強面騎士は心配性
- 著者:
- 八巻にのは
- イラスト:
- DUO BRAND.
- 発売日:
- 2015年12月27日
- 定価:
- 682円(10%税込)
頼む、お前を護らせてくれ!!
運悪く殺人現場に遭遇した酒場の娘ハイネ。危ういところを救ってくれたのは、店の常連客で元騎士のカイルだった。その容貌は人が避けて歩くほどに凶悪。だが彼の優しさを知るハイネはずっと彼を慕っていた。犯人が捕まるまで彼に護衛されることになったハイネだが、事件の恐怖から度々パニックに陥ってしまう。そんな彼女を優しく抱きしめるカイル。その触れ合いは二人の熱を高めてゆき、激しい一夜を過ごすことになるのだが――!?
ハイネ
酒場の娘。カイルのことを密かに慕っているが、自分の容姿がこの国では娼婦と思われるのを知っていて口に出せない。
カイル
国一番の騎士と呼ばれた男。任務中に重傷を負い騎士団を去る。失意のあまり酒に溺れていたところハイネに救われる。
「もう、我慢できそうにない」
熱を帯びた言葉と吐息に続き、カイルの唇がハイネの唇に重なり、その奥へと舌を進ませる。
キスをしたのは初めてで、舌を使うことを知識でしか知らなかったハイネにとってカイルに与えられるそれはあまりに深く、激しかった。
「……ふぅ、あ……」
いつ呼吸すればいいかわからず、空気を求めようと口を開けようとしても、カイルの大きな舌がそれを素早く塞いでしまう。
思わず逃げようとするハイネの舌をとらえ、掬い上げるようにして絡みつかれると、息苦しさでぼんやりし出した頭が更にとろけてしまう。
「まだ口づけしかしていないのに、ずいぶん乱れるな」
唇を吸われ、もうろうとしていたハイネの頬にカイルの吐息がかかる。
ようやくキスが落ち着き呼吸ができるようになったが、今度は別の意味で息が詰まった。
「そこ……は……」
いつの間にか、カイルの大きな手のひらがハイネの胸に触れていたのだ。
人より大きな胸は肌や髪の色と相まってハイネにとっては悩みの種だったが、カイルの手に包まれているそれは不思議といつもより小さく見えた。
それだけ、カイルの手は大きくてたくましいのだ。
「痛くはないか?」
大きくて強そうな手のひらは、少し力を入れればハイネの胸をつぶすのも簡単そうなのに、胸に添える彼の指はひどく優しい。
「大丈夫です」
「俺の手は人より硬いから、痛いようなら言え」
確かにハイネの頂をこする指先も、膨らみを柔らかく揉みしだく手のひらも、柔らかさはなく無骨だった。
骨張った手のあちこちにはタコがあり肌触りは決してよくはないが、それが胸をこするとハイネは何とも言えない切ない気分になる。
むしろもっと強く触って欲しくて、ハイネは無意識にカイルの手に自分の手を重ねる。
「手加減は、必要なさそうだな」
小さな笑みと共に、カイルはハイネの体を軽々と持ち上げる。
そのまま視界がぐるりと回ったかと思うと、ハイネはベッドの上にあぐらをかいたカイルの胸に背をくっつけた状態でたくましい腕の中にすっぽりと収まっていた。
彼の体がいかに大きいかは知っていたはずなのに、自分を抱き込んでもまだ余裕がある肩幅と厚い胸板は、見るのと触れるのとではまるで違った。
あまりの圧迫感にハイネはカイルという檻に閉じこめられた囚人のような気分になったが、ハイネはそれを恐ろしいとは思わなかった。
むしろ嬉しいと思っている自分に戸惑っていると、カイルの大きな手のひらがもう一度ハイネの胸へと戻ってきた。
そのまま先ほどより強く胸を揉まれると、なぜか腰の奥が切なく疼いた。
触れられた胸が疼くのはわかるが、どうして違う場所が反応するのかと、この手の経験がないハイネは疑問に思う。
「……あっ、ンっ…」
わからないのは、無自覚に零れてしまうこの声もだ。
カイルの指が胸の頂をこするたび、吐息と共に小さな声が漏れてしまう。
それが恥ずかしくて口元を右手で押さえると、カイルが苦笑する。
「声は我慢するな。手は、ここだ」