みせもの淫戯
- 著者:
- 山野辺りり
- イラスト:
- 田中琳
- 発売日:
- 2015年05月02日
- 定価:
- 660円(10%税込)
貴女を絶対に、救ってみせる。
困窮する実家を救うため、子爵令嬢の小夜子は新興の商家・東雲家の長男と結婚することに。だが迎えた初夜、夫から「別の男に抱かれるのを見せろ」と命じられ、義弟となった甲斐に純潔を散らされてしまう。夫の目の前で甲斐に繰り返し身体を開かれ、淫らに弄ばれる日々。しかし閨以外での甲斐は、不器用ながらも小夜子をいたわってくれて……。夜とは違う甲斐の優しい一面を知るたびに、彼に惹かれる気持ちは大きくなっていき――。
小夜子(さよこ)
子爵家の一人娘。実家の財政が危うくなり、東雲家に嫁ぐのだが……。
甲斐(かい)
東雲家の次男で、伊織の異母弟。閨では小夜子をひどく抱くが、普段の彼は優しくて……。
伊織(いおり)
東雲家の長男。小夜子を妻として迎えるのだが……。
「お願いします、甲斐さん! こんなことはおかしい。貴方もそう思うでしょう? 今なら、まだ……!」
「……何もかも、手遅れですよ。もう、堪えきれない」
「ゃ、あっ」
大きな親指が、小夜子の膨れた敏感な芽を擦った。
新たな火種が小夜子の身体に灯される。くちゅくちゅと粘度のある水音が耳に届き、居た堪れない心地に包まれた。それは紛れもなく小夜子自身が吐き出した快楽の証だったから。
「貴女だって快さそうにしているじゃありませんか。……赤らんだ頬が愛らしいですよ」
「見ないで……!」
顔を見られる羞恥が蘇り、小夜子は眼を閉じ横を向いた。恥ずかしくて情けなくて胸のうちは荒れ狂っているのに、揺れてしまう腰を抑えられない。
「とても順応性が高いらしい。もうこんなに蜜を吐き出している。淫らな身体ですね……生娘とは思えないほど、男を誘う」
「そんなの、知らな……っ、や、ぁあ───……ッ」
円を描くように弄られていた花芽を摘ままれ、頭の中に白い閃光が走った。筋肉が一気に収縮し、糸が切れたように弛緩する。
「……ぁ、あ……」
「もう気をやったのか。小夜子はずいぶん敏感だな。これは教え込むのが楽しみだ。甲斐、もういいんじゃないか」
「まだ蕾は固く閉じたままですよ。もっとどろどろに解さないと」
急き立てる伊織をいなし、甲斐は小夜子の狭い道へと指を挿し入れた。何ものをも受け入れたことのないそこは、ひどく狭い。指一本だとて、男の中でも大柄な甲斐の指では異物感と苦痛を感じる。
「ぃッ……や、やめ……っ」
とめどなく流れる小夜子の涙を、甲斐は宥めるように舐めとった。それでも溢れ出す雫を何度も何度も啜りあげ、合間に頬や目蓋に口づける。それでも、決して唇だけには触れようとはしなかった。
「甲斐……っさん……!」
「何も考えなければいいんです。ただ与えられる感覚に身を委ねれば、楽になれる」
───すまない、と微かに聞こえた気がするのは空耳だろうか。ほとんど吐息だけを耳元で囁かれたから、きっと伊織には届かなかった。
「は……っ、ぁ、あ、あッ……」
浅い部分で、ゆっくり抜き差しされていた指が、次第に奥を目指して進んでゆく。小夜子の額に吹き出た汗で張り付いた髪を、甲斐は丁寧に横へ払った。
少しでも小夜子が反応を示した場所を執拗に撫でられ、開かれる。繰り返されるたびに少しずつ痛みとは違う何かが小夜子の中で沸き起こり、蕩け出し、甘い疼きが折り重なり溜まっていった。
「ああ……溢れてきた」
「甲斐の手首までびしょびしょじゃないか。本当に淫らで可愛い女だね。普段の取り澄ました高潔さが見る影もない」
もう、伊織の言葉は小夜子には理解できなかった。ただ、傷つけ貶められているのは分かる。
心を守るため、精神は閉ざされ、輪郭を失った。
「……綺麗ですよ」
小夜子のそんな心の奥底へ届いたのは、低く掠れた声だった。
夫となった彼とは違う、もっと男性的な堅い声。耳に心地良い音が胸を震わせる。
「全部、綺麗です」
「……」
驚いて見開いた小夜子の眼には、狂おしい熱を湛えた漆黒の瞳が映った。肉欲だけではなく、まるで小夜子自身を求めているかのような熱さに、一瞬呼吸も忘れる。
「ここも、それからこちらも、すべて美しすぎて……溺れそうになる」