女装王子の初恋
- 著者:
- 桜井さくや
- イラスト:
- アオイ冬子
- 発売日:
- 2016年11月02日
- 定価:
- 704円(10%税込)
おまえの前では男でいたい。
憧れの王女アリシアのお世話係になった貧乏貴族の令嬢コリス。初対面から冷たくされて意気消沈するものの、持ち前の雑草根性でめげずに役目をこなしていた。だがそんな中、アリシアが男であると知ってしまう。彼の女装は趣味ではなく、複雑な事情がある様子。彼の孤独と不器用な優しさに触れ、愛しさを覚えるコリス。一方アリシアも、明るくまっすぐなコリスに安らぎを感じていた。やがて二人は、たどたどしくも熱い一夜を過ごすのだが……。
コリス
貧乏だが優しい家族に慈しまれて育った。明るく前向きな性格で、アリシアの孤独な心をとかしていく。
アリシア
王女……と思いきや男だった。男と知られてはいけなかったことと、とある事情から誰にも心を開かずにいた。
「……う、ん」
アリシアは瞼を開け、天蓋の布から漏れる陽の光を感じながら、手首につけたブレスレットに目を移す。
──夢を見ていたのか。
もそもそと身を起こせば、隣で眠るコリスの姿が視界の隅に映った。
彼女はうつぶせになって、顔をこちらに向けて眠っている。
毛布の隙間から肩が見え隠れして、アリシアは何も考えずにそれを少し捲った。
「ん…」
いきなり空気に触れたからだろうか。
コリスは僅かに眉を寄せて身を捩った。
その?き出しの肌は、彼女が何も身につけていないことを意味している。
昨日はあれから何度彼女を抱いたのだろう。
彼女がベッドから出ようとするたびに引き留めていたから、本当に切りがなかった。
おかげで最後に抱いたとき、彼女は果てたあとに気絶してしまった。自分も同じように意識を失い、今の今まで泥のように眠っていた。
「……これが幸せ?」
ぽつりと呟き、アリシアはコリスの肌に触れる。
とても温かい。
手触りのいい薄茶色の髪を一束?んで口づけ、うつぶせの身体を仰向かせた。
すぅすぅと気持ちよさそうな寝息が聞こえるのに瞼がひくついているのは、もう少しで目覚めるからかもしれない。
──けれど、私は本当に彼女を手に入れられたのだろうか?
ふと、アリシアの中に疑問が浮かぶ。
喉を鳴らして、あどけなさの残る寝顔を食い入るように見つめた。
これは、いつかなくなってしまうものかもしれない。
アリシアを残して、彼女は開かれた光の道を進んでしまう気がした。
「アリシアさま……?」
「……」
ゆっくりとコリスの瞼が開き、とろんとした眼差しと目が合った。
この気持ちは何だろう。
とても心許ない場所に立っている気分だ。
アリシアはぶるっと身を震わせ、彼女を抱き寄せて深く口づけた。
「ん、んん…っ」
戸惑う声が聞こえたが、構わず手を伸ばして乳房を揉みしだく。
こんなものではとても足りない。起きたばかりで力の入っていない身体にのしかかり、閉じた脚を強引に開いた。
──その道は、おそらく私の前には用意されていないものだ。
どうやっても追いつくことができないものだ。
「あっ、アリシアさま…ッ、待ってくださ…──」
「だめだ。どこにも行かせない。拒むならおまえを閉じ込めてやる……っ!」
「あぁ…ッ!?」
アリシアはいきなりコリスの秘部に指を突っ込み、中をかき回した。
昨夜の名残がぐちゅぐちゅと音を立て、泡を立てて溢れ出してくる。
その淫らな光景に煽られ、血が沸き立つのを感じた。
アリシアは激しく興奮し、屹立した猛りを彼女の中心に押し当てると、驚く彼女を視界の隅に捉えながら一気に貫いた。
「ひあうッ、…んっ、ぅん──ッ!」
部屋に響く嬌声は唇を塞いで閉じ込めた。
間を置かずに腰を大きく引き、深いところまで突き上げる。
性急な行為とわかっていたが止めることができない。アリシアは焦燥に似た感情に振り回されながら彼女の中を激しく突いていた。