獣―けだもの―
- 著者:
- 仁賀奈
- イラスト:
- 石田恵美
- 発売日:
- 2014年12月03日
- 定価:
- 704円(10%税込)
いい匂いだな、欲情する。
隣国の酒宴で襲われかけたエミーネ姫は、その国の皇子クライシュに助けられる。2メートル以上の長身に鋭い眼光、無骨ながらも優しい彼に惹かれるエミーネ。 だが直後、皇子は何人もの女性を侍らせたままエミーネに求婚してきた。そのぞんざいな態度に幻滅し「大国の妃は務まらない」と断るが、 まるで諦める様子のない皇子からの求婚は続き…。やがて、彼の罠にはまったエミーネは、無理やり純潔を奪われてしまうのだが――。
野獣な皇子の溺愛執着ラブ!!
エミーネ
ヤームル王国の深窓の姫君。その美しさは真珠に讃えられるほど。クライシュから突然求婚されるが…。
クライシュ
世界一の大国、アレヴ皇国の皇子。凶暴な獣や伝説の魔人よりも恐ろしい残虐性を持つと噂されているが…。
「だいぶほぐれてきたな」
熱く震える粘膜がクライシュの指先でくすぐられると、衝動的に甘い喘ぎを漏らしそうになってしまう。
「ふ……、んぅ……、お、おかし……。……、え? ……え……、あ、あの……っ」
小瓶の中身を擦り付けられた場所は熱いだけでなく、次第にジンジンと疼き始めていた。
「不安がらなくていい。ただの香油だ。……多少、便利な付加があるだけの……な」
ニヤリと口角をあげて笑われ、『便利な付加』が、エミーネの望まぬ類のものだと気づかされる。そうして淫らに身体を悶えさせ困惑するエミーネを見下ろしながら、クライシュは蜜孔から指を引き抜いた。
もう行為を終えてくれる気になったのだろうか? 安堵すべきことなのに、彼の温もりが離れて行くことに一抹の淋しさを覚えてしまっていた。
「……っ」
自分の感情に戸惑い呆然としていると、ふいに衣擦れの音がして、そちらに顔を向ける。
寝台の脇でクライシュが腰帯を解いて貫頭衣を脱ぎ捨てる姿が見えた。エミーネは露わになった彼の身体の逞しさに息を呑む。服のうえからでも多少は予測できていたが、実際に見るのとではまったく違う。
太く力強い腕、隆起した胸筋。余分な脂肪などまったくついていない腹部は、六つに割れている。それでいてしなやかな体躯は、まるでネコ科の猛獣を前にしているかのようだった。家臣に守られるべき皇子の身で、これほどまでに鍛え抜かれた身体をしているなんて、信じられない。
世界の争いごとを治めたクライシュには様々な勇猛な逸話があったが、そのすべてが紛れもない真実だったのだと信じられるほど強靭な体躯だ。
エミーネが目を奪われたまま呆然としていると、ふいにクライシュが口角をあげて微笑んでみせる。
「食い入るように見ているが、俺の裸にそんなに興味があるのか?」
はしたなくも衣服を脱いだ男の姿を凝視してしまったことに気づいたエミーネは、顔から火が出そうになってしまう。
「も、も、申し訳ございません!」
恥ずかしさのあまり腕で顔を覆って目を塞いでいると、さらに衣擦れの音が耳に届く。
視界が閉ざされている分、恐怖が増していた。もしかして下衣も脱いでいるのだろうか。
今のうちに逃げるべきだったのだと、ようやく気づいたエミーネは顔を隠す腕をほどき、身体を反転しようとした。だが、クライシュが逃がすはずもなく、乱されていたエミーネの衣装は強引に引き剥がされ、身体を覆うものがすべて奪われてしまった。
「やぁっ……、か、返して……くださ……」
目を瞠っている間に、脚を開かされたまま抱え上げられ、腰が浮き上がる。
「……な……っ、なにをなさるのですか」
驚愕したままクライシュの顔を窺う。すると彼は欲望に満ちた眼差しでエミーネを見据えていた。
「どこに行く気だ。お前の願いどおり、今から抱いてやるというのに」
そんな願いごとをした覚えはない。唖然としていると、クライシュが愉しげに笑ってみせる。
「『堪えきれない』と言ったではないか。早く抱いて欲しかったのだろう?」
露わになったクライシュの下肢の中心で赤黒く隆起した肉棒が憤り勃っていた。エミーネの腕ほどの太さがありそうな怒張を前に、腰が抜けてしまいそうなる。
「ちがっ、違……い、ます……」
淫らな行為をやめて欲しくて告げた言葉だ。続きを強請ったつもりはない。けれど、懸命に否定しても、クライシュは手を放してはくれなかった。
「そんなつもりでは……」
彼は薄紫色の液体が入った小瓶の中身を手にとり、見せつけるように肉塊へと擦りつけた。粘着質の液にヌラつく肉茎は、さらに凶悪さを増し、エミーネを怯えさせる。
「……こ、こ、こないで……、ください……」
震える声で懇願した。だが、酷薄な笑みを返されるばかりだ。
「そう怯えるな。痛むのも最初のうちだけだと聞いている。すぐに好きになる」
淫らな行為などけっして好きにならない。なれるはずがない。エミーネは腰をくねらせ、お尻でリネンを這い上がり、少しでもクライシュとの距離をとろうとした。しかし、脚を抱えられているため、無駄な抵抗でしかなかった。
「もう諦めろ。夫の欲を受け止め、子を成すのも妻の務めだろう」
肉棒の先端が秘裂の中心に押しつけられ、グッと肉襞を開いていく。確かに性交は妻の務めかもしれないが、クライシュにはたくさんの女がいる。自分である必要はないはずだ。
「や、あぁ……っ、しないで……お願い……っ、お許しください……」
今ならまだ間に合う。彼さえエミーネを解放してくれたら、なにもなかったことにできる。しかし、クライシュの硬く膨れ上がった亀頭の先は、無情にも、エミーネの甘蜜と香油でぬるついた粘膜を徐々に押し開いていく。
「私はあなたの妻には……なれな……っ、ん、んぅ……っ!」
嵩高な肉茎にメリメリと襞が引き伸ばされる痛みに身体がのたうつ。クライシュの太く長い雄は、エミーネの可憐に震える狭隘な肉筒をゆっくりと割り拡げていった。