闇に飼われた王子
- 著者:
- 桜井さくや
- イラスト:
- 涼河マコト
- 発売日:
- 2015年07月03日
- 定価:
- 660円(10%税込)
君は、この暗闇を照らす光。
「今日も君が大好きだ!」幼い頃に一目惚れされて以来、王子カイルから何度も求愛されてきた子爵令嬢エマ。優しく朗らかな彼とゆっくり愛を育て、やがて心も体も結ばれる。だがその翌日から急に彼と会えなくなり、彼の放蕩三昧な噂まで耳にして……。1年ぶりに再会した彼は、享楽的で横暴――まるで別人のように変わってしまっていた。茫然自失のまま連れ込まれたカイルの自室でエマが見たものは、おぞましい真実だった──!?
エマ
心優しい子爵令嬢。カイルのことを愛し、支えたいと思っている。
カイル
温厚で明るい王子。エマに一目惚れし、何年も求愛し続けていた。
「あの、カイル。上手に出来ないかもしれないけど、私、頑張るから」
エマがそう答えると、カイルは顔を真っ赤にして抱き締めてきた。
「エマ、そんなことを気にしなくていいんだよ。私だって童貞なんだ。下手に決まっているじゃないか。だけど、今出来る最大限の努力を約束する! もし痛みが募っても、すぐに終わらせる自信があるんだ。恐らく君の中は、この世のものとは思えないほどの快感を私に与えて……」
「わ、分かったわ、分かったから!」
あまりに恥ずかしいことを言うので、エマは慌てて口を挟む。
カイルの興奮はかなりのもので、自分が何を言っているのか理解していないのかもしれなかった。
すると、彼は顔を赤くしたまま、おもむろにエマの背に手を回す。
たどたどしい手つきで後ろのボタンが一つ二つと外されて、徐々に肌がわになっていった。
──え? もう始まっているの?
そのことに妙な感心を覚えつつ、空気に晒された胸の頂に熱い唇で吸い付かれて思わず声を上げた。
「ん、やぅ」
その高い声に、エマはハッとして自分の口を押さえる。
恥ずかしいと思う気持ちと、声を出しては外に聞こえてしまうという懸念があったからだが、彼は口を押さえたエマの手を掴み取ってしまう。そして、うっとりした顔で初々しく色づいた乳首を甘噛みしてきた。
「あっ」
「かわいい声だ」
そう言って彼は目を潤ませ、ふぅ…と乳首に息を吹きかける。
ぴんと尖った先を彼の指で突かれ、その指ごとぱくりと頬張る様子に、エマは身悶えながら首を横に振った。
「や…、カイル、だめ。手を放して」
「どうして?」
「口、塞いでいないと誰かに聞かれてしまうわ」
「だめなのか?」
「というより、お兄様に知られたら」
「……ああそうか」
言わんとすることは、伝わったようだ。
彼は名残惜しげにエマの手を放して、再び胸の先端を舌先で転がしていった。
「あ、…ん」
そうしている間にも背中のボタンは全て外され、服が引きずり下ろされていく。
ところが、腰で結んだ紐が邪魔をしてうまく脱がせられないようだ。
カイルは紐の存在に気づかず、どこに原因があるのか分からなかったらしい。少し悩んだ末に服を全て脱がすことは諦め、スカートの中へいきなり指を潜り込ませてきた。
「あっ、うそ…っ」
「ああ、綺麗な肌だ。手に吸い付いて気持ちいい。それにすごく柔らかいな」
そんな感想を呟きながら、大きな手がふくらはぎから太股に向かって滑っていく。
エマはびっくりして足をばたつかせていた。服を全て脱がさずに、そんなところを一足飛びに触られるとは思っていなかったのだ。
けれど、その動きはとてもゆっくりで、やけにじれったく感じる。
手のひらと手の甲を交互に使って肌の感触を確かめているからだった。
「ん…っ」
エマは肩を震わせ、切ない息を漏らす。
ふくらはぎに口づけたカイルは、突き出した舌を肌に滑らせながら徐々に上へ向かい、ドロワーズと内股の隙間から指を差し込み、エマの反応を窺っているようだった。
こんなに淫らな目をするカイルは初めてだ。
ドキドキしてどう反応していいか分からずにいると、彼は太股を弄りながらエマの身体に伸し掛かり、かぶりつくように唇を重ねてきた。
「エマ、こうして口を塞いでいようか。そうすれば誰にも聞こえないし、唇越しに互いの反応を知ることが出来るよ」
「ふ、…あ、んんっ!?」
返事をしようとしたが、すぐにそれどころではなくなった。
下着越しに彼の指で敏感な場所を擦られたからだ。
大きな反応をしたことで、カイルは目を輝かせてその場所ばかりを擦ってくる。塞がれた唇からくぐもった声が漏れ、初めての感覚にエマの頭の中は真っ白になっていた。