旦那さまの異常な愛情
- 著者:
- 秋野真珠
- イラスト:
- gamu
- 発売日:
- 2013年11月03日
- 定価:
- 660円(10%税込)
ああもう触れたい。我慢できない。
側室としての十年間、王から一度も愛されず、忘れ去られた存在としてひっそり暮らしていたジャニス。後宮解散の際に次の嫁ぎ先を告げられるのだが…なんとお相手は、十歳年下の才気溢れる青年子爵マリスだった。公爵家嫡男で社交界の寵児である彼がなぜ私と? 裏があるに違いないと訝しむが、問うたびに押し倒されてうやむやにされてしまう。そんなある日、マリスと王が過去にとある取引きをしていたことを知り――。
ジャニス
元側室。王の寵愛を受けぬまま後宮が解散となり、十歳年下のマリスへ嫁ぐことに。
マリス
才気溢れる青年子爵。しつこいほどに、ジャニスへ愛を囁きかける。
「ジャニス! ああもう、なんて可愛いんだ! やきもちなんて嬉しくて僕は発狂してしまいそうだよ」
「ち、ちが、私は、そんなこと」
慌てて否定しようとしても、もうマリスは受け入れるつもりはないようだ。
いつものように、ジャニスの言葉など聞いているようで聞いていない。自分の良いように解釈してしまっている。
「妬いてくれるなんて、本当にジャニスは可愛い──ああ、その顔を見ているだけでイきそうだ」
ジャニスに圧しかかる身体は、申告通りに熱くなっているようだ。
押し付けられる硬いものにジャニスは今の状況を理解して、焦ってマリスの身体を押しのけようとする。
「や、妬いてなんて、私はそんなこと言ってないでしょう!? 勝手なこと言わな……ッ」
その先は、マリスの口の中へ消えた。
愛撫のような口付けは、すぐにジャニスを翻弄する。
「ん……っんっ」
音を立てて舌を絡める口付けは、いやらしいという言葉そのもので、マリスがどれだけ興奮しているのか解る。解ってしまうようになったことが、ジャニスは恥ずかしい。
ぞんぶんに唇を貪ってから、マリスはにっこりと笑った。
「……ジャニス、こんな恰好で僕を待っていてくれたの? やっぱりサロンに僕がいなくて寂しかった?」
「ちが──っ」
決して誰かに見せたかったわけではない。ましてや夫を誘いたかったわけでもない。しかしマリスはジャニスの言葉を遮るように、薄いシュミーズの生地の上から胸の頂を口に含んだ。
「あ……っ」
「大丈夫だよ、ジャニス……僕はずっと、君の傍にいるから。離すなんて、考えただけでも狂いそうだ……」
「や、あっあ……っ」
布地越しに熱い吐息を吹きかけながら、マリスはジャニスの身体に手を這わせる。そして思うままに口付けて、ジャニスから理性を奪う。
また流されてしまう。
ちゃんと話をして、今度こそマリスが何を考えているのか問い詰めるつもりだったというのに、強制的なマリスの愛撫にジャニスは惑わされていくのだ。
ジャニスはいつの間にか、淫らでふしだらな女になってしまったのだろうか。こんなにも簡単に愛撫に踊らされて、抗う力さえ失ってしまっている。そうだとしたら─―ジャニスはその先を考えようとして、思考を乱された。マリスの指がドロワーズの中に潜り込んで足の間を探り始めたのだ。茂みの中の熱い狭間を、少し性急に荒い指が弄る。
「う、ん……っや、ぁんっ」
「ジャニス……ああ、柔らかい……もう挿れたい。我慢できない」
「やっや、あっ」
くちくちと濡れた音を立てて指が広がる。ジャニスは横に向いて強い愛撫から逃れようと丸くなるが、すべてを抱き込もうとするマリスの手から逃れるすべはない。
ドロワーズがするりと腰から下ろされて、膝の上で留まらせたまま、マリスがトラウザーズの前を寛げる。横向きの不自然な体勢で、既に首をもたげた性器をジャニスの中へ擦り付けてくる。
「や、あっあっあぁぁんっ」
「ん──……っは」
シーツにしがみ付いて逃げようとするが、押さえつけられた腰が逃げられるはずもなく、ジャニスの秘部は簡単にマリスを飲みこんだ。
気持ちいい、とマリスがジャニスの耳元で息を吐き出す。
「ジャニス……すごい、気持ちいい」
「やぁっあっあぁんっ」
一度腰を引き、そして同じ速度でもう一度熱い塊を押し入れるマリスに、ジャニスは喘ぐことしかできない。マリスの言うような気持ちいいという感覚よりも、どうにかなってしまいそうでおかしくなる。
おかしくなる自分をどうにかしなければと自制しようとするのに、身体が震えて声が止まらない。
「ひ、あっやっそこ、だ、め……っいやぁっ」
「ああ……ここ? 気持ちいいの?」
「ちがっあ、あっあっい──っ」
いつもと違う角度で責められる場所は、ジャニスをさらに不安にさせた。駄目だと言う言葉はマリスに届くことはなく、硬くなった先端で執拗にぐりぐりと責められ、呆気ないほど簡単にジャニスは達した。
びくびくと震える身体は、絶頂の中からなかなか戻らない。こうなった身体はもうジャニスにはどうしようもないのだ。情けなくも、年下の夫に振り回されるだけになる。
それでも、その先を思うと止めてほしいと願うのは当然のことだった。ジャニスはもう止めて、と肩越しに振り返り言葉を口にしようとして、その夫の顔を見て後悔した。
「ジャニス……」
ジャニスに挿入したまま見下ろすマリスは、笑ってはいなかった。しかし怒ってもいない。ただ、全身で欲情しているのが解るほど、興奮していた。
熱い吐息を吐いて、乾いた唇を舐める仕草は獣そのものだ。いつも眩しいほど輝いている貴族の青年は、そこにはいなかった。目の前に獲物を見つけた獣がジャニスを掴んでいた。