薔薇は偽りの花嫁
- 著者:
- 柊平ハルモ
- イラスト:
- 鳩屋ユカリ
- 発売日:
- 2015年03月03日
- 定価:
- 660円(10%税込)
俺の妻になる覚悟はできたか?
由緒ある伯爵家の令嬢フローラは、父の借金が原因で、野蛮な実業家セオドアに嫁ぐことに。だが、彼はフローラの姉との結婚を望んでいた。姉の身代わりであることに悩み、愛されることはないと思っていたフローラだったが、セオドアは余裕の表情で彼女を翻弄し、執拗に抱いてくる。強引で情熱的、それでいて優しい――そんな彼に次第に惹かれていくフローラ。しかし、ある夜をきっかけにセオドアはフローラを抱かなくなって……?
フローラ
名家の伯爵令嬢。家の借金を肩代わりしてもらうため、セオドアと婚約することに。
セオドア
成り上がりの実業家。フローラの姉を妻にしたいと望んでいたが……。
羞恥に震えるフローラに、セオドアは容赦してくれなかった。
彼はそのまま、くちびるをフローラの足の付け根まで這わせていく。
──う、そ……っ。
人に見せられない秘めやかな部分のすぐ傍に、セオドアは顔を近づけてくる。柔らかな肉に隠された蜜口を指で開かれ、そこを見られてしまった。
「あ……っ、や、いや、見ないで……っ」
荒々しく胸元をはだけられ、足を剥き出しにされるどころか、その奥の秘めた部分まで無遠慮にまさぐられている。
その指先は、ただ怖かった。
いくら、偽りの花嫁とはいえ、こんな形で男の人と結ばれることになるなんて、考えてもみなかった。
触れられているそこが、男の人を迎え入れるための場所だということは知っている。でも、できることならもっと幸福なかたちで結ばれたかった。
「……怖いか?」
顔を上げ、セオドアは問いかけてきた。視線で、フローラの瞳を探ってくる。
細められた眼差しは冷たい。憎しみがちらついている気がした。
憎まれるのは当たりまえだ。フローラは、彼が欲した女性ではないのだから。
それでも、胸が切り裂かれるような心地になる。
でもフローラには、彼の妻になるしか選択肢がない。
フローラのおとがいをつまみ上げ、セオドアは視線を合わせてくる。
「逃げるのなら、今だ。まだ引き返せる」
「……い、いえ……っ」
フローラは、小さく首を横に振った。
彼は伯爵家の名を利用するために、結婚するのだと言っていた。でも、本当はフローレンスだからこそ望んだのではないか。
それでも後に引かないのは、打算か。それとも、意地なのだろうか。
でも、フローラだって後には引けない。
伯爵家のために。
大好きな姉と、初恋の人との幸福を守るために。
「どうぞ、わたしのことは、あなたのお気のすむようにしてください。……そう、申しあげました気持ちに、変わりはないです」
フローラは、じっとセオドアを見つめかえした。
「……震えているくせに、俺をそんなに真っ直ぐに、ひたむきに見つめるのか」
ふっとセオドアは息をつく。
「強情な娘だな」
「あなたの妻になると、誓いを立てました。そのお約束を違えたりはしません」
それ以上、フローラに言えることはない。頑なに、誓いの言葉を繰りかえす。
「偽りの花嫁のくせに、真っ直ぐな目をしている」
「……っ」
そう、偽りの花嫁だ。
あらためて、自分の立場を噛みしめる。
愛されてもいない、花嫁。それでも、フローラはセオドアにすべてを捧げるしかなかった。
「悪くないな」
小さく笑ったセオドアは、フローラの鎖骨に噛み付いた。
痛みに身を竦めると、今度は舌で肌を舐められた。
たっぷりと唾液がのせられていた肉厚のそれは、くちゅ、ぴちゃと淫らな水音を立てた。
「……んっ、あ……!」
恐れていた場所に、ふたたび指先が触れてくる。思わず、フローラは背を弓なりにしならせた。
「……んっ、ひゃう……んっ」
セオドアはフローラの足の狭間へと、そのしなやかな指先を差し入れてくる。大きな手のひらが敏感な部分を滑るだけで、フローラは大きく震えてしまった。
太股を這い、足の間を割った指先が、感じやすい小さな芽に触れると、びくっと腰がはねる。自分のはしたない反応に、フローラはつい涙ぐんでしまった。
ちょっと触られただけなのに、なぜこんなにも派手に反応をしてしまうのだろう。自分の体だというのに、ままならない。
大きな親指でさすられただけなのに、はにかむように埋もれたその尖りは、ふるふると震えていた。
「やっ、なに……?」
触れられたその場所から、強烈な感覚が生じた。全身を貫くような快楽に、フローラは声を上げる。
今のは、いったいなんだろう。むずがゆいような、じれったい熱が、フローラの体を熱くする。
「……まだ、埋もれているくせに……。もうこんなに敏感なのか」
「……あ、や……ぁ……んっ」
そこを弄られれば弄られるほど、まるで体の中からなにかが溢れだすような感覚があった。フローラから溢れたそれは、小さな尖りにも伝い、濡らしていく。
そして、セオドアの指も。
恥ずかしくて、どうにかなりそうだ。消え入りたい。セオドアに反応している自分の体が、憎くさえ感じた。
そこは、敏感で熱をたやすく生む場所らしい。指先で弄られているうちに、ぽってりと腫れ上がったかのように膨らんでいく。さらに、下の割れ目に指を這わされ、軽くくすぐられただけで、そこが開いていくのがわかった。
「……あ、だめ、です……、そんなところ……っ」
「駄目、じゃないだろう? これから用がある場所なんだから」
露骨なセオドアの言葉に、フローラは頬を紅潮させる。
フローラの国の少女たちは、「なるべく何も知らないように」育てられる。でも、そこを弄られる意味が、セオドアの言葉が理解できないほど、フローラも物知らずではなかった。
「怖がることはない。たっぷり濡れるまで弄ってやるから」
「……あっ、ん……」
腰が跳ねる。
まるで、逃げ惑うように。
でも、セオドアは許してくれない。フローラの体を押さえつけ、なおも指でそこを虐めてくる。
「……あ、ひゃうっ」