公爵は愛を描く
- 著者:
- 藍生有
- イラスト:
- アオイ冬子
- 発売日:
- 2016年06月03日
- 定価:
- 660円(10%税込)
君を絵の中に閉じ込めたい。
これまで三度も縁談相手から肖像画を突き返されて、落ち込むジェンマ。幸せを呼ぶと評判の肖像画家を訪ねるが、その画家は幼馴染のアンドレアだった。女の子だと思っていた彼の成長した姿に驚きつつも、再会を喜ぶジェンマ。だがアンドレアは「女の子だと思っているなら、こんなことをしてもいい?」と突然淫らなキスを仕掛けてきて――。「ずっと、こうしたかった」と囁く彼の熱い眼差しに囚われたジェンマは、半ば強引に純潔を奪われてしまうのだが……。
ジェンマ
伯爵令嬢。これまで三回も縁談を断られて落ち込みぎみ。とある事情からアンドレアの屋敷に留まることになるが……。
アンドレア
公爵家次男で画家。昔は身体が弱く、女の子の格好をしていた。嵐の夜、ジェンマの寝室にやってきて――。
「ここは、濡れていい場所だよ」
開いたままのジェンマの脚を、アンドレアが撫でた。
「気持ちよくて、感じると、濡れる。そうしないと、僕を愛せないだろう?」
アンドレアの言っている意味が、よく分からなかった。彼はジェンマの頬をそっと撫でてキスをすると、寝台に膝立ちになる。
彼がゆっくりと夜着を脱ぎ捨てるのを、ジェンマは呆然と見ていた。闇に慣れてしまった目には、彼の肌が放つなめらかな光沢も、引き締まった体もよく分かってしまう。
妹のような存在だった幼馴染は、こんなにも美しい、男性になっていた。瞬きを忘れていると、アンドレアが口角を引きあげて笑った。
「どうしたの、そんな顔をして」
アンドレアが近づいてくる。寝具に隠れていた下腹部より下が目に入りそうで、ジェンマは顔を伏せた。
その先にあるものを、自分はまだ、知ってはいけないはずだ。
「ジェンマ」
大切なものであるかのように優しく名前を呼ばれ、頬を包まれた。アンドレアの緑の瞳は熱を帯びてきらきらと輝いている。
「好きだよ」
アンドレアの唇が紡いだ、好きという言葉はあまりにも柔らかかった。疑うことが許されないような繊細な響きに包まれる。
──好き。アンドレアは、私が好き。
目の前がぐるぐると回る。ジェンマもアンドレアを好きだ。でもそれはきっと、彼とは違う種類だと思う。
だけどそれを今、うまく伝えられる術がない。ジェンマは自分を組み敷くアンドレアを見上げた。
「君のすべてが欲しい」
額にそっと唇が落とされる。それから眦にも。そうされてやっと、ジェンマは自分が涙を流しているのだと気がついた。
アンドレアの手が膝裏にかかる。大きく広げられた脚の間に彼は膝をついた。
「……アンドレア、……私は」
自分が何を言いたいのかも分からないまま口を開いた。アンドレアは目を細め、なに、と優しく問いながら、ジェンマの太ももに手をかけた。
「あっ」
脚を更に広げられる。濡れた秘所をめくるようにそっと撫でられてから、熱くて硬いものが押し当てられた。その正体が何かを考えるより先に、それはジェンマの中へ、入ってくる。
「っ……!」
体を裂くような痛みに貫かれた。狭いところをこじ開けられ、悲鳴にもならない声が迸る。
「……いたっ……いや、……いたいっ……」
押し込められる熱さと大きさに、ジェンマは涙を零した。焼けたような熱さに耐えられない。
「や、め……、っ……うっ……」
「うん、……ごめん、もう少し、力を抜いて。君を傷つけたくない」
宥めるように太ももや膝を撫でながら、アンドレアが入ってくる。彼の、……体の一部が。
こんなことは夫以外としてはいけないと、ジェンマは知識としてちゃんと知っていた。だから拒まなければと頭では分かっていて、それなのに指の一本すら自分の意思で動かせずにいる。
「あ、……やっ……」
閉じようとする脚は広げたまま固定され、恥ずかしいところも全部、アンドレアに見せる形になった。
「はぁ、……きつい、な……すごい、気持ちいい……」
アンドレアは息を荒くしながら、寝台に手をついた。唇に息がかかる。そのままどちらともなく、唇を合わせていた。
「ん、ふっ……」
柔らかな感触が気持ちいい。痛みから逃げるように、ジェンマはキスに夢中になった。アンドレアの舌は歯の形をゆっくりとなぞってから、頬の裏側へと伸びてくる。行き場に迷っていた舌に吸いつかれ、軽く歯を立てられた。
ぞくぞくとした痺れが背中に走る。うまく呼吸ができなくて、息が上がった。何も考えられないほど口づけに酔っていたジェンマの腰に、アンドレアの腕が回る。
「……あ、っ……」
何かを突き破るような衝撃に、ジェンマはのけぞった。自分でも知らなかった深いところを開かれて、息が止まる。