ……は、ぁっ……」
優しく花芽を擦られ、爪先まで痺れるような快感を何度も味わっているうちに、いつしかマリシュカの痛みは薄れていた。
優雅な音楽に交じって聞こえる淫靡な水音と共に、ひたひたと押し寄せる快感が次第に大きくなる。いけないことをしているとわかっているのに、息つく間もなく口づけられ、爪先立ちになって腰を逃がすことしかできない。
「──っ!」
落ち着きなく揺れる腰を引き寄せられ、襞の奥深くまで届いた指が、ある一点を掠めた。
その瞬間、マリシュカは大きな快感の波に浚われた。
ぎゅっと収縮した襞が食い締めようとするのに逆らって、指が引き抜かれる。
「は、あっ……」
「敏感で……どうしようもなく淫らだな」