白の呪縛
- 著者:
- 桜井さくや
- イラスト:
- KRN
- 発売日:
- 2013年09月04日
- 定価:
- 704円(10%税込)
おまえの大切なものは、全て壊した。
耳を塞ぎたくなるような水音、激しい息づかい、時折漏れる甘い声…。二人の間から生まれるその音は、生者のいない城内に虚しく響く。国を滅ぼされ、ただ一人残された姫・美濃は、絶対的な力を持つ神子・多摩に囚われ純潔を奪われる。人の感情がわからず、愛し方など知らない多摩は、美濃にただ欲望を刻みつけることしかできない。美濃の全てが欲しいのに、なぜかいつも何かが足りない。答えが出ぬまま美濃を求め続ける多摩だったが…。
美濃(みの)
平和な国の天真爛漫な姫君。初めての友だちである多摩と仲良くなろうと奮闘するが…。
多摩(たま)
強大な力を持つ神子。人の気持ちがわからず、善悪も知らない。
「…きゃあ…ッ」
気がついた時は、ベッドに放り投げられていた。突然のことで何が何だかわからない。
そして、何かを考える前に多摩の身体が重くのし掛かってくる。
はぁ…と、彼の吐息が耳元で漏れ、ぞくりとした。
「……やはりそうだ。…おまえだけだ、…おまえのこの甘い匂いが狂わせる」
多摩の目は、もはや冷静ではいられないと訴えているようだった。傍にいるだけで感じたことのない欲望が頭をもたげてくるのだと。
「…重い、…よッ……、多摩、…どいてよぉ」
わからないことばかり立て続けに起こって、美濃の目から遂に涙が零れてくる。
ただ逃げたいと思った。多摩が怖い、ここにいてはいけないと思った。
「…っや…ッ!! 何するの…ッ」
身体がびくんと震える。多摩の手が服の下に滑り込んで直に肌に触れたからだ。
綺麗に整った顔からは想像できない男らしい骨張った大きな手が脇腹を滑り、胸の膨らみを捉えた。驚き悲鳴をあげようとしたが、多摩の唇に自分の口を塞がれてくぐもった声にしかならない。
「…ん──…ッ、ん────…ッ、…っ、う……ッッんん、…」
口の中にぬるっとしたものが滑り込んでくる。それが多摩の舌だと気づいた時には口腔を思う様に蹂躙され、逃げ場を無くした舌は完全に捕らえられてしまっていた。
美濃の纏う服は一枚ずつ剥かれていき、彼の手は思うままに彼女の身体の感触を愉しむように至るところに触れてくる。
「…ん、…んん…っふ、……多摩、…おねがい、やめてっ…っ」
ようやく口が離れ、美濃は懇願した。こういう行為がわからない年ではない。いくら幼いと言われても知識くらいは持ち合わせている。
これを許す相手は、ずっとずっと憧れていたあの人で。一緒になった初めての夜に行うもので……。これは違う。夢見ていた相手じゃない。
「やだぁ…巽、巽、巽ぃ、…巽────ッ!!」
大好きなあの人じゃなければイヤだ。唇を重ねるのも、身体に触れるのも、巽じゃなければイヤだ。
その言葉に多摩の目つきが変わる。
「抵抗するな」
そう言って多摩は、激しくもがく美濃を組み伏せ、彼が纏っていた装束の腰紐を解いて彼女の頭の上で両腕を縛りつける。恐怖で泣き叫ぶ彼女の姿を見て、多摩は口端をつり上げ狂気を感じさせる笑みを浮かべていた。
露わになった美濃の胸の膨らみに彼の唇が触れると、彼女は驚愕して小さな叫びをあげる。果実のような突起を舌で突かれると、美濃は震えながら泣きじゃくり、それでも押しのけようと必死の抵抗を試みた。
しかし、その胸の柔らかさも、非力な抵抗も、何もかもが多摩の欲望に火をつけるだけだった。彼はただ触れるだけでは満足しないその心が何を求めているのか、実際に肌に触れたことでようやく理解することができたようだった。
彼は知っている。この先どうすれば、美濃と一つになることができるのか。
「…っひぁ…っ!?」
両足を抱えられ身動きもままならない美濃は、身体の中心を襲う刺激に悲鳴をあげた。
多摩が…多摩の舌が…ウソだ……
信じがたい行為に死にたいくらいのを羞恥を覚え、首を振る。
「…やだぁ……っ、やだぁ…、や…ッ…や、あ…ッ!」
それは執拗に、反応を愉しむように延々と続けられた。抵抗したくても縛られた両腕では抵抗らしいこともできず、おまけに器用に動く舌に与えられる刺激でうまく力が入らない。そのうちに指を浅く深く挿れられるようになったが、身体の中心から沸き起こる得体のしれない感覚を相手にするのが精一杯で、彼がすることに追いつくことができない。
「おまえの身体は素直だ。…こんなに濡れて俺を誘う」
「……あ…ぅ…んんっ…やだぁ…、ちが、…ちがうよぉ…ッ」
「ならば溢れてくるこれは何だ?」
中心から指を抜き、濡れて厭らしく光るそれを美濃の目の前で見せつける。その指を多摩の長く赤い舌がゆっくりと舐めあげ、妖艶な笑みを浮かべた。
「おまえの味がする」
恥ずかしくて顔から火を噴きそうだった。自分の身体はどうなってしまったのか。どうして多摩のすることに反応しているのか、巽でなければ嫌ではなかったのか。
多摩はそんな美濃の戸惑いを知ることなく再び美濃の中心に顔を埋め、ぴちゃぴちゃとわざと音を立て責め立てる。
「あ、あッ…っ、…んぅ……、っふ、…、やぁ…っ」
いやだ、どうして。どうして身体が反応するの?
声が我慢できない。ウソだ、どうしてこんな……
「…ああぅっ、…やめ…ぇ……多摩……おねが」
お腹の奥が変…コワイ。嫌だよ、やめて、もうやめて。
次に何がくるのか…ここで終わらないと、もう後戻りできない気がする。とても深い闇に引きずり込まれて、どこまでも堕ちていってしまう。
多摩の身体が覆い被さってくる。熱を孕み濡れた吐息と共に唇を塞がれた。熱い舌が自分の舌に絡まり、逃げる隙など、考える余裕など与えてはくれない。
「おまえは黙って俺のものになればいい」
低い声が甘く囁く。身体の中心に熱いものが触れ、美濃の身体が仰け反る。
「…んぁあ…や、あぁあ、ああ────ッ!!」
容赦無く、加減も知らず、身体の最奥まで強引に貫かれた。