執愛の鎖
- 著者:
- 立花実咲
- イラスト:
- KRN
- 発売日:
- 2013年12月04日
- 定価:
- 660円(10%税込)
可愛い可愛い、可哀想な僕の妹。
兄であるサディアス王子に密かな恋心を抱くアシュリーは、他国の王子との結婚を間近に控え、憂鬱な日々を過ごしていた。そんなある日のこと。サディアスから、王家に伝わる秘密の儀式を知らされる。それは、初夜を不安に思う花嫁のために、王族の者が閨事の手ほどきをするというもので…。兄を信じ、言われるがまま純潔を捧げるアシュリー。しかしそこにはサディアスの仄暗い思惑が潜んでいて――。
アシュリー
兄であるサディアスに恋心を抱いているが…。
サディアス
第一王子。妹であるアシュリーを溺愛する。
「あ、っ……ぁっ……やぁ、っ……」
じわじわと繊細な快感が突き上がってきて、触れられるたび、アシュリーの下腹部はビクンと跳ね上がってしまう。
サディアスは飽きもせず乳首に執着し、指の腹で擦ったり、引っ張ったりしながら、乳房を丸く円を描くようにも揉み上げ、尖った頂を舌の腹でずりゅずりゅと擦り上げる。
勃ちあがった頂が真っ赤に充血してしまって、ますます敏感になっていた。そこを濡れた粘膜に包まれ、激しく吸い上げられると、頭が蕩けるほどの快感に苛まれた。
「は、ぁ、……お兄様、……だ、め……」
「アシュリー、この間、僕は説明したはずだろう。今さら僕を拒む理由は何だい?」
「それは……」
「答えられないなら、清めの儀式は続けるよ。僕にはその責任があると言ったろう? おまえとステファンがうまくいくように見届けたかったからお茶会へ一緒に行ったんだ。それなのにおまえは沈んだ顔ばかりして……」
サディアスの表情はいつになく冷ややかだった。アシュリーはやっと兄が怒っているのだと分かった。
「ごめんな、さい……私が、台無しにしたから……またお兄様に迷惑をかけてしまったわ。だからいい加減に愛想が尽きて……それで怒ってるのでしょう?」
「アシュリー、そう思うなら、素直に感じて、僕の言うことを聞くんだ」
熱っぽい視線を注がれたまま、いやらしく捏ね回されると、浅ましくも快楽の火がついてしまう。無知だった頃の自分が嘘のように、貪欲にどこかがうねる予感がした。
洞窟の帰りの時のようになってしまったら、という不安に駆られ、アシュリーはリネンを握りしめる。
唇で挟みこみ、ちゅぷちゅぷと淫猥な音を立てて吸い上げられ、下肢が淡く浮き立った。
「……あ、……お兄様、……胸、そんな、しちゃ……いや」
首を振って抗えば、ぶるっと乳房が揺れる。
サディアスの唇は突起を捉えて放さない。熱い舌を何度も這わせてくる。
「おまえのここは嫌がってはいないよ。嬉しそうに硬くなっていくじゃないか」
「ふ、……ぅんっ……」
焦れるような疼きが下肢から這い上がってくる。アシュリーは息を逃すように耐え忍び、サディアスの頬に両手を伸ばす。すると邪魔をするなと言わんばかりに指先を食まれ、ねっとりと舌を這わされてしまった。
「あ、……」
ぞく、と得体の知れない快感が沸き立ち、アシュリーの碧氷色の瞳がじわっと潤む。
爪の先から第二関節までしゃぶられ、手首から手のひらまで口づけられていく……そのサディアスの仕草には獰猛な色香が漂っていた。
サディアスはアシュリーの手を放すなり、おもむろにテーブルの上に置いてあったガラスの小瓶に手を伸ばした。
きらきらとしたガラスの小瓶は、香水だろうか──そう思うまもなく、彼はアシュリーの乳房につーっと垂らした。
「……あっ……な、何?……」
冷たくもなく温くもない。透明な液体が胸の谷間に川水の如くこぷこぷと流れていく。
「ああ、これはね、清めの聖水だよ」
清めの儀式──アシュリーの脳裏にそのことがちらちらと浮かんだ。
透明の液体からは薔薇のような甘い香りが漂ってきて、そっと指の腹で確認すると、ほんの少し粘度もあるようだった。たとえるのなら蜂蜜のような。サディアスはそれを指で一掬いし、アシュリーの乳首に塗り込めはじめた。
ぬるついた感触に、臀部がきゅっと窄まる。
「そんなところ、……触られて、な……いわ」
「女性の身体の感覚は全部繋がってる。すべてをちゃんと清めておかなくてはならないよ」
サディアスはそう言ってドレスの裾を捲り上げると、ドロワーズの紐を解きはじめる。
「や、……何をなさるの?」
液体を塗りつけた長い指を中に伸ばし、浅い茂みに隠れた秘宝に、ぬるりと塗りつけた。
「ひゃ、あぁっ……」
一瞬で達してしまいそうな、鋭い快感だった。
「困った妹だ。こんなに敏感な身体では……あの男に容易く壊されてしまうよ。ますますたっぷり塗っておかなくてはならないね」
くちゅくちゅと卑猥な音が立つ。
「ん、……やぁ、お兄様、……」
サディアスはすぐに指を退かせたが、そのあともまだ指が這っているような感触がして、アシュリーはぶるっと震えた。
「分かった。今日はこれでおしまいだよ」
サディアスはくすりと意味ありげに微笑を浮かべ、コルセットのボタンを閉じていく。
不安な顔をしてアシュリーが見つめていると、サディアスはそっと唇を重ねてきた。
「ん、……」
「そんな物欲しげな顔をしていれば、男はいくらでも貪欲になる。自分が欲していないならば、そういう瞳で見るものじゃない」
サディアスの言うことは一理ある、と思った。
ステファンにも同じことを突きつけられたのだ。けれど、その意味合いが違う。サディアスに同じことをされても嫌悪が湧かない。
でも……時々、サディアスのことを怖く感じる。
自分に対する愛着が常軌を逸しているように感じてしまうのだ。
それと相俟って、それでもいいから奪われてしまいたいという、今までに芽生えることのなかった深い感情が渦巻くのを、アシュリーは心の隅で感じていた。