変態侯爵の理想の奥様
- 著者:
- 秋野真珠
- イラスト:
- gamu
- 発売日:
- 2014年08月04日
- 定価:
- 682円(10%税込)
早く…早く子供がつくりたい!
端正な顔つきに堂々たる立ち姿、領民たちからの信望もあつい、男盛りの侯爵・デミオンの妻に選ばれた、子爵令嬢アンジェリーナ。田舎貴族で若くもない私をなぜ…? 訝りながら迎えた初夜だが、声が嗄れるほど執拗に求められ、その情熱にほだされていく。しかし翌日、領地の子供たちにうっとりとした眼差しを向ける侯爵に遭遇し…。そこで明かされた驚きの秘密。侯爵が今まで独り身だった理由――それは彼の偏った嗜好のせいだった!
アンジェリーナ
子爵令嬢。母の亡き後、幼い弟の面倒をずっと見ていたため行き遅れてしまう。侯爵との結婚話に飛びつくが……。
デミオン
広大な領地をもつ大貴族。早くに父を亡くし、若くして侯爵となる。とある理由からアンジェリーナを妻に選ぶが……。
「あ、の……っ」
「なんだ」
寝台に押し倒し、その上にのしかかると、アンジェリーナが慌てた様子で待ったをかける。ここで待てと言われも待てるはずがないが、性急だったのは認めて一度手を止めた。
アンジェリーナはカーテンの引かれていない窓に一度視線を向けて、困った表情をデミオンから隠す。
「……あの、まだ昼間です」
「だから?」
「こ、子供たちも、まだ庭に……」
「他の子供より君の子供のほうが重要だ」
「……っ」
女性のドレスというものは触りにくいものだとデミオンはいつも思う。しかし邪魔なものなら脱がせてしまえばいい。
アンジェリーナのドレスはいつも胸元が苦しそうだ。デミオンの掌に収まりきらないほどの乳房が、コルセットに締め付けられて押さえられ、曲線を描く胸元から溢れそうになっている。ついさっき、その場所にアレンが顔を埋めていたのを思い出して、デミオンは知らず眉を顰めて自分も同じ場所に顔を寄せた。
「こ、侯爵、さま……っ」
デミオンの肩を押し返す力はとてもか弱い。女性の力はこんなにも弱いものなのか、それともアンジェリーナの力がないのか。
考えながら、デミオンはどっちにしろ弱いことには変わりないと滑らかな肌の上を優しく何度も食み、ドレスの上から身体を撫でる。
固く締められたドレスの紐だが、覚えると簡単に解けるようになっているのだとデミオンはアンジェリーナのドレスでその構造を知った。今も片手で紐を解き、コルセットを緩めその肌を露わにしていく。微かに震え、押し留めようとするアンジェリーナの弱い抵抗などないも同然だ。
「侯爵様……っあの、でも、こんなにたくさん……何度も、していると、子供もできる暇がないように思います」
それは、アンジェリーナがずっと考えていた抵抗の言葉なのかもしれない。
真っ赤な顔で、視線を合わせられないまま必死に告げるアンジェリーナに、その顔ではかえって煽るだけだと罵りたくなった。
そうなる前に、デミオンは自分の口でアンジェリーナの口を塞いだ。
アンジェリーナの口の中は温かい。柔らかい舌はいつも奥のほうに引っ込んでいて、デミオンはキスを繰り返して思うまま絡め取れるまで口腔を舐め続ける。
「ん──っ、んっんっ」
何度しても鼻で呼吸することに慣れないのか、苦しそうな声が漏れるが、そのことにもデミオンは煽られてしまうのだ。
そしてやはり、苛々したものを抑えきれないでいた。
強引なキスになるのも無理はない。アンジェリーナの手はまだデミオンを受け入れられないというように、肩を押し返すように掴んでいて、首に回ることはない。寝台の上でほとんど裸になって組み敷かれ、声も満足に上げられなくなってもまだ抵抗するのかとデミオンはさらにしつこく口を吸い続ける。
「んう……っ」
音を立てて、アンジェリーナの口に溢れた唾液を吸い取ってしまうと、最後の抵抗だった手からも力が抜けて四肢がくたりと投げ出される。そこでようやく唇を解放し、目尻に溜めた涙を零さないように舐め取った。
「ん……っ」
「できないかどうかなど、わからないだろう。試してみればいい」
「……え?」
アンジェリーナの言葉に返事をしたはずなのに、当のアンジェリーナは何を言われたのか理解しがたい顔だ。デミオンはしかし、それでも構わないともう一度胸元に顔を埋めた。
「あ……っだ、め、ですっ侯爵様ぁ……っ」
アンジェリーナの胸は柔らかい。
その身体はどこも柔らかいが、特に胸はいつまでも揉み続けて形が変わるのを楽しんでしまうほどデミオンの手に馴染んでいるのだ。
つんとなった頂は、口に含んで舐めて欲しくて硬くなっているのに違いないと思っている。
「そ、こは、侯爵様が舐めるところじゃ、な……っ」
「では誰が舐めるんだ」
「……それは、子供が産まれたら……」
「まだ産まれていないから、私が代わりに舐める」
「────っ」
舐めると言いながら、歯を立てた。
びくりと身体を揺らすアンジェリーナの反応が、デミオンはもっと欲しくなる。
もっと反応して欲しい。もっと応えて欲しい。
デミオンが望んでいるように、アンジェリーナからも欲しいと言って欲しい。
あの姿絵のような子供が欲しいといつも思っているし、そう望んでの行為のはずなのに、最近アンジェリーナの反応を見ると何故かそれが薄らいでいく。
デミオンの手に、キスに、愛撫のすべてに応えてくれるアンジェリーナの肢体と、涙に濡れた顔が恥じらいながらも恍惚に震えているのを見ていると、デミオンの中に違う欲望が渦巻いてくる。
それを治めるために、デミオンはさらにアンジェリーナを泣かせてしまう。
ぼろぼろと涙を零し、最後には許してと乞う彼女の姿を見ると、デミオンの中にある隙間のすべてが埋まり感情が溢れるのだ。
それを味わうことが最近の喜びになってしまっているのはデミオンも自覚している。
子供が欲しいと願いながら、毎日この顔を望めるなら子供がいなくてもいいかもしれないと矛盾したことを考え始めているのに気付いていた。
それが何なのか、はっきりと理解しているわけではないが、とりあえずデミオンはこの胸に顔を埋めるのは自分ひとりでなければならないと憤っているのだ。
たとえ愛らしい子供にでも、その権利を譲るのは嫌だ。
デミオンはもっとアンジェリーナの反応が欲しいと、胸から柔らかい腹部を辿り、髪よりも濃い茂みの中を潜り、割れ目に舌を這わせた。