蜘蛛の見る夢
- 著者:
- 丸木文華
- イラスト:
- Ciel
- 発売日:
- 2016年10月05日
- 定価:
- 704円(10%税込)
お前を殺して、俺も死のうか。
目覚めると見知らぬ洋館にいた尚子。そこへ、女物の着物を着た美しい青年・皓紀が現れる。彼は巨大企業の御曹司で、尚子の主人であるらしい。さらに、尚子はバルコニーからの転落事故により、1年間昏睡状態だったのだという。記憶と違う現実に混乱しつつも皓紀に仕える尚子。彼の尋常でない仕打ちと館の異様な空気に、尚子の精神は蝕まれ搦め捕られてゆく。彼の狂った愛に身体をも征服される日々の中、尚子はやがて1年前の真実を思い出し――。
尚子
就活生だったはずが、目が覚めると社会人になっていた。事故のショックで記憶に障害が出ていると言われるが……。
皓紀
巨大企業の御曹司。尚子のために散財する一方で、些細なことで嫌がらせのように尚子を呼び出す。
(夢だ……これは、夢なんだ。こんなキス、現実のはずなんてない……)
皓紀は延々と尚子の口を吸っている。尚子もいつしか、夢中でその口づけに応えている。
皓紀の手はいつの間にかネグリジェをかいくぐって尚子の素肌を愛撫し、乳房を揉み、脇腹を撫でながら下がってゆく。唇は尚子の首筋を吸い、鎖骨を甘く?み、そして丸い乳房の先端に舌を這わせる。その瞬間、甘美な快楽の波が全身を駆け巡り、尚子は仰け反った。
「ああっ……」
自分でも信じられないような声を上げていた。夢だ、これは夢なんだ──そう自分に言い聞かせる声が、尚子に羞恥心を忘れさせている。皓紀の唇は乳輪ごと包み込み、濡れた舌は勃起した乳頭に絡みつき扱き立て、まるで赤子のように強く吸い上げる。
尚子ははしたなく身をくねらせた。そうしなければこの快さをどうすることもできなかった。汗ばんだ脚は自然と開き、皓紀の胴体はその間へ入り、美しい繊細な指先は下着をかいくぐり尚子の秘裂にいとも容易く到達する。指の腹が狭間をすべる感触に、尚子はそこがすでにたっぷりと潤っていることを感じ、困惑すると共に、興奮に胸を喘がせた。
「尚子……可愛いな……」
低く掠れた声で囁かれ、喘ぐ口を再び吸われて、尚子は酒に酔ったように熱く乱れる。
皓紀の指は巧みに尚子の花芯を探り、優しくそこを転がし、夥しい官能を呼び覚ます。くちゅくちゅという水音が響き、自慰すら経験のない尚子は何が起こっているのかもわからず、ただ快楽に追い立てられて震えている。
「あっ、あ……皓紀、様……」
「濡れやすいんだな、尚子……本当に可愛い……可愛いよ……」
これまで聞いたこともないような甘い言葉。上気した顔に潤んだ瞳の皓紀は壮絶に艶かしい。忙しない息の合間に、可愛い、可愛いと囁きながら、ひとときも唇を尚子から離さない。指は絶えず蠢き、膨らんだそこを擦り立て、尚子は舌を吸われながら呆気なく達してしまう。ヒクヒクと数度腰が痙攣し、奥からじゅわりと熱いものがほとばしるのを感じながら、尚子は甘い夢に酔い痴れている。これは何なのだろう──初めての軽い絶頂に、尚子は呆然として肉体が上り詰めるときの、その蜜の甘さを味わっている。
もう我慢できない、という囁きを耳に聞いた後、尚子は下着を脱がされ、脚が大きく押し開かれるのを感じた。濡れそぼつそこに熱い何かが押し当てられ、強引に割って入ろうとしている。
尚子が無意識のうちに少し抵抗して身を捩った瞬間、何か大きなものがぐぷりと濡れた音を立てて埋没した。
「あ……」
目の前が、赤く染まる。火花が散って、意識が遠のきかける。
「尚子……辛いなら、俺にしがみつけ……」