奈落の純愛
- 著者:
- 貴原すず
- イラスト:
- 芦原モカ
- 発売日:
- 2016年07月02日
- 定価:
- 704円(10%税込)
おまえは俺と別れられない。
暴君と呼ばれる男との結婚を命じられた公主・蘭花。輿入れの際の護衛は、蘭花の幼い頃からの想い人、将軍・楚興だった。結婚したらもう楚興とは会えない――。彼への恋心が抑えきれなくなったとき、ふたりはがけ崩れに巻き込まれる。楚興と少しでも長くいたい蘭花は、とっさに記憶を失ったフリをしてしまい……。そんな蘭花に楚興は「俺はおまえの夫だ」と静かに微笑むと、甘い口づけと熱い愛撫で蘭花の身体を蕩かし、純潔を奪ってしまうのだが――。
蘭花
成り上がりの皇帝を父に持つ。楚興のことが昔から好きだが、立場上言い出せずにいる。
楚興
蘭花の父のことを皇帝になる前から支えてきた。蘭花のことは憎からず思っているようだが……。
「や、さわらないで……!」
「蘭花、俺たちは夫婦なんだ。なぜ恥ずかしがる?」
「あ、だって……」
本当は夫婦ではないからだ。蘭花は夫になる男が他にいる。
それなのに、楚興に好きにさせている。誰か他の人間に知られたら、大問題になってしまうだろう。
(今だったら、まだ間に合う)
本当は記憶など失っていないのだ。
ほんの少しでも長く楚興と一緒にいたいから、ついた嘘だった。
(まさか、こんなことになるなんて)
ためらっていると、内股を撫でていた楚興の手が下穿きを引きずりおろし、脚のつけねにもぐる。
無骨な手が恥丘を何度も撫でて、大切なところを守るには頼りない叢を指ですく。
それだけで身震いするほど恥ずかしいのに、楚興の手はさらに進軍した。
「ひ……ひあ……!」
信じがたいことに、彼の指は蘭花のもっとも秘すべき部分に触れていた。
洗うときだけ触れる谷間を指が滑っていく。
「は……はぁ……あああ……」
衝撃だったのは、他人が見たりさわったりすることのないところに触れられたからだけではなかった。
指が往復するたびに、快感が生まれるからだ。やわらかな肉の花びらをくすぐられると、背をそらすほどの快美な波に襲われた。
「あ……ああ……だめ……やめて……」
もはや否定しようもなかった。楚興に触れられて、気持ちよくなっている。
これ以上、愛撫が深まることに恐怖を覚えはじめていた。
(どうしよう、こんなはずじゃなかったのに……)
楚興と共に過ごす時間を稼ぐために記憶喪失を装ったけれど、こんなふうに淫らに触れられることなど、望んではいなかった。
理性ではそう考えているのに、身体は勝手に快感を覚えはじめている。
現に脚のつけねをこすりたてられて、淫らな悦びに溺れつつある。
「やぁ、いや……や、やめ……」
下肢の谷間を無遠慮に指が這う。
蜘蛛が脚を動かすように、楚興の指は蘭花の秘処に絶え間なく触れ、そのたびに知らず腰を揺らしてしまうような快感が生まれていた。
「……おまえは俺にさわられるのが本当に好きだな。ここから蜜がこぼれてる」
下肢の中心に指先が押し当てられる。
月に一度、血を滴らせるところだと直感した。
指先を押しつけられると、平衡を崩しそうな危うさを感じる。
そこを集中的にこすられると、確かに指が吸いついているような音がした。
ちゅくちゅくと秘めやかに淫らな水音がする。
「あ……ああ……や……」
触れられていると、不安と愉悦が交互に襲ってきた。
自分でさえろくに見たことのない部分だ。
そこに彼の指が走る。我がもののように愛撫している。
「あ……ああん……ああ……」
楚興は右指を秘処の間に滑らせながら、左手で剥きだしにされたままの乳房を?んだ。
やんわりと性感を高めるように揉まれて、蘭花は重い髪を振り乱した。
「あ……あん……だめ……だめ……!」
ふっくらとやわらかい胸をやわやわと揉まれながら秘処をくすぐられるのは、たまらなく気持ちがよかった。
次第に脚のつけねがゆるみ、全身が虚脱する。
「あ……ああ……あ……はぁ……」
喉の奥からもれる声が甘えるような響きを伴っていた。
楚興が乳頭を軽くねじりながら、耳に低い声を吹き込む。
「どうやらどこも痛めていなかったみたいだぞ。本当によかった」
「あ、ああ……や、やめて、そ──」
名を呼びかけて懸命に呑み込んだ。蘭花は記憶を失っているのだ。知らないはずの名を口にはできない。
そのことに気づくと、背にひやりと冷たい汗が伝う。
(……わたしの記憶が戻ったと告げたら、楚興はどうするのだろう)
淫らな戯れを仕かけているのは、無事を確認するためだったと言い張るのだろうか。
なぜ自分を夫だと言ったのか、性感を高めるように身体に触れてくるのか、わからない。
(楚興はわたしをどう思っているの?)
たずねなければいけない。まさか、記憶を失ったから、好きに身体をもてあそんでいるのではないはずだ。
(楚興はそんなひどい人じゃない)
いつも蘭花を守ってくれるのに、河から救ってさえくれたのに、おもちゃにするはずがない。
愛撫を続ける彼を霞んだ目で見上げて、震える唇を開いた。
「あ、あの──」
口にしかけた問いが喉の奥に溶けていく。
秘処を一定の律動で愛撫していた指が、だしぬけに動きを変えたのだ。
するすると滑った指が肉の花びらのつけねに触れる。
そこに指先がきゅっきゅっと押しつけられると、目のくらむような快感が生まれた。