子連れ貴族のお世話係
- 著者:
- chi-co
- イラスト:
- 蔀シャロン
- 発売日:
- 2014年12月03日
- 定価:
- 682円(10%税込)
夜は、君を独り占め。
貧しい家計を助けるため仕事を探していたリンは、迷子の男の子ルイスと出会う。彼の父親として現れたのは、大貴族のライアンだった! 「ルイスを捨てた妻の代わりに、母親役をしてほしい」とライアンに頼まれたリン。自分に懐いてくるルイスがかわいく、喜んで引き受けたものの、ライアンの要求は次第に大胆になってくる。「私の妻としてもふるまって」と、キスされ、抱き締められ、戸惑う隙にベッドに押し倒されて――。
リン
街で家族と暮らす少女。メイドとしてライアンの屋敷で働くことになる。
ライアン
大貴族アングラード家の当主。飄々としていて、リンを振り回す。妻を王に奪われたと噂されているが…。
ルイス
ライアンの息子。その出生には何やら秘密があるようで…?
「あ、あのっ、これって……」
リンは反射的に伸ばした手でライアンの手首を掴むと、反対の手で露わになった胸元を隠すように覆った。
「嫌?」
ライアンはリンから視線を外さないまま訊いてくる。
「だ、だって……っ」
「私たちは夫婦になるんじゃないか?」
「で、でもっ」
「大丈夫」
何が大丈夫なんだという言葉は重なったお互いの口の中に消えてしまう。リンが覚えたばかりのそれに夢中になってしまっている間に、服は肩から脱がされて下着が丸見えになっていた。
使用人の制服は支給されているが、下着はもちろん自前だ。清潔にしている自信はあったが、ライアンが今まで相手にしてきたような高貴な立場の女性のものとは雲泥の差がある。それをライアンの目の前に晒すというのはかなりの羞恥があるし、必死で保とうとしている自尊心が愚かにも崩壊していく音が聞こえそうだ。
笑われたりしたら、それこそ消え入りたい気分になってしまうと思ったが、ライアンはまるで大切なものを確かめるかのように優しく、丁寧な手つきでリンの肩を撫でると、胸元に顔を下ろして唇を押し当て、軽く吸われた。
「……んんっ」
ちりっと、甘い痛みが走る。そのうえ、休むことなく動く手がスカートの中にまで忍びこんできたことに混乱する。
「だ、旦那さまっ」
「こういう時は、名前を呼ぶものだよ」
「でもっ」
呼べるはずがない。そう叫びたいのに、今唇を開くと口を突いて出る声は甘くなりそうで、リンは必死に口を引き結んだまま首を左右に振って抵抗の意思を示した。
「頑固だ」
「……」
「でも、そこがいい」
「ひゃぁっ」
敏いライアンがリンの動揺に気づかないはずがない。だが、そのまま下着も強引に下ろされてしまい、乳房が露わになってしまった。
「綺麗な形だ」
「な、ちょっ」
「ここも、綺麗な淡い薔薇色だし、肌は絹のように滑らかで白い」
次々と囁かれる言葉はあまりにも恥ずかしいもので、全身が羞恥で赤く染まってしまいそうだ。いや、多分そうなっているだろうということは、初めて感じるほどの身体の熱さから察することができた。
子供のころならばまだしも、物心つくようになってから他人に肌を晒したことなどない。将来、結婚する相手としか身体を重ねることはないだろうと思っていたリンにとっては、今ライアンに素肌を見られること自体信じられないことだった。
大きな手で乳房の形を確かめるように揉まれ、その感触に背中が震えてしまったせいで胸を反らす体勢になってしまう。すると、ライアンは腰に手を回して、一気に服を脱がしてしまった。
「や……っ」
その手際の良さにただ呆然としている間に、ライアンの唇が首筋から胸もとへと滑り落ちてくる。時折強く吸われ、その後に宥めるように這わされる舌の感触を追っているうちに、下着の中に入り込んできた手に直接尻を揉まれてしまい、リンはたまらず声を上げていた。
「や……っ、んぁっ」
そんな声など出すつもりはなくて、自分の耳に飛び込んできた甘い響きに驚いてしまい、リンは咄嗟に唇を噛みしめる。だが、顔を上げたライアンに優しく微笑まれながらくちづけをされてしまうと、必死にかき集めた理性は簡単に崩壊してしまった。
「いいんだよ、リン。気持ちが良いのなら声を上げるのは何らおかしいことじゃない。君の感じている声は可愛らしくて、私はとても好きだよ」
「旦那……さ、ま」
「その呼び方はしかたないのかもな」
本当に、声を出してもいいのだろうか。そのことに考えが囚われたリンは、今ここでライアンを止めるという選択が頭の中から消えてしまった。
戸惑った眼差しを向けると、ライアンは何度も髪を撫でてくれ、リンの気持ちを落ち着かせるかのように顔中にくちづけをしていく。そうすると、不思議な安堵感が胸の中を支配していた。