ソーニャ文庫

歪んだ愛は美しい。

獣王様のメインディッシュ
  • yondemill

獣王様のメインディッシュ

著者:
山野辺りり
イラスト:
shimura
発売日:
2015年11月01日
定価:
682円(10%税込)
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お前の味をもっと教えろ。

人間の王女ヴィオレットは、和平のため、獣人の王のもとへ嫁ぐことに。だが獣王デュミナスは、ヴィオレットに会うなり「匂いがきつい」と顔を背け、会話すら嫌がる有り様だった。憤慨しながらも傷つくヴィオレット。仮面夫婦になるのかと思いきや、彼は初夜からまさに獣のように激しく求めてきて……!? 常に冷静であることを美徳とするヴィオレットと口下手なデュミナスは、常識の違いも災いしてすれ違ってばかりなのだが――。

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登場人物紹介

ヴィオレット

ヴィオレット

人間の国の王女。常に冷静であることを美徳としているため、他人からは冷たい人だと誤解されがち。

デュミナス

デュミナス

獣人の王。口下手のせいで、ヴィオレットには色々と誤解されているようで……。

お試し読み

「ああ……匂いが強くなってきた……くそっ、堪らない」
「ん、くぅ……ッ」
 ヴィオレットの項に鼻を埋めたデュミナスは、大きく息を吸い込んだ。いつもこうだ。彼はヴィオレットを臭いと罵りつつ、匂いを吸い込むという謎の行為を繰り返す。嫌な臭いなのに、何故こんな真似をするのか分からない。気に入らないならば遠ざけておけばいいのに常に傍にいる。勿論、必然性があったからだが。
 鼻先を擦りつけるようにデュミナスはヴィオレットの肌を愛撫して、時折舌も使って味わってくる。ヴィオレットの胸を嬲る手には容赦がなく、奥底に眠っていた感覚を瞬く間に呼び覚まされた。
「は……お前は、柔らかいな」
 首筋へ軽く立てられた歯は今度は痛みをもたらさなかったけれども、先ほどの痛苦を覚えているヴィオレットは怯んだ。それをどう解釈したのか、デュミナスが喉奥で嗤う。
「そんなに俺が恐ろしいか」
「違……っ、ぁ、あッ」
 胸の飾りを強めに摘ままれ、ヴィオレットは思わずのけぞった。自分で触れてもなんともないのに、デュミナスの指によってどんどん体温があげられてゆく。引き摺りだされる官能の吐き出し口が分からなくて、混乱してしまった。
 デュミナスのもう片方の手が、意味深にヴィオレットの脇腹や臍を撫で下へおりる。それと共に熱の塊が下腹部に溜まる気がした。彼が生み出す快楽に翻弄され、ひたすら耐えることしかできなかったヴィオレットは、デュミナスの手がドロワーズにかかったことさえも意識の外にあった。引き摺りおろされて初めて、果実のごとき真白な双丘が、冷たい外気に晒されて慄く。
「う、嘘……っ」
 真後ろにはデュミナスが陣取っているのだから、ヴィオレットの秘められた園は丸見えになっているだろう。感じるはずのない視線の熱さに、身体中から火を噴く思いがした。
 獣のような姿勢を強要され、半裸の状態。夜着はもう役目をなしておらず、辛うじて引っかかっているだけ。ドロワーズは、膝辺りに丸まっているのみだった。いっそ一糸纏わぬ姿の方がマシというほどの淫猥さだ。
「慎ましいな。まだここには誰も迎え入れたことがないのか?」
「あるわけないでしょう……!」
 デュミナスの吐息が、ヴィオレットのぴったりと閉じられた場所へ吹きかかった。手足が震えて脱力してしまいそうになるのに、腰を捕らえられているために崩れ落ちることもできやしない。それどころか、ぐっと後ろに引き寄せられて、更に臀部を突き出すような姿勢をとらされた。
「こ、こんな……!」
 嫌がらせにしても酷すぎる。ヴィオレットは眼前のリネンを握り締めて強く目を閉じた。
「いくら私が気に入らないといっても、これはあんまりではありませんこと!?」
 ありったけの気迫を込めて、腹から声を出す。デュミナスから逃れることは、もう無理だと分かっている。無駄に暴れて怪我を負うよりも、できることをした方がいい。
「……それはお前の方だろう」
「え、や、ぁあッ!?」
 ぬるりと生温かく柔らかい舌が、ありえない場所を舐めていた。衝撃で上へ逃れようとしたヴィオレットの身体は、逞しい腕に引き戻される。そして、咎めるように敏感な芽を指で嬲られた。
「あ、ぁあ……あっ」
 暴力的な快楽が背筋を駆け上がっていった。神経の集中したようなその場所からは、抗いがたい悦が次々に生み出される。しかもそれらはどんどん膨れ上がってゆき、ヴィオレットを呑み込んだ。
「やめ、それは……いや、駄目ぇ……っ!!」
 じりじりと何かが水位をあげてきて、溢れ出しそうになる。もしもそれが零れてしまえば、きっとこれまでのヴィオレットではいられない。そんな恐怖から、髪を振り乱して制止を訴えるけれども、デュミナスはますます執拗に淫芽を弄った。次第に、くちゅくちゅと濡れた音が奏でられる。
「この音、聞こえるか? お前が俺に感じて喜んでいる証拠だ」
「か、感じる……?」
 閨では夫になる相手に、全てお任せしなさいと教わってきた。貴女はただ仰向けに寝そべっていればいいと。夫が触れてくれば拒んではならず、可能な限り声は慎むようにとも。
 ───でもこんなことされるなんて、誰も教えてくれなかったじゃないの!
 国には、獣人の性行為を知る者など一人もいなかった。だから、きっと人間とそう変わらないのだろうと───信じ込もうとしていたのだ。
 ───私はいったいどうすればいいの? 正解が分からないわ……!
 旦那様に従えと言うならば、ここは耐えねばならないのだろうか? でもいつまで? これでは子づくりなど到底できない。弄られ、辱められて終わっては、丸損ではないか。
「滴ってきた……」
「ひ、んっ」
 耳を塞ぎたくなるような水音が、己の下肢から生まれているという現実に死んでしまいたいくらいの羞恥が募った。ヴィオレットの太腿を伝い落ちてゆく滴の感触も、誰か嘘だと言って欲しい。何より、デュミナスの動きにあわせてビクビクと震えてしまう身体は、きっと何かの間違いだ。自分がこんなにも淫らであったなど信じられなくて、無駄と知りつつヴィオレットは手足を動かした。
「暴れるなと言っただろう」
 それが彼の怒りに火をつけたのか、それまでは入口付近を撫でるに留まっていた指先が、ぬかるみの中へ僅かに沈められた。やや性急な動きで、何ものをも受け入れたことのない壁を広げられる。
「ぃ、ぁあッ」
「……痛いか?」
 異物感は酷いが、痛みはなかった。それよりも、肌を炙るようなデュミナスの吐息の熱さにのぼせそうになってしまう。項に、肩に、背中に口づけられ、所々にチリッとした刺激を感じた。?まれたのとはまた違う瞬間的な苦痛は、敏感な蕾から抉り出される快楽に押し流され、むしろ絶妙なスパイスになってゆく。
「……お前の中は熱いな……ああ、早く奥まで味わいたい」
 ?きだされた蜜がとめどなく滴り落ちて、敷布に濃い染みを広げていた。もはや肘を立てていられなくなったヴィオレットは上半身だけぺたりと俯せ、リネンの海に顔を埋める。いくら口を閉じても、気を逸らそうとしても、ひっきりなしに甘く媚びる音が喉から漏れてしまった。
「ぁ、あ……、ふ、あっ」
 粘着質な水音が大きくなる。恥ずかしい、と思えば思うほどにそれは主張を増した。浅い部分を出入りしていたデュミナスの指は、ゆっくり奥へと押し込まれる。引き攣れる感覚にも次第に慣れ、そうなればヴィオレットの意識は転がされ続ける淫らな芽に向かってしまった。
「っ、あぁ……ッ、いや……!」
「嘘を吐け……こんなに身体は喜んでいるくせに」
「はっ……、あ、ああぁっ」
 デュミナスの尖らせた舌が、潤いを湛えた蜜壺の中へと侵入した。ぐるりと内側を舐められて、ギリギリの縁に留まっていたヴィオレットの意識は簡単に弾け飛ぶ。全身の毛穴が一気に開き、勝手に突っ張った身体は直後に弛緩した。
「ぁ……ぁ……」
 凄まじい疲労感がのしかかり、ヴィオレットは虚脱していた。何が何だか分からないけれども、酸欠状態かのように激しく喘ぎ、頭はボンヤリと霞んでいる。心臓の音がいやにうるさく打ち鳴らされているのが、不思議でたまらなかった。
「……いやらしいな、雄を誘う……嫌な匂いだ」
 もう抗う気力もないまま、ヴィオレットは肩越しに背後を振り返った。本調子であれば、絶対に反撃していたはずだ。でも、今は分が悪すぎる。
 グズグズに蕩けてしまった場所を見られ、触れられ、舐められて、気持ちがいいと感じてしまっている。心のどこかでもっとと望んでいる。そんな欲が瞳に宿っていたのだろうか。眼があった瞬間、デュミナスは舌なめずりをした。彼の赤い舌が官能的に口の端を滑るのを、呼吸も忘れてヴィオレットは見入り、自身の中にも火を灯される。
「……力を抜け」
 硬いものが、ヴィオレットの脚の付け根を前後した。膨れて顔を覗かせた蕾を掠め、飽和したと思っていた快楽が再びその濃度をあげてゆく。
「や、それ……ぁ、あッ」
 捏ね回され引っかかれ、また多量の蜜が奥から吐き出された。ひくついているのがヴィオレット自身にも分かって、どうしようもなく涙が滲んできてしまう。それなのに、快感が迸り、無意識のまま腰をうごめかしていた。
「いい子だ。そのまま大人しくしていろ」
「ふ、ぐ……!?」
 指などとは比べものにならない質量の何かが、隘路を引き裂いて侵入してきた。もしかして拳を入れられているのだろうかと疑うほどに限界まで広げられた入口から、軋むような痛みが伝わってくる。萎えた腕を叱咤して、ヴィオレットはその責め苦から逃れようともがいた。

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