清廉騎士は乙女を奪う
- 著者:
- 桜井さくや
- イラスト:
- 芦原モカ
- 発売日:
- 2018年12月28日
- 定価:
- 726円(10%税込)
ずっとそうして、俺から離れなければいい。
騎士団の任務を終えて王都へ戻る途中、嵐に遭遇したカイン。しばらく滞在することになった村で、美しい娘ヴェルと出会う。初対面のはずなのに、なぜか無邪気な好意を向けてくる彼女にはじめは戸惑うカインだったが、その純粋さと優しさに触れ、急速に惹かれていく。だが彼女が“水神の花嫁”として、生贄になる運命と知り――!? それでも互いの思いは溢れ、確かめるように熱く切ない一夜を過ごす二人。カインは因習に囚われる彼女を解き放とうとするが……。
若き騎士団長×純真な水神の花嫁、因習を打ち破るひたむきな愛!
ヴェル
水神の花嫁として生贄になるために育てられたため、生活に必要なことしか教えられていない。純粋すぎる少女。
カイン
国では珍しい銀色の髪を持つため、幼い頃から忌避されて育った。功績を認められ、若くして騎士団長となる。
「ヴェル…、何を……ッ」
「イヤなところがあるなら教えて……。直すから……、だから嫌わないで……」
カインは戸惑いをあらわにしていたが、ヴェルは声を震わせて寝衣を脱ぎ捨てる。
嫌われたくない一心で裸になり、涙を流して彼をじっと見上げた。
「……私の裸、どこが変……?」
「いや、そうじゃなくて」
「だけど」
「君に変なところなんてない。本当だ」
「じゃあ、何がいけないの?」
「そ…、それは……」
疑問をぶつけるも、カインはなかなか答えてくれない。
目を逸らすように視線をやや下に向けると、彼はヴェルの乳房を見て息を呑み、動きが止まった。
それからしばし沈黙が続いたが、彼は視線をそのままに掠れた声を上げた。
「ヴェルは…、あの神官の前でも裸になったことがあるのか……?」
「……え? ううん」
「一度も…?」
「だってレスターは普段こっちのほうにあまり来ないもの。朝になるとおばあちゃんが服を持ってきてくれるから、そのときに着替えることはあるけど、レスターが服を持ってきてくれたことはないし……」
「そう……か」
なぜいきなりそんなことを聞くのだろう。
不思議に思いながら、ヴェルは彼の視線を目で追いかける。
その視線は胸の膨らみばかりを彷徨っているようだ。
老婆に見られてもなんとも思わないのに妙な気恥ずかしさを感じて、ヴェルはもじもじしながらカインの様子を窺った。
──まるで視線で触られてるみたい。
膨らみをなぞるような目の動き。
突起の辺りで止まって、また膨らみをなぞっていく。
一旦意識し出すと止まらない。今度はちゃんと見てくれている。
そう思った途端、彼が見ている場所がくすぐったくなって、本当に触られているような錯覚に陥った。
「カイン……」
ヴェルは棒立ちになったカインの手をそっと?み取る。
すると、彼と目が合い、握った手が少し熱くなった。
「ヴェル…、これ以上は本当に我慢が……」
「どうして我慢するの……?」
「それは」
「私は、カインに触ってほしいのに……」
ヴェルは自分の心臓の音が速くなるのを感じながら、そうするのが当たり前のように彼に顔を近づける。カインは僅かに息を震わせたが、ヴェルが目を閉じると躊躇いがちに身を屈め、やがて互いの唇がふわりと重なった。
「ヴェル……」
「……あ」
彼の甘い息が唇にかかって呼吸が乱れる。
柔らかくて温かい。
口づけては離れ、また口づける。
ただ唇を重ねるだけなのに頭の芯が蕩けそうだった。
「あ…、ん……」
そのうちに、熱い手が肩に触れる。
?いだ手はいつの間にか離れていて、カインの左手はヴェルの肩に、右手は遠慮気味に腰に添えられていた。
「俺は…、最低なことをしようとしている……」
「どうして? 私が触ってほしいって言ったのよ?」
「だが…、本当に、いいのか? 俺の手…、怖くないか……?」
「……うん……怖くない」
「本当に…? 正直に言ってくれ。君にだけは嫌われたくない……」
「ん…、本当に…怖くないわ……。私…、?なんてついてない……。ん、あ……っ」
耳元で囁かれ、ヴェルは頷きながらびくびくと肩を揺らす。
──カインも、私に嫌われたくないって思ってくれていたんだ……。
彼が自分と同じように考えていたのがわかって胸が熱くなる。
肩をそっと抱き寄せられ、柔らかな手つきで腰を撫でられても、これがカインの手だと思うと嫌ではない。どこに触れられても敏感に反応してしまい、口をついて出たのは自分のものとは思えないほど甘い声だった。
「あ…、ふぁ…、あぁ……」
「ヴェル、もしかして感じている……のか……?」
「っは、あぁぅ…っ」
低音の甘い囁き。熱い手のひら。
触れられた場所からじわじわと熱が広がっていくようだ。
こくこくと頷くと、カインの呼吸が急速に乱れていく。
腰を撫でる手は、やがて腹部のほうへと動き出し、ヴェルは全身を紅潮させて身を震わせる。おへその窪みを軽く突かれるとお腹の奥がきゅうっと切なくなり、得体の知れない疼きを感じた。
「ここは……?」
「ひ…あう…ッ」
問いかけながら、カインは躊躇いがちにヴェルの胸に触れる。
ヴェルは一際大きく反応すると、自分の乳房に目を落とす。やんわりと揉まれた乳房は彼の手の中で柔軟に形を変え、親指の腹でくすぐられた乳首はすぐに硬く尖って主張をしはじめていた。
「あ…ぁ…、……ソコ…、変な感じ……」
「ソコ…?」
「胸の突起…、くすぐられると…、お腹の奥がじんじんするの……」
レスターに胸を触られたときは恐怖しかなかったのに、そんなものは微塵も感じない。
触れられるだけでお腹の辺りが切なくなる。全身が燃えるように熱くなって、これが快感だと理解できるほど、カインの手は気持ちよかった。