死神元帥の囚愛
- 著者:
- 市尾彩佳
- イラスト:
- みずきたつ
- 発売日:
- 2018年05月02日
- 定価:
- 704円(10%税込)
もっと堕ちてください…俺のこの手で。
暗愚な王と王太子を滅ぼしたクーデター。捕えられた王女エルヴィーラが見たのは、王を殺し、王太子を殺し、自身の父をも殺してクーデターを成功させた、血まみれの初恋の人の姿だった。彼――ウェルナーは怯えるエルヴィーラに囁く。「俺がクーデターに協力した目的は貴女だ。ずっと俺の欲望で貴女を汚したかった」――そのまま彼に純潔を奪われ、何度も執拗に抱かれるうちに、エルヴィーラの身体は淫らに作り替えられていき……。
冷酷無比な軍人×清純なる囚われの王女、国を揺るがす執愛の謀略!
エルヴィーラ
腐敗した王宮でただ一人、慈悲深く清廉な心を持つ王女。何にも負けぬ強さを持つウェルナーに憧れていたが…。
ウェルナー
元帥の庶子として生まれながらも数々の戦功を立てた“英雄”。その冷徹さゆえに“死神”とも呼ばれている。
「どうあっても、貴女は王女でいることをやめられないらしい。ならば実力行使をするまでです」
じりじりと後退っていたエルヴィーラを引き戻すと、ウェルナーはまた覆い被さってくる。
「やめ……っ!」
押し退けようと突っ張る両手をまたもや捕らえられる。ウェルナーは、両手首をまとめてエルヴィーラの頭の上に持っていくと、片手でやすやすと押さえつけた。
ウェルナーの顔が下りてくる。
口づけしようものならまた噛みついてやると待ち構えていると、ウェルナーは空いているほうの手でエルヴィーラの夜着をはだけさせ、そこに顔を埋めようとした。
「いやっ! やめて……っ!」
エルヴィーラは必死に暴れた。両手首の拘束を外そうともがき、顔を埋めさせまいと上体を左右に捻り、ウェルナーの身体の下に敷かれた脚をばたつかせて。
すると、ウェルナーの押さえつけが若干緩んだように感じた。
このまま抵抗すれば逃れられるかもしれない。エルヴィーラは渾身の力を込めて一層暴れる。
そのとき、ため息交じりの声が聞こえた。
「仕方がない」
ウェルナーのもう一方の手もエルヴィーラの頭上に伸びたかと思うと、何かが両方の手首に巻き付いてきつく締め上げる。ウェルナーの両手が離れたときには、エルヴィーラが両手を引っ張ってもほとんど動かせなくなっていた。仰向けて両腕を上げた不自由な体勢で、エルヴィーラは何とか少しだけ頭を上げる。見えたのは、ヘッドボードの突起に縛り付けられた、布のようなものでできた紐だった。その紐のもう一方には、エルヴィーラの両手首が縛られているのだろう。エルヴィーラが力を込めて引っ張るたびに、紐はぴんと張る。
この紐がある限り逃げられない──エルヴィーラは焦って手首から紐を外そうとした。だが、ぐるぐると巻かれた紐はあまり痛くはないものの、手首に食い込んで解くことも抜け出すこともできない。
焦りがパニックを引き起こし、エルヴィーラは涙声で訴えた。
「お願い、解いて……!」
ウェルナーはそんなエルヴィーラに冷笑を向け、そっと頬を撫でる。
「貴女が暴れるからこうするしかなかったんです。俺は貴女が欲しいけれど、痛い思いをさせたいわけじゃない」
どういうこと?
ウェルナーが何を言っているのか理解できない。
困惑した一瞬の隙に、ウェルナーはエルヴィーラの両腿の上に腰掛けた。彼が重しになって、脚がほとんど動かせなくなる。
ますます動けなくなって、エルヴィーラは動揺する。そんなエルヴィーラに構うことなく、ボタンが弾け飛んだ夜着にウェルナーは手をかけた。
身動きもままならないエルヴィーラは、彼のすることをただ見ていることしかできない。
ウェルナーの手が、夜着の前合わせを大きく開く。先ほどより少し明るくなった室内に、エルヴィーラの白い裸体がさらけ出された。早朝のひんやりした空気に刺激され、胸の頂がきゅっと締まるのを感じる。
それを目にしてか、ウェルナーはごくりと喉を鳴らした。舐め回すような視線を感じ、羞恥のあまりエルヴィーラの目尻に涙がにじむ。
「見ないで……お願い……」
先ほどの威勢はどこに行ってしまったのだろう。逃げられないと悟ってしまってからというもの、恐怖がじわじわと身体を蝕み、抵抗する力が奪われていく。
エルヴィーラの怯えに気付いた様子もなく、ウェルナーは胸を大きく喘がせた。そして辛抱できなくなったかのように、エルヴィーラの胸元に顔を埋める。
「ああ……夢にまで見た貴女の肌だ。この手触り、この匂い……想像より遙かにいい」
興奮したウェルナーの声に、エルヴィーラは戦いた。
いつから、どんな想像をしていたというのだろう。
パスクァーレが女性たちと戯れる姿は何度も見ている。けれど、それはどことなく駆け引きめいていて、いやらしい光景ではあったものの遊びの延長のようにも見えた。
でも、ウェルナーは違う。エルヴィーラの胸の谷間に頬ずりしながら、まだ足りないとばかりに、大きくて硬い両手のひらで細い身体を撫で回す。
エルヴィーラが初めて見る、男のあからさまな欲望だった。