ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

魅惑の王子の無自覚な溺愛

魅惑の王子の無自覚な溺愛

著者:
八巻にのは
イラスト:
アオイ冬子
発売日:
2019年03月04日
定価:
726円(10%税込)
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どうだ、私に欲情したか?

うっかり者の伯爵令嬢リリアナは、何かにつけて間が悪く、第二王子のデイモンが女性を押し倒している場面に遭遇してしまう。だがそこで突然、彼に猫耳の髪飾りをつけられ、いたく気に入られ……? 以来、日に何度も彼と会うようになり、いつの間にか結婚することに。戸惑いつつも、甘く蕩けるような初夜に溺れるリリアナ。はしたない自分を知られたくなくて夫婦の営みを控えたいと相談するが、デイモンは奇抜な方法でリリアナを誘惑してきて……!?
猫耳好き(?)の残念王子×ドジッ子令嬢、甘美で奇妙な新婚生活!?

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登場人物紹介

リリアナ

リリアナ

三歩進むと転ぶようなドジッ子であるために、三度も婚約破棄されている。猫耳をつけた姿をデイモンに気に入られる。

デイモン

デイモン

麗しの第二王子。付き合うと不幸が訪れると言われているのに女性からのアプローチが絶えない。天然ぎみ…?

お試し読み

「……手を出したくなるとファルゼンが言っていたのは、正しかったのだな」
「え?」
「まだ早いが、いいか?」
「いい……とは?」
「寝ようかと」
「あ、はい、もちろんです」
 どうぞお休みくださいませと笑みを深めた瞬間、デイモンはリリアナの腰を抱き寄せた。
「では」
 言うなり、彼はリリアナを軽々と抱え上げる。あまりの早業に動揺する暇もなく、リリアナはベッドまで運ばれ、コロンと転がされてしまう。
「え?」
「ん?」
 ポカンとした声に、ポカンとした顔を返され、リリアナはデイモンと見つめ合ったまま硬直した。
(寝るって……まさか、あの……そういう意味……の!?)
 今更のように言葉の意味を悟ったが、悟ったところで思考も身体もこの状況に追いつかない。
 結婚を決めたときから、いずれこういう状況がやってくることは覚悟していたが、それがこんな始まりだとは思わなかったのだ。
(もうちょっと、甘い感じで始まるのかと思っていたけど……違うのね……)
 それとも、自分が何か間違えて雰囲気を壊してしまったのだろうかと悩んでいると、デイモンが小さく首をかしげる。
「私は、何か間違えているか?」
 尋ねられ、リリアナは慌てて首を横に振る。
「いえ、あの、むしろ私が何か間違えたのかと……」
 とはいえ何を間違えたのかもわからないと素直に言うと、デイモンはリリアナの顔を覗き込むように覆い被さってきた。
「こういうことは、初めてか?」
「初めてだと、まずいでしょうか……」
「いや、経験の有無は気にしない」
 ただ……と、そこで彼は、何かを堪えるように顔をしかめた。
「初めてなら優しくしたいのだが、どうも私は調子がおかしい」
 言いながら、リリアナの唇をそっと指で撫でる。
「君を見ていると、踏むべき手順が浮かばない。先にキスをすべきか、それとも服を脱がせるべきかさえわからなくなる」
「じゅ、順番があるのですか」
「厳密にはないが、こんなことで迷ったのは初めてで、私も戸惑っている」
 どこか途方に暮れたような顔を見て、リリアナは申し訳ない気持ちになってくる。
「もしかして、それは私に色気がないからでしょうか……」
 自分自身に目を向けて、リリアナはそうに違いないと確信した。
 リリアナは、同じ年頃の娘より細身で華奢な上に、少し胸が大きすぎる。それを隠したくて、身につけるドレスは肌の露出も少ないし、転んでも破れないようにリボンやレースといった装飾もあまり付いていない。目元は愛らしいと言われるが、全体が地味な上に化粧っ気もないので、その魅力だって生かし切れていないのだ。
 唯一デイモンの気を引けるのは、彼のためにつけたままにしている猫耳だが、それが余計に自分を女性として見ることができない要因になっているのではと思う。
「気持ちが乗らないのも当然ですよね……」
 ごめんなさいと謝ろうとしたが、それよりも早く、デイモンが彼女の唇を奪う。突然のことに目を閉じることさえできずにいると、「誤解するな」と怒ったように言われた。
「その逆だ。君が可愛すぎて、困っている」
「か、かわ……」
「驚く顔が特に可愛い。だから、君が一番喜ぶ方法で触れたいのに、そうするだけの余裕が無くなってしまう」
 唇をなぞっていた指が頬へと退き、デイモンの眼差しがリリアナの唇に向けられる。デイモンの瞳には焦りと戸惑いと、欲情の色がはっきりと見てとれた。
「君を抱きたい。許してもらえるなら、私の思うままに」
 彼が自分を求めているのだとわかった瞬間、リリアナの胸に芽生えたのは喜びだった。
 それが表情に出ていたのか、デイモンはリリアナの答えを聞くよりも早く、再び唇を奪う。
 口づけは瞬く間に深まり、差し入れられた舌がリリアナの熱を高めていく。
「……んっ……待って……」
 気がつけば甘い声までこぼれ出し、リリアナは恥じらいからデイモンを遠ざけようとした。
 だが腕で軽く押したくらいで大きな身体が揺るぐこともない。それどころか逆に腕を?まれ、引き寄せられる。
「もう待てない」
 言うなり、デイモンはリリアナの身体を抱き締める。
 押し当てられた胸板は硬く逞しい。長身なのでさほど筋肉質には見えなかったが、たぶん彼はしっかり身体を鍛えているのだろう。
 いったい服の下はどうなっているのかと考えてしまい、リリアナは慌てた。はしたない想像など今までしたこともなかったのに、彼に抱き締められていると、淫らな好奇心が芽生えてしまうのだ。
(私、今日はなんだかおかしい……)
 身体も意識もいつもの自分ではない。それに戸惑い、身動きができなくなっていると、デイモンがリリアナを抱き締めたままベッドに倒れ込んだ。
 同時に深い口づけが再開され、リリアナは小さく喉を鳴らした。
(どうしよう……。息も、できない……)
 戸惑いに震えるリリアナの舌を、デイモンの肉厚な舌がすくい上げ、翻弄する。
(こういうキスは……初めて……なのに……)
 自分には難易度が高すぎると泣きたくなるほど、彼の舌使いは激しい。気が遠くなるほど長いキスをされ、酸欠で思考が甘く鈍り始める。
 自分が自分でなくなっていくようで怖いのに、それ以上に甘美な刺激を感じたいという気持ちが勝っていく。
 抵抗する機会を逃した身体からは力が抜け、ゆっくりと、しかし確実に、濃密な口づけに溺れ始めていた。
 弱々しい喘ぎ声がこぼれ始めたことに気づいたのか、デイモンは口づけを頬へ、耳へ、首筋へと移していく。
「ゃあっ……」
 首筋に口づけられ強く吸われると、リリアナの口から、悲鳴のような声がこぼれた。
「ここが、好きか?」
「好きじゃ、ない……です……」
 苦心して声を絞り出したのに、デイモンは信じる様子がない。
「君は?が下手だな」
 微かに笑う気配がしたかと思えば、彼の舌先がリリアナの首筋を強く嬲る。
 途端にビクンと身体が跳ねて、腰の奥が焼けるように痺れた。
(これは……何……?)
 デイモンに口づけられると、意図しない反応と甘い疼きが全身に広がり、身体の自由が奪われていく。それがすごく怖いのに、同時にもっと強い刺激が欲しいと、心の奥底では思ってしまう。
「こうしていると、何かを感じるだろう?」
 尋ねられても、リリアナはなんと言葉を返していいかわからない。
 しかし潤んだ目を伏せるその表情だけで、デイモンは答えを知ったようだった。
「そんな顔をするな。君が嫌がることは絶対にしない」
 小さく震えるリリアナの唇に、甘い吐息がかかる。
「怖いことは、何もしない」
 啄むように、デイモンがリリアナの下唇を吸い上げる。
 先ほどとは違い、荒々しさはなかった。押しのけることもきっとできた。
 なのにリリアナは、ただただキスを受け入れてしまう。
「嫌ならやめるが、どうする?」
「……その、尋ね方は……ずるいです……」
 戸惑ってはいるが、ひどく優しいキスをされて、嫌だなんて言えるわけがない。
「私に身を委ねろ」
 普段はあれほど無愛想なのに、向けられた言葉も笑顔も艶やかで甘い。
 そんなデイモンを見ていると冷静な判断ができなくなり、拒絶の言葉はついに口にできなかった。
「……あ、ぅんッ……」
 再開された口づけは、優しくも激しかった。
 何も知らない初心な唇を、デイモンは音を立てて吸い上げ、赤く淫らな色へと染めていく。唾液を口の端から溢しながら、リリアナは口内を犯す舌の動きに、なすすべもなく翻弄された。
 息が苦しくて辛い。でももっと激しくして欲しいという気持ちが芽生える。リリアナは、我に返る暇さえ与えられず、デイモンの舌使いに身体も心も溶かされていくばかりだった。
「君はキスが上手だ」
 口づけの合間に甘い言葉を挟みながら、デイモンの長い指がドレスの留め金を器用に外す。
 それからデイモンはコルセットを素早く緩め、ドレスごとずり下ろした。
 緩んだドレスからリリアナの豊満な胸がこぼれ、そこで彼女ははっと身体を強張らせた。

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