王太子の情火
- 著者:
- 奥山鏡
- イラスト:
- 緒花
- 発売日:
- 2016年02月03日
- 定価:
- 660円(10%税込)
私の欲望に灼かれるといい。
清廉潔白と評判の王太子ルドルフ。だがエヴァリーンは、幼いころから彼のことが怖くてたまらなかった。向けられる眼差しの奥に潜む異常さを感じとっていたからだ。やがて、軍人ヒューゴとの婚約が決まったエヴァリーン。誰もに祝福され、正しい恋をしていると幸せを感じていた彼女だが、婚約パーティの日、ルドルフに無理やり純潔を奪われてしまう。その後エヴァリーンは、彼の長年にわたる自分への執着心を知り――!?
エヴァリーン
男爵令嬢。淑女の鑑と噂されている。軍人ヒューゴとの婚約が決まるが……。
ルドルフ
品行方正で、国民からの人気も高い王太子。だがエヴァリーンに向ける眼差しはどこか不穏で……。
「きゃあっ」
熱く、雄々しい手触りに、エヴァリーンは竦み上がる。そこをやわらかく握らされると、ドクドクと脈動する男の劣情が感じられた。
「行為が進んだら、正気ではいられまい。よく覚えておけ。これが、あなたの花を散らすものだ」
「いやあっ」
ルドルフのそれを振り払って、自分の胸の前で手を握り込んだ。
ルドルフを振り払った時に、彼の腕を引っかいてしまったらしい。ルドルフが乾いた笑みを漏らし、血もにじんでいない掠り傷をこれ見よがしに舐めた。
「そうか、私の汚らわしいものには、触れたくもないか」
それは少し違うと思った。
生々しいルドルフの欲望がもたらしたのは恐怖だ。嫌悪とか、羞恥とか、そういったものではなくて、頭の中が壊れそうなくらい恐ろしかった。
「あ、あぁ……いや……もう……やめて……」
「男がこうなったら、止まるものではない。あらがいの声は、欲情の炎に油を注ぐようなものだ。諦めろ、かわいいエヴァリーン」
エヴァリーンの腰を撫で下ろした手が、レースの下穿きを引き下ろしていった。
抵抗しようともがいた手は、幾度かルドルフの腕を引っかいたが、シーツの上に押しつけられた。
「きゃ……っ」
膝をつかまれ、ゆっくりと脚を開かれる感覚に、エヴァリーンは息が詰まるようだった。強ばった身体はうまく動かない。膝を閉じようとするけれど、ルドルフの手に力が込められ、エヴァリーンはさらに大きく脚を開かされた。
「うぅっ」
「あなたのここは、髪と同じ色をしているのだな。美しい金色だ」
内腿の線を撫で上げたルドルフは、やわらかな茂みをしゃりしゃりと指先で擦った。
あられもない場所を見られ、ルドルフの指で弄ばれている。恐怖と羞恥がない交ぜになって、エヴァリーンは小刻みに身体を震わせた。
そして、慎ましく閉じた花びらの割れ目に、灼けるような塊が押しつけられた。それはみっちりとした重量があり、一刻でも早くエヴァリーンの花を犯したいと、ドクドクと狂おしいほどの脈動を繰り返していた。
「やぁ……」
「私がこうなったのは、あなたのせいだ。あなたは私の愛撫に溺れ、淫らに喘ぎ、私の情欲に火を灯した。あなたの柔肌で鎮めてもらうよりほかはない」
──私のせい?
私が淫らな女だから、高潔な王太子が変貌したの……?
婚約者以外の男に処女を散らされるのは、自分の行いが悪かったのだと思えてくる。
ルドルフは大国メリクシアの陸海両軍の元帥でもある。軍の最高権力者として国中の兵士を統率し、優れた手腕を発揮しているのだ。
ルドルフの言葉には不思議な説得力があった。「あなたが淫らなせいだ」という、言いかがりのような理由にも、エヴァリーンは心を絡め取られてしまい、正常な判断ができなくなる。
「ひどく痛むだろうが、慣らさずに挿入させてもらう。私があなたを最初に貫いた男なのだと、あなたの魂に刻み込むためだ」
片脚を大胆に抱えられて、脚を閉じようにもできない不安な感覚の中を、滾り上がる熱塊がゆっくりと沈んでいった。
しかし、エヴァリーンの花はかたく閉じている。入口の襞をきゅうっと収縮させ、灼けるような異物の侵入を懸命に拒んだ。
「つぅ……ああっ」
「力を抜け、エヴァリーン。あなたが辛くなるだけだ」