ここへ、おかえり
- 著者:
- 宇奈月香
- イラスト:
- ひのもといちこ
- 発売日:
- 2016年09月03日
- 定価:
- 704円(10%税込)
君だけが俺の楽園。
陰惨な事件の後、とある島でたったひとり、弔いと償いの日々を過ごしていたアリーナ。そんな彼女の前に、陽気な青年クライヴが現れる。船が難破したと言うわりに、ひどく元気な様子に警戒するが、陽だまりのような彼の笑顔に、アリーナの心はとかされていく。クライヴはアリーナへの好意を隠さない。何度も囁かれる愛の言葉、激情を秘めたまなざし、熱い身体。彼の情炎に煽られて、淫らな夜を重ねるアリーナ。だが、二人は互いにある秘密を抱えていて……。
アリーナ
孤島でたったひとり暮らす娘。クライヴの明るさに癒やされていくが……。
クライヴ
ある日孤島にやってきた青年。島にやってきたのには理由があるようで……。
「……なぁ、抱いていいか?」
伺いを立てる一方で、体を撫でる手に躊躇いは感じられない。腰骨を撫で、腹部の感触を確かめた手が胸元まで上がってきた。
初めて好きになった人に、こんなにも想われて嬉しくないはずがない。
(──次の船が来るまでだけなら……許されるだろうか)
ゆるゆるとアリーナは彼へと腕を伸ばした。首に回すと、微かに彼が含み笑いをする声がした。
「溺れたらいい」
そう言うと、彼は体を起こし、魔法でも使ったみたいにアリーナの服を一瞬ではぎ取った。アリーナは一糸纏わぬ姿にされて慌てて顔を両手で隠す。
「や……ぁ、見ないで」
「何で? 見るに決まってるだろ」
衣擦れの音がして、クライヴもまたシャツを脱ぎ捨てた。目を細めながら品定めをするようにアリーナの体に手を這わせてくる。
「細いな、……やばい。全部壊しそうだ」
「あっ」
両方の手で乳房に触れられた。ゆっくりと揉まれるとそれだけで淫靡な熱が生まれる。クライヴが薄桃色の尖頂を指の隙間に挟んだ。
「ちゃんと硬くなってる」
囁き、今度はそこに唇を寄せた。乳房を丹念に揉みしだきながら、硬くなった尖りを口に含む。ぬるりとした感触に、アリーナは「ひぁっ…」と悲鳴を上げた。
さわさわと肌に触れる茶色の髪がくすぐったい。でも、それ以上に、されている行為に怯えた。
味わったことのない感覚に戸惑い、手を宙にさまよわせた。気づいた彼が視線で笑う。片方の手は彼の手でベッドへ縫い付けられた。もう片方は乳房に留まる彼の口まで導かれる。指先に口づけられ、やはり口腔に含まれた。同じものなのに触れる場所が違えば感覚もまるで違う。
「ん……ん…っ」
もどかしさが腰に溜まる。たまらなくなってクライヴの下で体をくねらすと、肌が擦れ合って余計に吐息が出た。
このままクライヴの激情に押し流されてしまいそうだ。
「好きだ」
伸び上がった彼にまた口づけられた。やり場のなかった手を握り込まれ、愛おしげに頬に当てられる。それから、指を絡めしっかりと繋がれた。
息継ぎの仕方も知らない口づけに頭がくらくらする。
「ふ……ぁ」
ちゅっとリップ音を立て、ゆっくりと唇が離れていく。「好き」を連呼しながら、耳殻や耳朶にうなじにと唇を押しつけていく。時折強く吸い上げられ、そのたびに細い痛みに身じろぎした。
恐いのに、心臓が高鳴っている。待って欲しいのに、止めて欲しいとは思っていない。
ゆっくりと顔を上げた彼の表情に見えた欲情の焔。
(あ……)
色濃くなった青い目がアリーナを欲していた。
拒むなら今しか無い。本能が発した警告に従う理由を、アリーナはその目の中に求めた。
刹那、クライヴが蠱惑的に微笑んだ。
「逃げられるわけないだろ」
決定的な答えを導けないアリーナに代わり、彼が出した最終宣告。その言葉を機に、クライヴが本格的にアリーナを蹂躙し始めた。