寵愛の枷
- 著者:
- 斉河燈
- イラスト:
- 芦原モカ
- 発売日:
- 2013年10月03日
- 定価:
- 693円(10%税込)
おまえをわたしに縛りつけたい。
元首の座に就く者を一心に敬愛してきた純真無垢な細工師ルーカは、戒律により、若き元首アルトゥーロへ嫁ぐことに。毎夜、執拗に愛されて彼しか見えなくなっていくルーカ。だが、抱かれるたびに両手の自由を奪われること、そしてそれに安堵する彼の姿が気がかりだった。清廉でありながらどこか壊れそうな彼を気遣うルーカは、ある日、自分がいることでアルトゥーロの立場が危うくなると知り、苦渋の決断をするのだが……。
ルーカ
ビーズの細工師。元首を一途に敬愛している。戒律に従いアルトゥーロに嫁ぐが……。
アルトゥーロ
代替わりしたばかりの若き国家元首。清廉さの奥に仄暗さを抱えていて……。
「初めてだ。損なっているのに魅力的だと思えるものに出会ったのは」
彼の言葉の意味はわからなかったが、説明を求めようにも息が上がってしまっていて、なにより、キスを受けたばかりの唇がとろけきっていて、うまく言葉にできなかった。
アルトゥーロはルーカの掌に頬ずりをしたあと音を立ててそこにキスをし、指の股に舌を入れる。生暖かいそれは水かきの部分に絡み付き、ぴちゃぴちゃと音を立てる。
「っぁ、ヤ……っ」
こそばゆさに耐えきれず指を折り曲げようとすれば、人差し指を根元で咥えて阻まれた。その状態で舌はまた、人差し指と中指の間を繋ぐ薄い皮膚を舐め回し、しゃぶる。
胸の先に触れられたときの感覚に似て、そこだけ妙に敏感に、甘やかに感じた。
咥えた指を唇でしごくようにされ、じゅくじゅくと吸われるのも、欲しくてたまらないと言われているようで、ルーカは恍惚とせざるを得ない。
「あ……あ、元首さまのお口のなか、あつい……」
あつくて、なめらかで、心地良い。
人差し指をわずかに動かしてみれば、指先が舌の中央に柔らかく食い込んで、応えるように押し返された。もう一度押す。ゆるく押し返され、包み込まれ、吸われる。
「あつくて、柔らかい……」
細やかな感触の虜になりそうだ。
勝手を許すように、開かれた口からゆっくりと指を引き抜き、並びの良い歯列をなぞる。つぅっ、と掌を彼の唾液が伝って、ガラスのように煌めいた。
きれいだ。先ほど失ったビーズよりも、ずっと。
うっとりと雫を見つめていると、アルトゥーロはルーカの指を名残惜しそうに眺め、淡い声で零す。
「もっと知りたい。この手をもっと。おまえをわななかせたら、一体どのように震えるのかということも」
彼の右手の指先がもう一度、閉じた脚の付け根にあてがわれる。それは濡れた割れ目を滑って、前後に蜜を塗り広げたあと、粒を掠めながら蜜口をとらえた。
「知りたい」
引き絞った布のように固く閉じたその場所に、ぐ、と力を込められ、ルーカは全身をこわばらせる。いよいよ痛い。しかしこじ開けられる苦しみも、妻としての務めだと思うと喜ばしかった。
「硬くなるな、ルーカ。ゆっくり息を吐け」
入り口を割った指先は、内壁に破られるような感覚を与えながらわずかずつ内部を進む。
到達を待つ下腹の奥が、じんわりと期待に満ちて疼き始める。
「ん、ふ……ぅ、っ……」
「そう、上手だ。苦しくなったら、わたしの指を噛め」
左手の中指を口に含まされ、ルーカは反射的にそれをじゅっ、と吸う。すでに苦しかったが、不安も痛みも息苦しさも、優しい声色が薄めてくれた。
「大丈夫、あと少しだ。すぐに楽になる」
指は、進んでは止まり、止まっては進んで、内壁を押し広げる。中ほどまで来ただろうか。痛みより体内に触れられている違和感のほうが強くなってきた。
「もっと騒ぐかと思ったが、我慢強い女だな、おまえは。そんな性格もたまらなくいい」
アルトゥーロはそこで指を止め、ルーカの足を開かせると、じわじわと周囲の粘膜をほぐし始めた。呼吸がままならなくて、ルーカは口内の指をそっと舌で押し出す。
「は……ん、ぅ……、体の……なか、波が起こっている、ようです」
「波?」
「はい……元首さまの指が、揺れるたびに……」
体の芯に小さな波状の痺れが生まれ、徐々に大きくなって、全身に行き渡ろうとしている。ルーカが体をくねらせ、はあっ、と吐息すると、アルトゥーロの喉元が小さく鳴り、その表情から余裕が消えた。
「あと少しだけ耐えられるな?」
内部に加わる力が一段と増す。それまで同様ゆっくり進むかと思いきや、指は一気に根元まで埋め込まれた。
「っァ……あ!!」
激しい苦痛とともに、初めて内部でわずかな愉悦を感じた。自分が自分ではなくなってしまいそうで、必死で息をする。
「……ああ、あ、元首さまの、指、深い……っ」
アルトゥーロは膣内から右手の中指を引き抜き、しっとりとふやけた指先の味をみる。そこには血など滲んでいなかったが、彼の表情は満足そうだった。
「二本、挿れても大丈夫そうだな。挿れてみるか?」
「ぁ……は……はい……」
答えるなりゆっくりと二本の指がのぼってきて、内壁が慣れない圧迫感にひくついてしまう。体内に広がるのはかさぶたを捲るようなじんじんした痛みだ。それすらルーカには嬉しくて、ただ堪える。
「ん……ん」
「随分とよく締め付ける。そんなに可愛くねだると、がむしゃらに奪ってしまうぞ」
熱い息を首筋に吹きかけながらの台詞は、焦れきっていてやはり余裕がないように聞こえる。
「元首さ……ま、の、なさりたいように、なさってくださいませ」
「ルーカ」
「それが私の喜びなのです。私の性はこの世に生まれ落ちた瞬間から、あなただけの……」
ものです、と言いたかったのだが、言い切れない内に唇は強引に重ねられていた。狭い口の中を満たすのは、先ほど指先で感じた細やかな感触の舌だ。
一心不乱な口づけをしながら、アルトゥーロは指をルーカの内から引き抜く。濡れた指は、拘束されたルーカの左の肘を掴み、寝台へと押しつける。
「ん、んふ……っ」
噛み付くようなキスが続いて、必死で息をしていると、空っぽになった蜜口にあてがわれるものがあった。指よりもずっと太さがあり、ずしりと重いものだ。鉄の棒でも当てられたのかと思い驚いたのも束の間、先端が押し込まれて、ルーカは痛みに背を反らす。
「ァ、あああ!」
とてつもない質量と衝撃に背骨が歪むようだったが、与えられているのは狂おしいほど愛おしい充溢感だった。