主人の愛執
- 著者:
- 富樫聖夜
- イラスト:
- yos
- 発売日:
- 2016年04月05日
- 定価:
- 660円(10%税込)
邪魔者はすべて排除する。
女執事のティエラは、若くして当主となったヴァレオを支え、仕えることを生きがいとしていた。幼い頃から一緒に育ち、姉弟のように仲が良い二人。だがある日、「ヴァレオは愛人を執事にしている」と不名誉な噂を流されてしまう。ヴァレオと引き離されることを恐れた彼女は、噂を打ち消すために、父に勧められた縁談を受けることに。だがそれを知ったヴァレオは豹変し――!? 彼はティエラの理性と純潔を強引に奪い、快楽に沈めようとするのだが……。
ティエラ
女性でありながら執事を務める。ヴァレオのことは尊敬する主であり、守るべき弟のように思っていたが……。
ヴァレオ
若き伯爵。周囲から眉をひそめられてもティエラを執事として傍に置いている。
「んぁ……!」
腰を跳ね上げさせながら、ティエラはヴァレオの口に中に喘ぎ声を漏らす。胎内の奥がキュンと収縮し、甘い痛みが手足にまで波のように広がっていく。とぷんと奥から蜜が溢れてきて、ヴァレオの手とシーツを濡らした。
──これは、何?
自分の反応が怖くなり、じわりと涙が浮かぶ。
反応せずにはいられなかった場所に再びヴァレオの指が触れた。それは一度で終わらずに、何度も繰り返される。
「ん、んく、んんっ、ふぁぁ、ん」
じゅぶじゅぶと水音を立てながら指で執拗に一点を擦りあげられ、そのたびにまるで陸に揚げられた魚のようにティエラの身体が波打った。
やがて、何かがどんどん内側からせりあがって来るのを感じてティエラは怯えた。けれど、容赦のない指の動きに、心とは裏腹に身体はどんどん高められていく。
「んん、んんっ」
目の前がチカチカし、急速に膨れ上がった何かがティエラの中で一気に弾けた。
「んんっ──!」
ヴァレオの口の中に甘い悲鳴を放ち、背中を反らしながらティエラは絶頂に達した。ビクビクと華奢な身体が小刻みに震える。膣壁が蠢き、呑み込んだままの指を締めつける。その感触を楽しみながらヴァレオは顔をあげて、はぁはぁと荒い息を吐くティエラを見下ろした。
全身をほんのり赤く染めて、しっとりとしてきたティエラの肌からは「女」の香りが匂い立つようだった。ヴァレオのために自分を厳しく律し、執事に徹してきたティエラが初めて女の性に屈した証だ。
「ティエラ……」
その香りに煽られたヴァレオは、顔を寄せてティエラの頬に軽いキスをしたあと、蜜壷に差し込んだ指をそっと引き抜く。ちゃぽんと濡れた音を立てながら抜かれていくその感触に、ティエラはぶるっと震えた。
安堵の息をついたティエラは、ふとヴァレオが自分の膝に引っかかるように残っていたズボンとドロワーズを引き下ろそうとしていることに気づく。
ぼうっとしていた頭が急に鮮明になった。
──だめだわ。このままでは……!
ティエラは処女だが、一般的な知識として男女の交わりがこれで終わりではないことを知っていた。でもこれ以上の行為をヴァレオにさせてはならない。使用人に手を出したなどと広まれば、ヴァレオの評判は著しく落ちてしまう。
とにかく寝室を離れなければ。ティエラの姿が見えなくなれば、ヴァレオも少しは冷静になっていつもの彼に戻ってくれるに違いない。
力の入らない身体に鞭打って寝返りをうち、四つんばいになると、ティエラはベッドの上を這い、ヴァレオのいる反対の方から降りようとした。ところがベッドの端にたどり着く寸前、ティエラの逃亡に気づいたヴァレオはすかさず捕まえ、のしかかるように彼女の動きを封じてしまう。
「あっ……」
「だめだよ、ティエラ。逃がすと思うかい?」
うつぶせのティエラを自分の体重でベッドに押さえ込みながら、ヴァレオはやれやれという声を出す。
「だめ、だめです!」
必死になってティエラは首を振った。そんなティエラのむき出しになった背中に手を這わせながらヴァレオはクスッと笑う。
「何がだめなの? ティエラの身体だってこんなに僕に抱かれたがっているのに」
敏感な背中を撫でられ、ゾクゾクと背筋を震わせながらティエラは否定する。
「そんな、ことはありません。私は……」
「ああ、ちょうどいいものがある。ほら、見てごらん、ティエラ」
ヴァレオは何かを見つけて突然そう言い出すと、後ろからティエラの顎をくいっと持ち上げて、ある場所を示した。
「ほら、ご覧よ、ティエラ。今の自分をその目でしっかりと見るがいい」
そう言われて目を向けたティエラは息を呑む。
ベッド脇の壁には備えつけの大きな姿見があった。そしてそこに、うつぶせのままヴァレオに半ばのしかかられている自分の姿が映っていたのだ。