騎士は悔恨に泣く
- 著者:
- 春日部こみと
- イラスト:
- Ciel
- 発売日:
- 2018年12月01日
- 定価:
- 726円(10%税込)
どうか俺を許して欲しい。
父に命じられ、平民出身の騎士ユアンと結婚したトリシア。彼をずっと密かに慕っていたトリシアは内心喜ぶが、一見紳士的で優しげなユアンが実は非常に野心家で、この結婚を出世のために受けたことを知っていた。そして、平民を平気で殺す“血塗れ姫”と噂されるトリシアを嫌悪していることも……。彼のため、「子ども以外は望まない」と告げるトリシアだが、ユアンは彼女に軽蔑の眼差しを向けると、剥き出しの欲望をぶつけてきて――。
貴族を憎む野心家の騎士×心を持たない“血塗れ姫”、誤解から始まる運命の恋。
トリシア
幼い頃に従者を刺殺したことで“血塗れ姫”と呼ばれるようになる。ある一件以来、ユアンのことを密かに慕っている。
ユアン
貧民街出身の成り上がり騎士。功績により男爵の身分を得る。トリシアとの結婚は出世のためと割り切っていたが…。
(……くそ……!)
ユアンは心の裡でもう一度悪態を吐いた。
目の前の女は、確かに魔女だ。穢れなど一つもないようなきれいな顔と身体で、周囲を騙し篭絡するのだから。
実際にこうして自分が誑かされそうになっているのがなによりの証拠だ。性悪な人殺しだと分かっているのに、本当は純真無垢な少女なのだと勘違いしたくなっている。
ユアンは半ば自棄になって、考えるのをやめた。考えたところで、初夜は初夜だ。ユアンはこの『血塗れ姫』と結婚し、抱かなくてはならない。そして都合のいいことに、彼女を抱きたくて仕方ない衝動に駆られているのだから、何を迷う必要がある。
小さいけれど張りのある丸い乳房を掬い上げるように?むと、手の中でふるりと柔らかく撓んだ。中央には薄紅色の乳輪があり、その頂に赤い実のように乳首がのっている。
赤ん坊が母の乳首を本能的に咥えるのは、美味そうだと思うからだろう。
独自の見解ではあるが、きっと間違っていないだろう、などと勝手なことを思いつつ、当たり前のようにむしゃぶりついた。
「ぁっ」
トリシアが音を立てて息を呑む。
反応を引き出せたことにほくそ笑みながら、口の中の実が熟して硬くなるまで念入りに舐め転がす。小さな肉の実は敏感なようで、あっという間に芯を持って存在を主張した。
「『血塗れ姫』と呼ばれる悪女でも、ここの作りはそう変わらないな」
クスリと笑ってからかえば、トリシアは唇を?んで目を閉じた。声を出すまいと息を堪えている様子は、恥ずかしいというよりも、頑固者なのだろうと感じた。
(声を漏らすまいと堪える顔が余計に男を煽るのを知らないらしい)
ユアンはまだ弄っていない方の乳首に移ると、そちらも口に含む。同じようにかわいがりながら、解放した方も指で摘まんでいたぶり続けると、強い刺激に驚いたのか、トリシアが身悶えするように身を捩らせた。
「~~ッ、ハ、ぁッ」
声を堪えるあまり、呼吸に嬌声が混じっている。
熱く甘い掠れた吐息に、ズクリと腰の辺りに重い痺れが走った。
快感を堪える女が、これほどそそられるものだとは。
(クソ……)
心の中で何度目かになる悪態をつくと、ユアンは舌で転がしていた乳首に歯をあてる。
「ひ……!」
微かに聞こえた嬌声に怯えの色が滲んでいて、慌てて乳首を撫でるように舐めた。
快感の中に混じる痛みは、より強い快感を引き出すものだが、さすがに処女にはまだ早かったか。
顔を見ようと乳首から口を離し、身を起こして驚いた。先ほどまで人形みたいな無表情を保っていたトリシアが、すっかり変容していたのだ。
桜色に上気した頬。真っ直ぐで艶やかな黒髪は、くしゃくしゃになって白い肌に纏わりついている。先ほどのキスで腫れた唇は濡れて半開きになり、中から赤い舌が艶めかしく垣間見えている。夜空と大地が入り混じる瞳はぐにゃりと蕩け、涙で潤んで、ぼんやりとユアンを見上げていた。
あまりに美味そうな出来上がりっぷりに、ユアンは瞬きも忘れて食い入るように見つめてしまった。
(……なんだこれ……別人か……?)
昼は淑女、夜は娼婦が男の夢と、騎士仲間が言っていたが、趣は多少異なるだろうが、こういうことかと妙に納得する。
それにしても変わりすぎではないだろうか。
快楽に弱い、という解釈でいいのか。いまいちトリシアという人間が分からないが、とりあえず目の前の彼女は人形なんかじゃない。
生身の、?き出しの──女そのものだ。
ユアンはゴクリともう一度唾を呑むと、無防備に欲情を晒す愛らしい顔に覆い被さりキスをした。トリシアは拒まず、うっとりと彼の舌を迎え入れてくれる。そのかわいい舌を撫でるように舐めながら、甘い唾液を啜った。
そうやって安心させながら、片方で彼女の身体を手で弄り、着々と攻略を進めていく。なにしろ、彼の雄は既に隆々と立ち上がり、早く目の前の美味そうな女の中に入り込みたいと猛然と喚きたてている。
こんなに気が逸ったのは初めてで、ユアン自身、不可解な衝動に戸惑っているくらいだ。
(……ああ、それにしても、どこもかしこもこんなに気持ちいいなんて……)
浮いた肋骨を数えるように辿り、くびれた腰、柔らかな腹部へと手を移動させつつ、ユアンは眉間に皺を寄せる。気を抜けば陶然とした間抜け面を晒してしまいそうだった。
トリシアの身体は、どこを触ってもクリームのように滑らかで、掌にしっとりと吸い付くようだ。自分よりも少し低い体温がひどく心地好い。
触り心地を堪能しつつ、淡い茂みへと指を伸ばす。
下生えは柔らかくまだ少女のような無垢さを呈していたが、それを?き分けて進めば熟れた花弁に行きついた。
トリシアがギクリと身を硬くしたのが分かった。恐らく誰かに触れられるのは初めてなのだろう。
(これが演技でなければ、だが)
皮肉っぽく思ったが、この不器用な反応が演技だったら、それはもう拍手するしかないと思う。見破れなかった己が愚かで、トリシアの方が上手だったということだろう。
二本の指で花弁をそっと割り開き、入り口の辺りに触れてみれば、薄くだが潤いを滲ませていた。溢れ出るほどとはいかないが、初めてで少しでも快感を得てくれたのだから上々だ。愛蜜を絡めるように指を動かし、一本をゆっくりと中に沈めていく。
「──っ……」
トリシアが目を見開いて、至近距離にあるユアンの目を凝視する。その夜色の瞳が不安げに揺らぐのを目の当たりにし、ぎゅっと胸が締め付けられた。
思わず安心させるように微笑んで、その瞼に口づけた。
魔女を相手に何故こんな真似を、などと考えないでもなかったが、彼女がホッとしたように目元を緩め、自分の頬に己の頬を摺り寄せてきたので、どうでも良くなった。面倒なことは後で考えればいい。
トリシアの中は、熱く、ぬかるんでいて、とても狭かった。
処女なのかもしれないという推測は、確信に変わる。
(これだとしっかり慣らしてやらないと、怪我をさせてしまうかもしれないな)
男性としても大柄な部類に入る自分の身体に見合った大きさのこれを受け入れるのは、処女でなくとも苦痛が伴いかねない。
ユアンはトリシアの唇を甘?みしてから上体を起こし、名残惜しくも指を抜く。そして彼女の両膝に手をかけると、躊躇せず左右に大きく開かせた。
「……っ、ゃ……」
いきなり脚を開かされ、トリシアが声にならない悲鳴を上げる。
だがユアンはニコリと笑みを浮かべて言った。
「痛い思いをしたくなければ、大人しくしてくださいね」