みそっかす王女の結婚事情
- 著者:
- 富樫聖夜
- イラスト:
- アオイ冬子
- 発売日:
- 2018年02月02日
- 定価:
- 726円(10%税込)
無垢なる王女、全部私がお教えしましょう。
家族の中で唯一、青銀色の髪と目を持つことにコンプレックスを抱いていた王女ミュリエルは、騎士団の副総長レイヴィンの言葉で救われる。優しく誠実な彼に恋をした彼女は、彼と結婚できると知り有頂天に。しかし迎えた初夜、小柄なミリュエルには大柄なレイヴィンを受け入れることができなかった! 早くひとつになりたいのに、彼はなかなか最後まで抱いてくれない。やがてミュリエルは、この結婚は彼にとって不本意なものだったのではと思い始め……。
腹黒紳士な最強騎士×容姿にコンプレックスを持つ王女、体格差カップルの新婚溺愛!
ミュリエル
才色兼備な姉に比べて平凡な自分を“みそっかす”だと思っている。幼い頃レイヴィンと出会い、彼に恋をするが……。
レイヴィン
騎士団の副総長。幼いミュリエルと出会ってから、彼女を気にかけている。爽やかな外見の裏に欲望を隠している様子。
「なんてことでしょう……!」
「モナ?」
髪を梳く手を止めていきなり頭を抱え始めたモナを、ミュリエルは不思議そうに見つめる。
──私、何かおかしなことを言ったかしら?
「姫様、これはゆゆしき問題です! このままだと姫様は初夜の床でとんでもない衝撃を受けることになるでしょう。床入りは、なんと言うか、単純に挿れるだけの問題ではないのです!」
「単純に挿れるだけの問題ではない?」
「そうです! 最初のうち、女性はひどい苦痛を味わうものだと聞いております」
「苦痛を?」
それはどういうものかと尋ねようとしたその時だ。寝室の扉が開いてシャツとトラウザーズ姿のレイヴィンが現れる。
「殿下、お待たせしました。遅くなって申し訳ありません」
「あわわわ!」
慌てたのはモナだ。まだ説明していないのに、レイヴィンが来てしまったのだ。モナは執事長や家政婦長からレイヴィンが来たら下がるように言われているので、出て行かないわけにはいかない。
鏡台に置いたものを手早く片付けながら、モナは早口で告げる。
「とりあえず姫様、レイヴィン様にお任せして、姫様はとにかく力を抜いて心を安らかに保ってください」
それからモナはレイヴィンに向き直って訴えた。
「姫様は床入りについてほとんどご存じない様子です。その……お手柔らかにお願いいたします!」
「は?」
目を丸くするレイヴィンをよそにモナは深く頭を下げると、慌ただしく寝室から出て行った。
「モナは一体どうしたのかしら……?」
鏡台の前に腰かけたまま、ミュリエルはポカンとしていた。だが、敏いレイヴィンは、モナの言いたいことが理解できたらしい。
「何となく分かりました。殿下、どうぞこちらへ。そして床入りについて殿下が知っていることを教えていただけますか?」
レイヴィンはミュリエルをベッドの端に座らせながら尋ねる。
同性にも尋ねにくかったことをレイヴィンに告げるのは気が進まなかったが、モナも、そして家庭教師も夫に任せればいいと言ったのだから、ここは素直に教えるべきだろう。
「ええっと、その、そもそも閨の授業というのはなくて……」
教わったことをすべて話すと、レイヴィンは天井を仰いでそっとため息をついた。
「陛下の仕業ですね……まったく、何も教えなければ私が遠慮して手を出さないとでも思ったのでしょうか」
何やらぶつぶつと口の中で呟いているが、ミュリエルにはよく聞こえなかった。
「レイヴィン?」
「何でもありません」
レイヴィンはにっこり笑った。
「殿下は何も知らなくとも問題ありません。全部私がお教えしましょう」
「あ……?」
ふわりと抱きしめられた直後、ミュリエルはベッドに押し倒されていた。
「レイヴィン?」
「無垢なる私の王女。心配はいりません。ゆっくりと、あなたに教えていきましょう」
「レイヴィン……」
ランプの光に照らされて、ミュリエルを見下ろすレイヴィンの青い目の中にオレンジ色の火がちらちらと燃えている。いつもと違う、熱を帯びた眼差しは、別人のようにも見えてミュリエルはほんの少し怖くなる。
しかしここにいるのは間違いなくレイヴィンだ。ミュリエルの初恋の相手で、結ばれるなんて夢にも思わなかった人だ。
ミュリエルは思わず手を伸ばし、レイヴィンの首に腕を巻きつけた。
「教えて、レイヴィン。私をあなたの妻にして?」
「殿下……!」
レイヴィンは何かに堪えるようにぐっと唇を?みしめると、ミュリエルの夜着に手を伸ばす。ミュリエルは抵抗せずに、その手を受け入れた。
優しく触れながらも、ミュリエルの夜着をはぎ取る手つきには決意が溢れていた。ミュリエルが臆したとしても、レイヴィンはきっと脱がせる手を止めはしないだろう。けれど、ミュリエルは抵抗することなど思いつきもしなかった。
ミュリエルは未知のことに少し怯えていたが、同時に待ち望んでもいたのだ。レイヴィンの妻となるその時を。
──床入りをすませれば、私は名実ともにレイヴィンの妻になれる。
脱がせやすいデザインの夜着はあっという間にミュリエルから引き?がされた。下に着ていた繊細なレースのシュミーズも、お揃いのドロワーズも続いて脱がされ、床に落とされる。
いつの間にかミュリエルは、一糸纏わぬ姿でレイヴィンの腕の中にいた。
「……綺麗です、殿下」
白くて滑らかな肩の丸みをそっと撫でながらレイヴィンは囁く。その声は微かに掠れていた。
ミュリエルは頬を染めながら手で胸を覆い隠す。それなりに胸はあると言っても、それはミュリエルの体格からすればの話で、レイヴィンにとっては全然足りないだろう。
──アンネリースお姉様のように、胸が大きくてスタイルもよければ……。
第三王女のアンネリースは、魅力的な身体つきの女性で、微笑一つで百戦錬磨の男性まで虜にしてしまうところがあった。もっとも、本人の貞操観念はしっかりしており、公爵家に嫁ぐまで誰にも肌を見せたことはなかったが。
──お姉様のような身体であれば、きっとレイヴィンも喜んでくれたでしょうに。
男性は大きな胸の女性が好きだと思い込んでいるミュリエルは、自分の身体を恥じていた。
「とても綺麗なのに、隠してはいけませんよ、殿下」
レイヴィンは胸を隠すミュリエルの細い腕を取り、いとも簡単に片手でベッドに縫いつけた。
「だ、だって、男の方は胸が大きい方がいいって……」
「殿下は小さいわけじゃないでしょう。ほら、私の手にぴったりの大きさです」
「あっ……」
片方の胸の膨らみをレイヴィンの大きな手のひらがすっぽりと覆う。ぴったりというのはレイヴィンの誇張だろう。大きな彼の手にはどうやったってミュリエルの胸の膨らみは足りていないのだから。
けれど、ミュリエルの身体を見下ろすレイヴィンは、満足そうに微笑む。
「滑らかで、吸いつくようです。殿下の呼吸に合わせてふるふる震えて……とても可愛らしい……」
「あっ、ん……」
胸の膨らみを下から掬うように揉まれ、捏ねられ、ミュリエルの口から無意識に声が漏れた。
「ピンクの小さな頂も、本当に可愛らしい。ああ、ほら、見てください。少しずつ立ち上がってきましたよ」
自分の胸を見下ろしたミュリエルは、目を見張った。普段は柔らかくつつましやかな胸の頂が、レイヴィンの手によって揉まれた方だけピンと立ち上がって、存在を主張しているのだ。ジンジンと熱を帯びて紅に染まった小さな乳輪の色も、いつもより色が濃く見えた。
「わ、私の身体、おかしくないですか?」
うろたえて尋ねると、レイヴィンはくすっと笑った。
「おかしくありません。女性の身体はこうやって愛撫に反応するものなのです。男性も同じです。欲望が募れば、身体の一部が変化します」
「身体が……変化……」
「そうです。交わることができるように互いに準備するのです。いずれ、それもお教えしますが、今日は殿下に無理をさせたくないので、触れるだけにしましょう。私の手と唇の感覚をどうかその身に刻んでください」
「あっ……!」
レイヴィンが頭を下げてミュリエルの胸の頂を口に含んだ。温かく濡れた感触が、じくじくと疼く先端を覆う。ぞわりと背筋に何かが駆け上がる。
「あっ、レイヴィン……!」
ビクンと身体を震わせながら声を上げると、胸の先端を口に含んだままレイヴィンが笑う。
「その声、ものすごくそそられます。……あなたにそんな声を上げさせるのを、どれほど望んでいたか」
「やっ、そこでしゃべらないで……!」
彼が言葉を発するたびに、敏感になった頂にその唇と歯が当たる。肌がざわめき、お腹の奥がキュンと疼いた。
「お腹の、奥が、変にっ……」
ジンジンと熱を帯びる頂を吸われて歯で転がされると、どういうわけか、胸ではなくお腹の奥が反応する。下腹部がずくずくと疼き、いてもたってもいられない気分になる。
じわりと何かが滴り落ちるのを感じて、ミュリエルは怯えた。
「あっ、んっ……あ……やっ、変なの、レイヴィン、私、おかしくなっ……」
「それは殿下が気持ちいいと思っているからこその反応です」
「気持ち、いい? ムズムズするのに?」
「ええ。それも気持ちいいという反応の一種です。殿下は私に触れられて悦んでいるということですよ」
──これが気持ちいいということ? 悦んでいるの? 私の身体が? くすぐったいような、ぞわぞわするような、落ち着かないようなこの感じが?
「あっ……!」
胸の頂を乳輪ごときつく吸われ、ミュリエルの唇から声が漏れる。
きゅうっとお腹の奥が引き絞られ、そこから甘い衝撃がじわじわと広がっていった。