誘拐結婚
- 著者:
- 宇奈月香
- イラスト:
- 鈴ノ助
- 発売日:
- 2017年07月03日
- 定価:
- 704円(10%税込)
やっと俺だけの君になったね。
初恋の幼馴染み・ノランにひどい言葉で傷つけられて以来、人間不信になっていたシンシア。それから5年、憎むことも忘れることもできなかった恋は、シンシアをずっと苛んでいた。一方、ノランは軍部で功績をあげ、社交界の寵児となっていた。彼はシンシアと再会するやいなや、過去のことなど忘れた様子で独占欲を露にし、他の男を牽制する。さらには、半ば強引に彼女を連れ去り、無垢な身体に快楽を刻みこむと、結婚まで強要してきて……!?
腹黒幼馴染み×自信をなくした伯爵令嬢、逃れられない独占愛!
シンシア
幼い頃はわがままを言ってノランを独占していた。彼に傷つけられてからはすっかり引っ込み思案に……。
ノラン
伯爵家の次男。「心のない人形」と評されるほど厭世的だが、シンシアには異常に執着している様子……?
「やめて……退いて!」
「俺のことが好きで仕方ないくせに、どうして爪を立てるんだ?」
(違う。違う違う違う──ッ)
必死で首を横に振った。
(もう好きでいたくない。愛したくないの!)
「五年前もこうして君を見下ろしてた。あのときは抱けなかったけれど、ようやくだ。──長かったね」
「やめて……もうやめて」
聞きたくない。あの日のことなど思い出したくなかった。
優しい手つきで頬を撫でる仕草とは裏腹に、見下ろしてくる彼の双眸には酷薄な光が宿っている。
「そんなに俺が嫌い?」
嫌いになりたかった。ノランの希望通り、憎めればどれだけよかったか。
「……い、あなたなんて嫌い……っ」
言葉にすることで、真実にしたかった。
ノランが不敵に微笑む。
「そう、……残念だな。でも、君の腹にはもう俺たちの子が宿ってるかもしれないよ。あんなに俺の子種を注いだんだからね。覚えているだろう?」
同意を求められても、頷けるはずがなかった。
「たとえ君が忘れていたとしても、身体はどうだろう。最高の快楽に溺れた時間だったはずだ。君は何度も俺の下で快感に震えて、腰を振っていた。いやらしくね」
すべて媚薬のせいだ。正気だったなら、ノランとだけは絶対に肌を重ねたりしない。
「シンディはどちらに似てほしい? 髪と目の色は絶対に君譲りがいいな。楽しみだと思わない?」
おぞましい可能性に身震いし、どうにかして逃げ出そうともがいた。
けれど、あがけばあがくほど拘束は強くなる。自由を奪われどうすることもできずにいると、「昔の威勢はどうしたの?」と言われた。
「本当に嫌ならもっと真剣に抵抗しなきゃ。君はそんなしおらしい性格じゃないだろ。昔みたいに声を張り上げていいんだよ」
嬉しそうな声音に涙が滲んでくる。
彼はその様子を見て、楽しくて仕方がないとばかりにシンシアをあざ笑う。
(どうして──ッ)
奮闘をせせら笑い、ひとくくりにした手に口づけた。
「こんな可愛らしい抵抗じゃ、余計に男を煽るだけだとあいつは教えてくれなかった?」
薄目からのぞく瞳の美しさにぞくっとした。
彼の手が秘部に触れる。
「や……っ」
「まだ濡れてる。でも中は指一本でも窮屈そうだ。あぁ、早く挿れたい」
「やめ……て。も……したくない。私のこと……醜いって……」
「……ん? 何のこと? 覚えてないな」
「──ッ」
人を地獄の底まで突き落としておきながら、なんて言いぐさだろう。だが、シンシアの味わった五年間の苦しみもノランにしてみれば、どうでもいいことになっているのだ。
(──ひどい人!)
「この五年、ずっと俺を待っていた。そうだろう?」
「……私は……もうあなたなんていらない……っ」
ノランと離れても生きていけるようになった。そのために必要なものを五年かけて身につけたのだ。
「嘘つき」
窘めるようにずぶりと指が蜜穴に潜った。
「んんっ!」
一晩中繋がっていた場所だ。すぐに彼の指に吸い付いた。
「シンディは俺なしじゃ生きていけないよ。俺がそうしたんだ。可哀想に、息の仕方も分からなくて辛かっただろう?」
「ち……ちが…うっ」
「それも嘘だね」
「ひぅ──ッ!」
ぐりっと感じる場所を押され、上半身が硬直した。
ノランの言葉通り、身体は昨夜の行為を覚えている。味わった快感を欲して内壁が蠢いた。
「ここだよね。聞こえる? シンディの中から溢れた蜜が音をたててる」
そう言って、ノランは耳元に唇を寄せた。
「ぐちょぐちょだ」
愉悦混じりの低音が腰骨を疼かせた。正気の状態で聞かされる破廉恥な蜜音が容赦なく羞恥心を煽る。いっそ、耳を塞いでしまいたいのに、腕を拘束された状態ではどうすることもできない。なすがまま一方的に身体が煽られていく。指で擦られるたびに、じりじりと中が疼いてもどかしい。呼び起こされた熱で、全身がじっとりと汗ばんでいくのを感じた。
恥ずかしくてたまらないのに、秘部は切なかった。
「あぁ、今すごく締まった。シンディは辱められると興奮するんだ」
「違う」と必死で首を横に振る。
「やめて……ぇ」
「君の中はそんなことは言ってないよ。──何が欲しいのか、言ってごらん」
そんなこと、口が裂けても言いたくない。
また首を振れば、いきり立つ熱の先端が蜜口に押し当てられた。
「あ……」
甘い期待に胸が膨らむ。すると、ノランが意地悪そうな表情になった。
「シンディ。おねだりは?」
ぬち、ぬち…と卑猥な音を立てながら、ノランは秘部の割れ目に沿って動かした。何度も往復されていくうちに、えもいわれぬ疼きが生まれていく。切なさを伴った生温い刺激は、シンシアの劣情をどうしようもないくらい煽ってきた。
「や……ぁ、あ……」
追い打ちをかけるように、先端が中を窺うように潜り込んでくるから、たまらない。
与えられそうで得られない快感が苦しい。もどかしさに神経が焼き切れてしまいそうだ。
本能がノランを欲しいと感じていた。
身体が昨夜の悦楽を願っていた。
もう彼の熱が自分の最奥まで満たす充足感を、シンシアは知ってしまっている。
一度味わってしまえば、二度、三度と欲しくなる。一度きりでいいなんて、きれいごとだ。
けれど、口にしてしまえば自分の中で積み上げてきた何かが崩れてしまいそうだった。
快感なんかに流されたくない。
その頃には自由になっていた腕で顔を隠し、悶絶しながらもその瞬間を期待していた。
「シンディ、見て」
大きく脚を割り開かれ、結合部分がシンシアにも見えるように腰を持ち上げられた。おそるおそる腕の隙間からのぞき見れば、剛直の先が自分の中に押し入ろうとしていた。
あんなものが本当に入るのか。
おぞましさを感じつつも、身体はもたらされる快感をいまかいまかと待ち望んでいた。
(やめて、挿れないで──)
理性とは裏腹に見ているだけで息が上がってくる。
欲望の先端が中に入ってくるたびに、秘部が愛おしいとひくついた。
「あ……あ……」
期待と恐怖が入り交じった眼差しで食い入るように見つめていると、ノランが欲情に染まった双眸を細めた。
「物欲しそうな目。そんなにコレを挿れてほしい?」