匣庭の恋人
- 著者:
- 斉河燈
- イラスト:
- 岩崎陽子
- 発売日:
- 2015年10月03日
- 定価:
- 660円(10%税込)
ずっと君に触れたかった。
十八年ごとに島を襲う謎の病。それは、かつて島で恋人を殺された男の呪いと言われている。織江は、その呪いを鎮めるための生贄として育てられた。だが儀式の直前、祭司の家の長男・君彦によって連れ去られる。彼は、次から次へと女に手を出す性質ゆえに、祭司の資格を剥奪されたと噂されていた。織江はその彼に小屋に閉じ込められ、乱暴に純潔を奪われるのだが……。「ぼくを憎め」と言いながら、切なそうに何度も身体を重ねてくる彼の真意は?
織江(おりえ)
島の呪いを鎮めるための生贄として育てられた。島に呪いをかけた男と恋人同士だった前世の記憶を持つというが……。
君彦(きみひこ)
祭司の家の長男。次の儀式の祭司となるはずだったが、とある理由でその資格を剥奪されている。
「イヤっ、もう、もう、これ以上は、本当に」
秘所に何本もの針をいっぺんに突き刺されているみたいだ。指が浅く出入りするだけで激しい痛みが走る。そして痛み以上に、そこを暴かれたら『箱』を抱けなくなるという恐怖が織江の頭を埋めつくした。
「わ……わたし、っ……マレビト様を、あ、愛してるの。彼だけ、なのっ……」
彼のために生まれてきたのだ。彼の怒りを鎮めるために。きっと、今度こそふたりで穏やかな眠りにつくために。ほかの誰かに散らされるために守ってきた貞操じゃない。
「その言葉は逆効果だよ、織江」
ぐっと指先が内へと進む。引き裂かれるような痛みが脚の付け根に走る。
「ヒッ……あ……あなたには、ほかにも、いくらだって代わりの女の子が……っ」
「喫茶店で一緒にいた彼女のこと? 彼女の処女は奪ってないよ。処女とわかれば、ぼくは手出ししない。大事に守るだけだ」
「ッ、どうして……わ、私だけに、こんな」
「ともに地獄へ堕ちたいのは、きみだけだからだ」
何を言われているのか、織江にはわからないしわかりたくもなかった。他の女の手を握っておきながら、ともに地獄へ堕ちたいだなんて。他の女の処女を守りながら、よりによって『箱』を抱かねばならない織江の処女を奪おうだなんて。
──こんな人にこれ以上好き勝手にされたくない。
しかし反撃の機会は与えられず、彼の指は根元まで織江の内側へと収められてしまう。
「……ふ……っ」
言いようのない異物感と、絶望感に視界が滲む。失格者の指に侵入を許してしまった。
まだこの身は清らかだろうか。それとももう、手遅れだろうか。たっぷりと溜まった涙をついに零すと、それを追うようにこめかみを君彦の舌が這った。
「憎みたいだけ憎めばいいよ」
涙の雫を舐め取られる。目尻まで丁寧に、ひとしずくも逃さないように。
「人は絶望を憎しみに転化することができる。この計画が完遂したとき、きみの中に残るのは憎しみだけ。ぼくはその日を、心待ちにしているんだ」
彼はやはり、うっすらと得体の知れない笑みを浮かべていた。
蜜道から指を抜かれると、次に押しつけられたのは重い雄の象徴だった。両手は頭上で縛られたまま、結び目も釘から離れない。脚も左右に開いた状態で?まれていて、ほとんど身動きなど不可能だ。無駄な足?きだとわかっていても、織江は全身をばたつかせた。無抵抗のまま君彦の行為を許すなどできそうになかった。
しかし彼は織江の懸命な抵抗すら可愛らしいというように、怒張した己で織江の秘所を撫でまわす。クチクチと蜜に絡ませて、わざとらしい音を立てながら。
「力まないほうが身のためだよ。きみの内側は、あまりにも狭いからね」
前へ後ろへとなすりつけられた欲の塊は、やがて隘路へと進路を定める。先端をぐっと穿たれて、織江はあまりの痛みに背を反らせた。