狂鬼の愛し子
- 著者:
- 宇奈月香
- イラスト:
- サマミヤアカザ
- 発売日:
- 2015年08月03日
- 定価:
- 682円(10%税込)
迎えにきたよ、俺の白菊。
長雨から都を救うため、生贄として捧げられることになった白菊は、「矢科の鬼」と呼ばれる恐ろしい山賊・莉汪に攫われてしまう。意識のない間に凌辱され、目を覚ました後も執拗に迫ってくる莉汪。「つかまえた」と、嬉しそうに笑いながら好意を押しつけ、当然のように身体を繋げてくる。その真意が掴めないまま、白菊は怒りと恐怖を覚えながらも少しずつ莉汪と言葉を交わすようになり……。やがて白菊は彼との過去を思い出すのだが――。
白菊(しらぎく)
稀代の占者である母に『都の守り人』と予言され、水神の生贄として捧げられることに。
莉汪(りおう)
『矢科の鬼』と恐れられる残酷な山賊。白菊を攫っていくが……。
「会いたかった」
目を閉じ、吐息交じりに囁いた。
腰骨辺りから生まれた嫌悪感が背筋を駆け上がる。握り込まれた手を振り払おうとするがびくともしない。
「ようやくだよ。この日をどれほど待ちわびたか」
近づいてきた唇に、白菊は顎を引いて嫌がった。すると莉汪は目を開け、「恥ずかしい?」と尋ねてくる。
陶然とした声音と恍惚の表情は、艶やかにその美貌を彩った。
ぞくり、と寒気がした。
常人では到底理解できない思考を持ち、我欲が赴くまま行動する。
これが矢科の鬼なのか。
青色の目に宿る歓喜に薄気味悪さを覚えた。
白菊を拉致し、こんな孤立無援な場所に隔離し犯した。白菊の体に子種をまき散らし、極上の微笑を湛えて「孕め」と嘯く。
──怖い。
目の前にいる男に底知れぬ恐怖を覚えた。それは、凌辱されていた時のような荒々しい恐怖ではなく、とこしえの冷気を孕んだ静かな畏怖。
莉汪には白菊が見えていない。青い目は美しいだけで、実際は何も映してはいないに違いない。
だが、果たしてそんな人間がいるだろうか。
体の奥底から震えがこみ上げてきた。鼓動が高鳴り体中の毛孔から嫌な汗が滲み出す。なのに、指先から体が冷えていった。
理屈ではなく、本能が莉汪に怯えている。
「離して……」
吐き出したか細い拒絶に、莉汪は妖艶な笑みを見せる。
「手に入れた」
腰に莉汪の腕が絡まり、抱きしめられる。
「可愛い白菊、俺の愛しい子」
「嫌……、嫌」
拳から手を離した莉汪の手が太腿を這う。指が秘部へ滑る。蜜口を探り、ぬるりと中へ潜りこんだ。
「──ぃッ」
「あぁ……、熱い」
抜き挿しするたびに水音が響く。指が二本に増えた。
「柔らかくて、少しざらざらしていて。この中で締めつけられる快感を想像するだけで……ほら、こんなに硬くなった」
耳元で莉汪の興奮した息遣いが聞こえる。無理矢理手を彼の股間へ宛てがわれた。
「嫌、嫌……っ」
夢中で首を振り莉汪を押しやる。腕の拘束から逃れようともがくほど、莉汪が興奮していくのを感じる。忙しなく莉汪が着物を捲った。取り出した昂りは隆々と天を向いている。
「嘘、やめ……て。嫌、もう嫌よ」
脇を抱えられ胡坐をかいた彼の膝の上に降ろされる。秘部に宛てがわれた熱い塊に喉がひくついた。