執愛結婚
- 著者:
- 最賀すみれ
- イラスト:
- 氷堂れん
- 発売日:
- 2018年12月28日
- 定価:
- 726円(10%税込)
どうしたの? 私は前からこうだったよ。
最愛の父を事故で失い、悲嘆に暮れるアルテイシア。そんな彼女の前に、初恋の人オリヴァーが現れる。幼い頃、アルテイシアの母が亡くなった火事が彼の過失とされて以来、ずっと会えずにいたが、彼女だけはオリヴァーの無実を信じ、慕い続けていた。そんな彼から求婚されて彼女は喜んで受け入れる。毎夜情熱的に抱かれ、蕩けていく心と身体。甘く幸せな交わりに溺れる二人だが、ある不穏な噂をきっかけに、オリヴァーの愛は徐々に歪みを見せはじめ……。
清廉潔白な麗しき侯爵×純粋で一途な令嬢、完璧な夫の壊れた純愛!
アルテイシア
幼い頃からオリヴァーのことが好き。彼との結婚を心から喜び、幸せに浸っていたが……。
オリヴァー
アルテイシアの母方の従兄で侯爵。子どもの頃はアルテイシアの家に預けられていた。アルテイシアを溺愛するが……。
「君が懇願するから、正直に真実を話したのに」
そう言うや、彼はアルテイシアが身につけていた白いモスリンのドレスを力まかせに引き裂く。
さらに暴れ馬にでも乗るかのように、細い腰の上に腰を下ろして抵抗を封じ込めると、めちゃくちゃに振りまわされる両手をあしらいながら、コルセットを手早く脱がせていった。
「私を愛していると言ってくれ! ついこの間まで、何度も言ってくれていたように……っ」
「いや……っ」
「幸せだったよ。これまでの人生の中で最も幸せな毎日だった。でもわかっていた。そんな日々が続くはずがないと」
邪魔なものをすべて取り除いてしまうと、彼は破れた薄いドレスを使ってアルテイシアの両手首をベッドの左右の支柱につないでしまう。
アルテイシアは何が起きているのかわからないまま、気がつけば両腕を頭上に上げた形で拘束されていた。
「オリヴァー……っ」
下着姿の妻の上に座った彼は穏やかにつぶやく。
「私は昔から、不思議と幸福に縁がなくてね。なぜだろう? 君が欲しいだけだったのに……」
今にも泣きそうな顔を歪めて笑みを浮かべる夫を、アルテイシアはおののいて見上げた。
「オリヴァー、正気に戻って……!」
しかし彼はゆるゆると首を横に振った。
「戻るなんて無理だ。……私は、君と再会したときにはもう、こうだったのだから……」
自由を封じられた妻の身体をまさぐりながら、手早く下着を脱がせていく。
「君に愛されるよう、嫌われないよう、マトモなふりをしていただけだったんだよ……」
あっという間にアルテイシアを生まれたままの姿にしてしまうと、彼はいつものように隅々までいやらしく手を這わせ、あちこちに口づけの痕を散らしてきた。
アルテイシアは必死に身をよじって抵抗するものの、それは彼を挑発する結果にしかならなかったようだ。
「こっちをさわってほしいの?」
舌舐めずりをするように言い、ふるふると揺れる乳房に吸いついてくる。
「はっ……ン……っ」
頭ではいやだと思っているにもかかわらず、毎日の行為によってすっかり敏感になった肌は、熱くぬるりとした刺激から、たやすく快感を得た。
尖った乳首に至っては、舌のひらでひと舐めされただけで甘く痺れてしまう。さらに柔らかく吸引されると、ざわりと疼く感覚が腰の奥から湧き上がる。
「ぁ、……ぁん……っ」
眉根をしぼって打ちふるえると、彼はフッとくちびるの端を持ち上げた。
「君は胸が弱いものね」
アルテイシアの反応に我が意を得たりとばかり、ふくらみに食らいついてくる。
硬くなった先端を舌先ですくい取られ、巧みに転がされ、強く吸い上げられると、えも言われぬ心地よさに腰が砕けそうになった。総毛立つほどに感じてしまい、しきりに身悶える。
「やぁっ、……や、めてっ、……オ、オリヴァ……ぁっ……ンっ……ンっ……」
言葉を発しようとすれば、意に反して淫らな声が出てきてしまう。くちびるを?みしめて堪えていると、それに気づいた彼が顔を上げた。
「どうしたの? いやらしい声を出そうよ。いつもみたいに」
元々彫像のように美しく整った面差しである。
愉悦に染まった様は、おぞましいほど艶やかで美しい。
訳のわからない不安から逃げるように、アルテイシアは首を振った。
それをどう受け止めたのか、彼は小さく笑って顔を近づけてくる。キスをするつもりだと察し、とっさに顔を背けたところ、耳元でため息をつかれた。
「妻に拒まれるのはさみしいな……」
口ではそう言いつつも、彼は自分の優位を見せつけるかのように、アルテイシアの上でゆっくりとクラバットを外す。
「君を私だけが知る場所に閉じ込めてしまいたいよ。社会とのつながりを断ち、常にふたりきりの場所で、私の帰りを待つだけの生活を送らせてやりたい」
外してしまえば長い絹布でしかないクラバットを、彼はアルテイシアの顔に巻きつけてきた。
「オリヴァー……っ」
首を振っての抵抗をものともせず、それは頭の後ろで結ばれてしまう。
「他のものなんか何も目に入らないような生活をね」
「やめて。オリヴァー、こんなこと……っ」
視界をふさがれる不安に頭を振るアルテイシアの両頬を押さえ、彼は口づけてきた。
「君には私しかいないんだ。そうだろう?」
アルテイシアは顔を背けようとするものの、頬を押さえる手がそれを許さない。何も見えない状態で何度もくちびるをふさがれ、怯える妻に、彼はのめり込むような口調で言った。
「もっと私に依存するといい。君も、私がいなければ生きていけなくなるべきだ」
不穏な言葉と共に、脚に触れてくる手を感じた。横柄な手はそのまま無造作に膝裏をつかみ、胸に押しつけるようにして大きく押し開いてくる。
「私ばかりが君に焦がれている現状は苦しいよ」