軍服の渇愛
- 著者:
- 富樫聖夜
- イラスト:
- 涼河マコト
- 発売日:
- 2014年11月04日
- 定価:
- 682円(10%税込)
俺はあなたに飢えている。
伯爵令嬢エルティシアの思い人は、国の英雄で堅物な軍人グレイシス。振り向いて欲しくて必死だが、子ども扱いされるばかりで取り合ってもらえない。だがある日、年の離れた貴族に嫁ぐよう父親に言い渡されてしまい…。思いつめた彼女は、真夜中、屋敷を抜け出し彼のもとへ向かう。しかしそこにはなぜか、媚薬を飲まされ苦悶する彼の姿が!「俺を鎮めてください、その身体で」果てのない彼の欲望を受け止めようとするエルティシアだったが――!?
エルティシア
伯爵令嬢。ずっとグレイシスのことが好き。家のために、年の離れた貴族との結婚を受け入れようとするのだが…。
グレイシス
伯爵家の三男。国の英雄で堅物な軍人。エルティシアのことは憎からず思っているようなのだが…。
「……え……?」
──気づくと、エルティシアはベッドに押し倒され、グレイシスにのしかかられていた。
すぐ目の前には琥珀の目をギラギラと燃え立たせるグレイシスの顔があった。
グレイシスは食いしばった歯の間から唸るような声を出してエルティシアを詰問した。
「誰だ……? 誰があなたにこんなことを教えた……!?」
「お、教えた……?」
エルティシアはグレイシスが何を言っているのか分からなかった。だが、全身から怒りを発しているのだけは分かった。
「男の素肌に触れてキスをすること。男の欲望に触れること。……誰に教えてもらった!?」
「え? あ? あ、ああっ……!」
グレイシスはエルティシアの膝を掴んで大きく押し開くと自分の身体を間に割り込ませる。エルティシアは大事な部分が露わにされたことに気づいて、カァと全身の熱が上がるのを感じた。
「シア、誰だ? フェリクスか? この間の夜会でダンスに誘っていた男か?」
「え?」
なぜここにフェリクスの名前が出てくるのだろう? ダンスに誘っていた男って?
戸惑っていると、グレイシスは顔をぐっと近づけてくる。いつも冷静でめったに感情を表さないその顔が怒りに歪んでいた。
「答えろ、誰にこの身体を開いた?」
「え? ち、違っ……!」
エルティシアはここにきてようやく、グレイシスが何を怒っているのか理解した。彼は男性の素肌にキスをし、偶然にしろ性器に触れるようなまねをしたエルティシアのことを、すでに男を知っている身だと考えたのだ。
「誰にもっ、誰にも教わってなんかいません!」
エルティシアは慌てて首を横に振った。それでも変わらない彼の怒りの表情に、必死になって言い募る。
「グレイ様にだけです、こんなことをするのは!」
グレイシスはエルティシアの言葉を吟味するかのように琥珀色の目を細めていたが、やがて小さな吐息と共に言葉を漏らした。
「まぁ、いい。……身体に聞けば済むことだ」
「──え? あっ……!」
大きな手がエルティシアのむき出しの乳房を掴んだ。やや乱暴に揉みしだかれ、エルティシアは痛みに息を詰める。
両方の手に掬い上げられ、円を描くように捏ねられる。エルティシアは自分の胸がグレイシスの浅黒い手の中で思う様嬲られ、形を変えていくのを呆然と見つめていた。最初は痛いだけだったのに、なぜか痛みは徐々に遠のき、代わりに妙な気持ちになってくる。そこには全然触られてもいないのに、胸の先端がじんじんと熱を持ち始める。
するとグレイシスはそれを見抜いたように、柔らかな肉の中心でふっくらと色づく先端を指で捕らえて、ふっと笑った。けれどエルティシアを見下ろすその目は少しも笑っていない。
「柔らかくて吸い付くような肌……男を夢中にさせる身体だな」
どこか嘲るような口調だった。エルティシアは悲しくなりながらも、敏感な胸の頂をぐりぐりと押しつぶされ、喘いだ。
「……んっ、あ……くぅ、ん……」
背中にぴりぴりと痺れが走る。それと呼応するようにお腹の奥がきゅんと疼いて、エルティシアはそのたびにびくんと身体を揺らした。
「ずいぶんと敏感だな……」
グレイシスは言いながら、頭を下げて首筋に唇を押し当てる。エルティシアは突然肌に感じた生暖かく濡れた感触に息を呑んだ。
「……ん……」
彼は耳朶を噛み、喉を舐めあげ、肌を濡らしていく。それぞれ異なる感触と首筋を撫でる彼の髪がくすぐったくて、肌が粟立った。その間も、胸を弄る少し乱暴なくらいの動きは止まらず、柔らかな肉を揉みしだきながら先端を指先でつねられる。そのたびに身体が小さく跳ねた。
「あっ、ん……っ!」
突然、胸の先が生温かいものに包まれたのを感じて頭を上げると、グレイシスが片方の胸の先端を口の中に含んでいた。彼がそんなことをするとは思わなかったエルティシアは信じられない思いで自分の胸に吸い付く彼を呆然と見下ろす。けれど、胸の先に与えられた刺激と、じんじんと広がっていく疼きは間違いなく本物だった。
「グ、グレイさ……っあ、く、ぅ……っ」
口に含んで舐めるだけではなく、歯を立てられ、転がされ、そのたびにお腹の奥がぎゅっと引きつった。
「あ、ああっ、ん、んっ」
抑えようとしても口からひっきりなしに声が漏れる。グレイシスがエルティシアの滑らかな肌を唇と舌で味わうたびに彼女の中でどんどん熱が上昇していく。彼は、もう片方の胸の先も口に含みながら呟いた。
「甘い肌だ。あなたはきっと全身が甘いのだろうな。それを何人の男が味わったのか……」
「え?」
一瞬何を言われたのか理解できなかった。だが、分かるにつれ、エルティシアの全身が赤く染まった。彼はまだエルティシアが誰かと寝たことがあると思っているのだ!
「違います、私は、誰ともこんなことをしていません!」
エルティシアは悲しくなった。だが、確かに夜、男の部屋を訪ねて裸になり、自分を抱けと迫る女性が純潔だと思えないのも無理はないと思う。でも、それでもエルティシアの言うことを信じて欲しかった。
「グレイ様に、初めての人になってもらいたくて、だから……!」
「初めて? こんなことをされるのも初めてか?」
言いながらグレイシスはエルティシアの胸の先端に歯を立てた後、優しく舌先で舐めあげる。
エルティシアは背筋を這うざわめきに背中を反らしながら叫んだ。
「んんっ、は、初めてです。グレイ様が……!」
「では、これも?」
いつの間にかグレイシスの手が片方の胸を離れ、下に滑りおりていた。その手が向かった先はエルティシアの脚の付け根だ。
「──え?」
じわりと蜜を湛え始めた入り口を捉えると、グレイシスはそこに一本の指をぐっと差し込んだ。
「ひぅ……! っ、あっ、くっ……!」
エルティシアは痛みと強烈な異物感に身体を硬直させた。するとますますそこの痛みと違和感が酷くなっていく。
「や、やぁ、痛い……!」
エルティシアの目に涙が浮かんだ。痛いと口にしては駄目だと思うのに、その言葉は勝手に零れていってしまう。グレイシスは指をエルティシアの胎内に差し込んだまま、少し驚いたように呟いた。
「指一本でも狭い。誰も路をつけてないということか……?」
それから彼はエルティシアを見下ろし、彼女の涙を見てふと雰囲気を和らげた。笑顔こそないが、その琥珀色の目から先ほどまであった冷たい光は消えていた。
「すみません、お嬢さん。初めてのようですね。……痛いですか?」
グレイシスは指を少しずつ抜きながら尋ねる。エルティシアはつい頷いてから、慌てて首を振った。
「い、いいえ。大丈夫です」
「そうですか。では先に進んでも大丈夫ですね」
温度が感じられない声で言った直後、グレイシスの指がずぶっと再び胎内に埋まった。
「ひっあっ……!」
エルティシアの口から悲鳴が上がった。けれどグレイシスは構わず、差し込んだ指をゆっくりと抜いては押し込める動作を繰り返す。琥珀色の目が熱を帯びてエルティシアの痛みに歪む顔を見下ろした。
「俺があなたの痛みに怯んでやめると思いました? 残念ながら、その段階はもう過ぎています、シアお嬢さん。俺をここまで煽ったのはあなただ。その責任は取っていただかないと」
「グ、グレイ様……?」
グレイシスが目を細めて酷薄に笑う。
「俺を鎮めてください、シアお嬢さん。あなたの、その身体で」
エルティシアは息を呑む。その直後、再び始まった責め苦に呻き声を上げた。